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BYDシーライオン6(FF)

分かっていても驚くしかない 2025.12.10 試乗記 生方 聡 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車(PHEV)の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
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攻めた価格に目を疑う

ジャパンモビリティショー2025でジャパンプレミアとなったBYDシーライオン6。12月1日の正式発表で価格が明らかになったが、FWDが398万2000円、AWDが448万8000円という、想像以上に攻めた値づけに目を疑った。日本で販売される最も安いPHEVは「トヨタ・プリウスG(PHEV)」の384万7300円で、特別仕様車などを除けばシーライオン6のFWDが日本で2番目に安い。SUVタイプに限れば、「三菱エクリプス クロスM PHEVモデル」が409万4200円、「マツダCX-60 PHEV Lパッケージ」が570万0200円、「トヨタRAV4 Z(PHEV)」が575万0700円といったところで、車格や装備を考えると、シーライオン6の価格には大きなアドバンテージがある。

その一方で、これまでBYDが日本に導入してきた「ATTO 3」や「ドルフィン」「シール」「シーライオン7」を見てきた身としては、このシーライオン6も価格以上の価値や実力を持つことが期待できるだけに、試乗するのが楽しみだった。

そんなシーライオン6の一番の特徴が、これまでに日本に上陸したモデルがすべて電気自動車(BEV)だったのに対して、「DM-i(デュアルモードインテリジェンス)」と呼ばれるプラグインハイブリッドシステムを搭載すること。FWD仕様では1200kmに及ぶ長い航続距離を実現し、航続距離や充電に不安を感じ、BEVの購入をためらっているユーザーには、うれしい選択肢となるはずだ。

2025年12月1日に販売がスタートした「BYDシーライオン6」。納車開始はFF車が2026年1月末から、4WD車が同年3月からとのこと。
2025年12月1日に販売がスタートした「BYDシーライオン6」。納車開始はFF車が2026年1月末から、4WD車が同年3月からとのこと。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4775×1890×1670mm。こんなに立派な体格なのに、FF車(今回の試乗車)は398万2000円という値づけだ。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4775×1890×1670mm。こんなに立派な体格なのに、FF車(今回の試乗車)は398万2000円という値づけだ。拡大
「シール」などと同じ海洋シリーズに属しているため、フロントにはシリーズ共通の「オーシャンエックスフェイス」を採用。なかなかスタイリッシュな面持ちだ。
「シール」などと同じ海洋シリーズに属しているため、フロントにはシリーズ共通の「オーシャンエックスフェイス」を採用。なかなかスタイリッシュな面持ちだ。拡大
タイヤ&ホイールは前後とも19インチ。この試乗車はインドネシアのメーカー、Giti(ジーティー)タイヤの「ジーティー コントロールP10」を履いていた。
タイヤ&ホイールは前後とも19インチ。この試乗車はインドネシアのメーカー、Giti(ジーティー)タイヤの「ジーティー コントロールP10」を履いていた。拡大

“海洋シリーズ”ならではのスタイリッシュなデザイン

シーライオン=アシカという名前からも分かるように、シーライオン6はBYDの“海洋シリーズ”に属するミドルサイズのSUVである。同じ海洋シリーズのシールやシーライオン7同様、「オーシャンエックスフェイス」と呼ばれるテーマを取り入れたフロントマスクがこのクルマを特徴づけている。最近は、シールやシーライオン7を都内でよく見かけるようになったが、流麗でダイナミックなエクステリアデザインにはいつも目を奪われてしまう。一方、リアビューは、ライン状のLEDのデザインがシールやシーライオン7とは少し異なりやや主張が強いが、他のモデルと見分けるには格好のポイントである。

シーライオン6のコックピットは、ATTO 3のような奇抜さはなく、シールやシーライオン7と同じような落ち着いた雰囲気に仕上げられている。ステッチのあるソフトパッドが施されたダッシュボードやグロスブラックのパネルなどでスタイリッシュに彩られるうえ、シートヒーター/シートベンチレーションが備わる電動スポーツシートやInfinityのオーディオなどがすべて標準装着されてあの価格であることには驚くばかりだ。

全長×全幅×全高=4775×1890×1670mm、ホイールベース=2765mmと余裕あるボディーサイズだけに、シーライオン6の室内はとても広々としている。特に後席は広く、フロントシートを筆者に合わせた場合でニールームはこぶし4個分、30cm近いスペースが確保され、5段階のリクライニング機能とも相まって、快適なパッケージングとなっている。ラゲッジスペースも、通常時でも奥行きは約90cm、後席を倒せば約190cmまで拡大可能で、余裕ある収納能力がうれしい。

WLTCモードのハイブリッド燃費は「トヨタRAV4」のPHEVをしのぐ22.4km/リッター(RAV4は22.2km/リッターながら4WD)。燃料タンクは60リッター。
WLTCモードのハイブリッド燃費は「トヨタRAV4」のPHEVをしのぐ22.4km/リッター(RAV4は22.2km/リッターながら4WD)。燃料タンクは60リッター。拡大
フロントに積まれる1.5リッター4気筒の自然吸気エンジンは主に発電を担当。最高出力98PS(72kW)、最大トルク122N・mを発生する。
フロントに積まれる1.5リッター4気筒の自然吸気エンジンは主に発電を担当。最高出力98PS(72kW)、最大トルク122N・mを発生する。拡大
内装色はブラウン&ブラックのみの設定で、オレンジのステッチとパイピングがカジュアルな雰囲気をもたらしている。ダッシュボードやドアパネルなどにもソフトパッドが多用される。
内装色はブラウン&ブラックのみの設定で、オレンジのステッチとパイピングがカジュアルな雰囲気をもたらしている。ダッシュボードやドアパネルなどにもソフトパッドが多用される。拡大
センターコンソールは「シール」や「シーライオン7」とよく似たつくりだが、回生ブレーキのコントローラーがEV/HEVの切り替えスイッチに置き換えられている。
センターコンソールは「シール」や「シーライオン7」とよく似たつくりだが、回生ブレーキのコントローラーがEV/HEVの切り替えスイッチに置き換えられている。拡大

日本仕様はレギュラーガソリン対応

シーライオン6に搭載されるプラグインハイブリッドシステムのDM-iは、FWD仕様では最高出力72kWの1.5リッター直列4気筒自然吸気エンジンと145kWのモーター、そして容量18.3kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーで構成される。走行はモーターが主役となり、1.5リッターエンジンの役目は主に発電で、条件によっては直接駆動を担うこともある。

日本に導入するにあたっては、レギュラーガソリンに対応したのも見逃せないところ。日本車同様、ウインカーレバーがステアリングコラムの右に付くなど、細かい配慮もありがたい。

まずは「EV」モードで走りだすと、1940kgの車両重量に対して、最大トルク300N・mのモーターは、街なかでスムーズかつ余裕のある加速を見せる。さらに高い速度域でもふだんの加速には不満はなく、一般道から高速までEVモードで十分カバーできる。ただ、高速道路への合流などの場面でアクセルペダルを深く踏み込んだときに、100km/hの少し手前あたりの加速がやや鈍る感じがあるのが気になるところ。そんな場合はアクセルペダルを奥まで踏みつければエンジンが自動的に始動し、勢いよく加速できるので、心配はない。

回生ブレーキは、車両設定のメニューで「スタンダード」と「ハイ」の2パターンを選ぶことができるが、どちらもさほど強くない。個人的には回生ブレーキだけである程度減速できるのが好みだが、これまでどおりフットブレーキに頼る運転スタイルを変えずに済むほうがなじみやすくて助かるという人にはうれしい配慮だ。

駆動用バッテリーの容量は18.3kWh。100kmものEV走行換算距離(WLTCモード)を誇る。
駆動用バッテリーの容量は18.3kWh。100kmものEV走行換算距離(WLTCモード)を誇る。拡大
シート表皮は合皮とのことだが、しっとりとした手触りで質感は十分。ヒーター、ベンチレーションとも標準装備だ。
シート表皮は合皮とのことだが、しっとりとした手触りで質感は十分。ヒーター、ベンチレーションとも標準装備だ。拡大
後席空間の広さはご覧のとおり。背もたれは5段階の角度調整ができる。
後席空間の広さはご覧のとおり。背もたれは5段階の角度調整ができる。拡大
メーター用スクリーンは12.3インチ。レイアウトがちょっと雑然としているのが気になるが、表示品質自体は高い。
メーター用スクリーンは12.3インチ。レイアウトがちょっと雑然としているのが気になるが、表示品質自体は高い。拡大

黒子に徹するエンジン

「HEV」モードを選んでも、発進はモーターが担当する。動きだしてある程度までスピードが上がると、自動的にエンジンが始動するが、エンジンの音は静かで、その存在を忘れてしまうほどだ。動きだしたエンジンは、基本的には発電に徹しているが、高速道路を巡行する場面などではフロントアクスルを直接駆動することもある。

ただ、その領域はさほど広くなく、アクセルペダルを踏み増すと、エンジンは再び発電用に役割を変える。EVモード同様、アクセルペダルを奥まで踏み込むとエンジンは回転を上げ、このときばかりはその存在を主張。この状況でもエンジンは発電に徹し、それによってより多くの電力を手にしたモーターが、一段と力強い加速を見せてくれるというわけだ。高速巡航時にエンジンが駆動を担うのは、そのほうが燃費が稼げるためで、それ以外は発電機を回す黒子に徹するのもまた低燃費を目指しているからなのだ。

フロント:マクファーソンストラット、リア:マルチリンクのサスペンションに、235/50R19タイヤが組み合わされたシーライオン6の走りは、基本的にはマイルドな乗り心地で、高速時のフラット感もまずまずといったところ。目地段差を越えたときなど、やや鈍いショックを伝えてくるのが気になるものの、全体としては快適な仕上がりである。

短時間の試乗だったため、燃費や先進運転支援システムなどのチェックはできなかったが、試乗前以上にシーライオン6の出来栄えと、それに不釣り合いな低価格にはあらためて驚かされた。PHEVに興味がある人は、ぜひ一度試してみる価値のある一台である。

(文=生方 聡/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

ダッシュ中央のタッチスクリーンは15.6インチ。電動で縦長スタイルへと回転できるギミックはなくなってしまった。
ダッシュ中央のタッチスクリーンは15.6インチ。電動で縦長スタイルへと回転できるギミックはなくなってしまった。拡大
ハイブリッドバッテリーの残量は好みに設定できる。設定値まではEV走行を優先し、それを下回らないようにエンジンが発電するというロジックだ。
ハイブリッドバッテリーの残量は好みに設定できる。設定値まではEV走行を優先し、それを下回らないようにエンジンが発電するというロジックだ。拡大
スクリーン上部をスワイプすると大量のショートカットが表示される。車両は事細かに設定できるが、日常的な仕様ならこの範囲で困ることはないだろう。
スクリーン上部をスワイプすると大量のショートカットが表示される。車両は事細かに設定できるが、日常的な仕様ならこの範囲で困ることはないだろう。拡大
荷室の容量は425~1440リッター。後席を倒した跡地はおおむねフラットになっている。
荷室の容量は425~1440リッター。後席を倒した跡地はおおむねフラットになっている。拡大

テスト車のデータ

BYDシーライオン6

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4775×1890×1670mm
ホイールベース:2765mm
車重:1940kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:98PS(72kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:122N・m(12.4kgf・m)/4000-4500rpm
モーター最高出力:146PS(145kW)
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
タイヤ:(前)235/50R19 99V XL/(後)235/50R19 99V XL(ジーティー・ジーティー コントロールP10)
ハイブリッド燃料消費率:22.4km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:100km(WLTCモード)
交流電力量消費率:153Wh/km(WLTCモード)
価格:398万2000円/テスト車=398万2000円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:761km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

BYDシーライオン6
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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