開幕戦、王者トレルイエが磐石のレースで優勝【FN 07】
2007.04.02 自動車ニュース【FN 07】開幕戦、王者トレルイエが磐石のレースで優勝
「今日はマシンもよく、いい仕事をすることができた。ピット作業もパーフェクト。次も同じようなレースがしたいね」
65周にわたる戦いの末、トップでフィニッシュラインを通過したのは、昨年の王者ブノワ・トレルイエ。後続車との直接バトルもなく、「ラクに勝てたというのは言い過ぎかもしれないが、自分で考えていたようなレース運びができた」と完勝に満足気だった。
2007年4月1日、静岡県・富士スピードウェイで開幕を迎えた全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの決勝レースが行われた。
万全の勝利となったトレルイエに続き、2位にはチームメイトの松田次生。3位はロイック・デュバルだった。
■好調IMPUL勢、上々の滑り出し
予選日を迎えた富士は曇天模様。加えて終日寒さが先行する天候となった。
午前10時からスタートした予選1回目。序盤から早くも上位陣がコースレコードを更新するハイペースでセッションが進む。
この僅差のポジション争いは、計時モニターに刻まれた名前が目まぐるしく入れ替わるほどの激しさだった。
そのなかで前評判どおりの活躍を見せたのは、IMPUL勢。王者復活を狙う本山哲を筆頭に、松田次生、さらにディフェンディングチャンピオンのブノワ・トレルイエがまずトップ3を独占する。
その後、セッション終了まで15分を残して1台のマシンがコースオフ。赤旗が出され、アタックは一旦中止されたが、同時にこの仕切りなおしは、ニュータイヤでのアタック開始を意味するものでもあった。
事実、タイムアップするドライバーが続出。なかでもトレルイエが文句なしのトップタイム1分25秒525を叩き出す。午後からの降雨を懸念し、4セットあるニュータイヤのうち、3セットを投入する強攻策ではあったが、まずは暫定ポールポジションの座を獲得した。
対する本山。やはり自己ベストを更新するも、トレルイエのタイムには届かない。さらにタイムを削り取るライバルが次々と浮上し、大きく後退する。
終わってみれば、トップのトレルイエに続き、今シーズンが初のフル参戦となるルーキーのJ・P・デ・オリベイラが2位、さらに5年ぶりのフォーミュラレース復帰となったミハエル・クルムが3位につけ、昨シーズンとは異なるメンバーが名を連ねた。
■ディフェンディングチャンプ、堂々のPP
予選2回目は午後2時15分からスタート。気温こそ午前から2度上がって11度だったが、上空には濃い灰色の雲が広がり、今にも泣き出しそうな空模様となる。
雨を心配して早めにアタックを試みるドライバーもいたが、いずれも午前中のベストタイムを更新するには至らない。さらに、開始15分を過ぎてポツポツと雨が落ちたため、一時は走行を見合わせる状態だった。
その後、幸いにも大きな天候の崩れはなく、再びアタックのチャンスが訪れたが、大半のドライバーは自己ベストを上回ることなく走行を終了する。
しかしそのなかで大躍進したのが松田だった。ラストアタックで自己ベストを約0.2秒削り取り、2位へと浮上。ポジション争いは先手を打ったトレルイエに軍配が上がったが、最後の最後に粘りを見せた松田は、決勝に向けて大きなはずみをつけることに成功した。
終わってみれば、トレルイエ、松田、オリベイラがトップ3を獲得。これにクルム、A・ロッテラー、そして本山と続いた今季初の予選は、新旧入り乱れての顔ぶれがそろう結果となった。
■逃げるトレルイエ、後方では激しい攻防戦
決勝日の朝。フリー走行では青空に恵まれたが、決勝を前にしてゆっくりと灰色の雲が広がり始めた。
午後2時30分、レースがスタート。ポールのトレルイエは難なく1コーナーをクリア。さらに松田、オリベイラと続くが、その真後ろに予選5位のアンドレ・ロッテラーが急浮上。しかしその隙を突くように本山が4位へと浮上した。その後、ロッテラーは不運にもクラッチトラブルが原因でスローダウン。早くも戦列を去る。
序盤こそトレルイエを追う松田、それに肉薄するオリベイラ、少し間をおいて本山、という隊列だったが、本山のペースが上がらず次第に差が開いていく。
この時点でマシントラブルを抱えていた本山はその後、自らピットイン。戦いの幕を下ろした。
トップ3台は依然として抜きん出たペースでレースをけん引。しかし、2番手松田は前を行くトレルイエに追随するというより、後方のオリベイラの猛追に遭う展開に甘んじていた。
レースは折り返しを前に、ルーティンワークのピット作業が始まっていたが、トップ3台にはまだその気配がない。
「松田を抜いてピットインできれば良かったが、それができなかったので、前のIMPUL勢がピットインした後に入るという、事前の作戦に従った」というオリベイラ。
ピットインを前に、ブレーキングミスを犯した松田を一旦パスしていたが、その後、そつなくピット作業を済ませたIMPULのスタッフがトレルイエと松田を送り出し、オリベイラ自らがピット作業を終えてコース復帰したときには、再び松田が先行。チームの底力を示した。
■緊迫した2位争い、ルーキーのオリベイラ3位ゴール
ピット作業でニュータイヤを手に入れたドライバーは再びペースを上げて応戦。序盤同様、やはりトップ3台が依然好調な走りで、4番手以降を大きく引き離した。
なかでも終盤の見どころを作ったのがオリベイラだった。3秒以上あった松田との差を、自己ベストタイム更新、さらにはファステストラップを叩き出す活躍によって、確実に縮めていったのだ。
松田とてただ防戦するだけでなく、首位ブノワとの差を削りながらの応戦。フォーミュラ・ニッポンにおける“先輩ドライバー"の意地を見せた。
だが、オリベイラの勢いは止まらない。残り6周となった時点でついに0.809秒差まで追い詰め、松田のテールに喰らいついた。
ところが、この後、急にラップタイムが落ち、時間をかけて削ってきたタイム差がチャラに。
実はクラッチトラブルが発生しており、すでにオリベイラ自身はこれを認識していたのだ。
「残り周回数を考え、これ以上プッシュするとクラッチを完全に失ってしまうだろうと予想できたので、マシンに負担をかけない走りへとスイッチした」とオリベイラ。
結果、トレルイエがポール・トゥ・フィニッシュで逃げ切り優勝を果たし、松田が2位。オリベイラはルーキー最上位の3位でフィニッシュした。
■オリベイラ、まさかの失格
レース後の再車検、問題となったのがオリベイラのマシンだった。
スキッドブロックが寸法不足と指摘され、車両規則違反による失格となったのだ。終始、レースを盛り上げた活躍を見せただけに、悔やまれる結果となってしまった。
これによって、3位にはデュバルが浮上。4位にはB・ビルドハイム、5位にR・クインタレッリ、6位にはクルム。さらに、片岡龍也、小暮卓史と続き、この8人が新ルールによるポイント獲得を果たした。
第2戦の舞台は、僅か2週間というインターバルで迎える三重県・鈴鹿サーキット。“ストップ・ザ・トレルイエ”、あるいは“ストップ・ザ・インパル”の戦いが続くのか。
さらに、イベントは“2&4”と呼ばれる2輪レースとの併催ゆえ、コースコンディションの変化も気になるところだ。
(文=島村元子/写真=KLM Photographics J)
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