トップチェッカーのトレルイエにペナルティ、脇阪が逆転して今季初優勝
2004.08.30 自動車ニューストップチェッカーのトレルイエにペナルティ、脇阪が逆転して今季初優勝
2004年8月29日、全日本選手権フォーミュラニッポン第6戦の決勝レースが、山口県・MINEサーキットで開催された。予選2位のリチャード・ライアンはタイヤ無交換、無給油のノーピット作戦を取り、レース中盤にトップを奪取。だが、ルーティンワークでニュータイヤを装着し、ハイペースで追い上げてきたポールポジションスタートのブノワ・トレルイエが、ファイナルラップでライアンとの一騎打ちに持ち込む。ところがこの2台が接触。ライアンは戦列を離れ、トレルイエがトップでチェッカードフラッグを受けた。
レース後、1周減算のペナルティを受けたトレルイエは7位にポジションダウン。脇阪寿一が繰り上げ優勝となり、2位に金石年弘、3位は片岡龍也が入った。
■トレルイエ、会心のPP
昨年まで年2回のレース開催だったMINEサーキットだが、今年はこの一戦のみ。大半のチームは、7月上旬に行われた合同プライベートテストに参加。データ収集を経て、予選に挑んだ。
独自のテクニカルコースレイアウトを持つMINEは、これまでのレースを振り返る限り、外国人ドライバーの健闘が目立つサーキット。加えて、ディフェンディングチャンピオンの本山哲が圧倒的な勝率を誇る場所でもある。それを証明するかのように、予選前日の練習走行ではライアン、本山哲、トレルイエがトップ3のタイムをマークした。
土曜日の天気は晴れ。しかしながら九州地方に近づいていた台風16号の影響か、ひどく蒸し暑い。
そんななか、午前10時から45分にわたる予選1回目がスタート。15分後には、トレルイエが前日のトップタイムを上回る1分16秒530をマークし首位に立った。
一方、4戦連続ポール記録がかかったライアン。開始25分には1分16秒217まで縮め、トップを奪う。予選終了5分を切って、ポジションを上げてきたのは、Team LeMansの脇阪と土屋武士。ライアンに次いで2、3番手へ浮上する。だが、この後トレルイエがファイナルアタックで1分16秒184までタイムアップ。ライアンを抑え、暫定トップにつけた。
午後2時からの予選2回目を前に、どんよりとした空模様がサーキットを包み込み、雨の心配が出てきた。ウェット宣言も出ている。路面温度は予選1回目に比べ2度下降。雨さえ落ちなければ、タイムアップのチャンスも十分にあり得る。よって、開始と同時にほとんどのドライバーがコースへと駆け込んでいった。
ライアンは、コースイン直後から1分16秒台のタイムを刻み続けて逆転ポールを狙う。だが開始20分でトレルイエが1分16秒116をマーク、あっさりと自己ベストタイムを塗り替えた。
その直後、ぱらぱらと雨が落ち始め、これでライバルのタイムアップが難しくなるかに思われた。ところが、雨がコースを濡らすことはなく、逆に本山がタイムアップ。1分16秒台を切り、1分15秒847でトップに立つ。
これに続けとばかり、自己ベストタイムを更新したのが脇阪だった。トレルイエ、ライアンを押しのけ、2番手に浮上する。だが順位をめぐる争いが激しくなったのは、やはり残り5分から。頻繁に順位が入れ替わるなか、トレルイエがファイナルアタックで1分15秒753へとタイムを縮め、ポールポジションを奪回。自身初のPP獲得を果たした。ライアンもファイナルアタックで1分15秒829をマーク、自己ベストを更新して2番手へ。一方の本山は、最後にタイムを伸ばすことができず、3番手に甘んじた。
■脇阪がスタートで2位にジャンプアップ
日曜のMINEサーキットは、朝から曇天模様。心配された台風16号による雨の心配はなかったものの、このレースウィークで一番の暑さとなった。
午後2時30分、70周先のゴールを目指し、16台のマシンがスタート。フロントローのトレルイエとライアンのふたりがクリアスタートを切ったのに対し、セカンドローの本山が珍しく出遅れる。
さらに本山の隣、土屋はエンジンストール。逆に、3列目の脇阪がスタートを決め、オープニングラップはトレルイエ、脇阪、ライアンのオーダーとなった。一方、予選6位のアンドレ・ロッテラーと9位の小暮卓史がなんと3コーナーで同士討ち。これで早くも2台がレースを去るという、波乱の幕開けとなった。
■レース中盤は、”ノーピット作戦”組が健闘
トップのトレルイエは周回を重ねるごとに脇阪との差を広げ、単独走行となるが、脇阪は3位のライアンとの攻防戦を強いられる。
そんななか、9周目を終えた本山が早くもピットに入り、タイヤ交換、給油を済ませた。好スタートで4位に浮上していた井出有治もその次の周にピットイン。さらに、20周を過ぎ、ルーティンワークを行うマシンが続いた。
トレルイエは30周を終えてピットイン。その2周後に2番手の脇阪もピットに戻り、タイヤ交換だけを行う作戦に出る。これでライアンが自動的にトップに浮上した。だが、ノーピット作戦の可能性が高いライアンに対し、トレルイエは次々と前方のマシンをパス、ポジションを上げていく。まずは60周目、2位の金石年弘を1コーナーで逆転。さらに残り5周でトップとの差を0.3秒まで縮めて、ライアンを射的距離に捕らえた。
■ファイナルラップの逆転劇が、再度波乱を呼ぶ
スピードで勝るトレルイエの追撃に、ライアンも真っ向から応戦。テール・トゥ・ノーズのまま、ファイナルラップへと突入する。だが、第1ヘアピンでまさかのアクシデントが起こる。
ライアンと、そのインに飛び込んだトレルイエがサイド・バイ・サイドのままコーナーへと進入した末、接触。トレルイエはコースに踏みとどまり、そのまま走り切ってトップでチェッカードフラッグを受けた。
しかし、アウト側にいたライアンは、弾かれた勢いでマシンが一回転。ダメージを負い、レースを終えた。
これで2位が脇阪の手に落ち、3位には金石。金石はノーピット作戦を味方につけ、表彰台の一角をつかんだ。
ところがレース終了後、トレルイエに1周減算とペナルティポイント2点が科され、7位にポジションダウン。これで脇阪が今季初めての優勝を果たし、2位に金石。そして片岡龍也が、今季2度目の3位を獲得した。なお、現在、この裁定に対し、トレルイエのチームがJAFに控訴。正式結果は審議を待つことになった。
(文=島村元子/写真=KLM Photographics J)
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