ルノー・クリオスポールV6(6MT)【試乗記】
『野心を秘めている』 2001.06.19 試乗記 ルノー・クリオスポールV6(6MT)……498.0万円
名手J.ラニョッティによって、1981年のモンテカルロラリーを制したルノー・サンクターボ。あれから約20年の歳月を経て、“モンスター”の精神は、サンク改めクリオの背中に3リッターV6を搭載したクリオスポールV6に受け継がれた。『webCG』エグゼクティブディレクター、大川 悠が、スーパー(カー)コンパクトに乗る。
気取った商品
1980年代にWRC(世界ラリー選手権)に勝とうと、ルノーとアルピーヌはちっぽけなFWD(前輪駆動)ハッチのサンクからリアシートを外し、そこにターボ付きのハイチューン・エンジンを載せてしまった。このサンクターボ、無理矢理やった仕事だから、というか競技狙いだったから、どでかいラジエターがサイドにはみ出して幅が倍近くに思えるほど広がったり、なんだか真っ当なクルマに見られなかったけれど、あれはあれで痛快だった。
時は経て、サンクはクリオへと代替わり、そこに登場したのがサンクターボの後継たるクリオスポールV6である。やはりリアシートを追いやって載せられたのはラグナなどにも使われる3リッターV6。これをリミット7000にチューンして230psと30.6kgmを得ているが、今回はターボはなし。
ギアボックスは6MT。専用の前後ストラットのサスペンションを持つ。エアダムやオーバーフェンダーで相変わらず武装されているが、サイドのラジエターの張り出しなど、大分抑えられている、というより商品的に随分洗練されている。
それがクリオV6の性格を規定していた。要するにオリジナルの(?)破天荒な乗り物から、かなり大人びて気取った商品になってしまった。
レーシーだしトリッキー
だからすごく乗りやすい。クラッチはあっけないほど軽く、ステアリングも繊細。豪華なスポーツシートゆえに、町中でも気持ちがいい。ターボを失ったV6は全域フラットトルク型で、2000以下でも楽々使えるから、横着な運転さえ受け付ける。さすがに前205/50、後ろ235/45という17インチのミシュラン・ピロト・スポールは、首都高の継ぎ目などでピシッとくるが、でも全体的に乗り心地はいい。ともかくマイルドだ。
床下ではやたらと排気音がうなっているが、頭のすぐ後ろにあるエンジンからは、機械的な音はあまり聞こえず、昔みたいにエンジンを運んでいる印象も少ない。
でも、バカにしちゃいけない。その気になって飛ばすと、やっぱりレーシーだしトリッキーだ。回転の上昇とともにエンジンに気合いが入ってドライバーを鼓舞するが、一方でハンドリングはかなり繊細になってくる。なんだか前輪荷重が足らず、一方でV6の重心高が高いような感じだから、高速になるとスタビリティより俊敏性が出てくるし、ワインディングではきれいにロールするものの、その後のしっぺ返しが怖くなる。でも、そういうときにレスポンスのいいブレーキは大いなる救いだ。
大分おとなしくなったふりして、結構野心を秘めている。それでも昔を知っている人間からするとやや物足りないのは、時代のためか?
(文=大川 悠/2001年6月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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