三菱 i G (MR/4AT)【短評(前編)】
欠点を帳消しにできる革命児(前編) 2006.03.10 試乗記 三菱 i G (MR/4AT) ……149万1000円 数年前から温めていたアイデアは現実となり、ミドシップという特異なレイアウトで発表された軽自動車「i」。ショールーム、カタログだけではわからない魅力を探る。はっきりした長所短所
試乗しているあいだ、ふと助手席側を見て、幅の狭さで軽自動車だったんだと気づくことが、何度もあった。「三菱 i 」に乗って前を向いて走っている限り、軽自動車っぽさはほとんど感じなかった。こんな経験は、いままでなかった。
三菱 i には、昨年秋の東京モーターショーのときから注目していた。だからこのサイトのモーターショー特集でも、パーソナルベスト3のひとつにあげたのだ。「これは軽自動車の革命だ」とまで書いて、いいすぎかな? とも思ったけれど、乗ってみて、やっぱりこれは革命だ、という気持ちになった。
ただし三菱 i 、自動車界の革命児には多かれ少なかれ共通することだが、長所短所がけっこうはっきりしている。
乗り込んで走り出して、というところまでは短所が目立つ。ところが速度を上げていくと、後半で大逆転するみたいに、長所ばかりが目立ってくる。この展開がなんともドラマティックで、よけいに心を揺さぶられるのだ。
いちばんの短所は、ドアの閉まり音だろう。ここまでスタイリッシュなボディなのに、プワンと頼りない音を立てる。乗り込んだインテリアも、デザインは新鮮なのに、仕上げは最近の軽自動車としては安っぽい。シートはサイズは小さく座り心地は硬め、とこちらも印象はイマイチ。でも1時間乗り続けても不満は抱かなかったから、モノはそんなに悪くない。
リアエンジン伝説を受け継ぐ
フロントシートのヒップポイントはそんなに高くない。アクセルペダルは右足の前にあるが、ブレーキはやや離れて置かれる。そのため両足をやや内側に投げ出す姿勢をとる。「ロータス・エリーゼ」みたいだ。
リアシートは2550mmというロングホイールベースから想像するほどではないが、身長170cmの自分なら余裕で前後に座れる。フロントより一段高い位置に座って前を見ると、ルーフもドアパネルも、すべてが丸い。運転席に戻ると、Aピラーが内側に絞り込まれているのがわかる。箱の中ではなく、卵の中にいるようだ。なぜか心が安らぐ。これが胎内感覚というものなのか。
デジタルの速度計とアナログの回転計を同心円で重ね、両肩に燃料計と時計を載せたメーターは、ミッキーマウスっぽい。そのメーターを目の前にしつつキーを捻ると、リアから直列3気筒そのもののサウンドが響いてきた。
まっとうにフロアから生えた4段ATのレバーでDレンジを選び、スタート。発進直後に少しだけターボラグを感じるものの、すぐにゆるやかにトルクが盛り上がり、2WDでは900kgのボディに十分な勢いを与える。でも音はザラついていて、典型的な3気筒。排気管が長くとれないのでしかたがないのかもしれない。同じ欠点を持っていた「ホンダ・ビート」を思い出した。
ところが高速道路に乗ってスピードを上げ、100km/hになったところでアクセルを緩めると、まったく違う世界が訪れた。3気筒サウンドはピタッと止み、かすかな風切り音以外、卵の中はほとんど無音。エンジン音が後ろに逃げていくから静かというリアエンジン伝説は、三菱 i にも受け継がれていた。(後編に続く)
(文=森口将之/写真=河野敦樹/2006年3月)
・三菱 i G (MR/4AT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017933.html

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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