中国メーカーのブース紹介(後編)【北京モーターショー2012】
2012.04.26 自動車ニュース【北京モーターショー2012】国有大手6社も独自ブランド車でアピール
2012年4月23日に開幕した北京モーターショー。中国メーカーリポートの後編は、大手国有メーカーの現状と注目モデルを紹介しよう。
■6社全てが独自ブランド車を投入
中国政府は1990年代半ばに自動車産業の振興を目指す国家戦略を打ち出し、国有大手8社を優先的に育成する方針を決めた。海外の先進技術を効率よく学ぶため、中国市場に参入する外資系メーカーの合弁相手をこの8社に絞ったのだ(商用車は除く)。その後、業界再編などを経て現在は大手6社になっている。
大手国有メーカーは、外資系メーカーとの合弁会社で外資ブランドのクルマを生産するのが事業の柱で、独自ブランドの乗用車の開発では独立系メーカーに後れを取っていた。しかし2000年代半ばに政府が中国独自の技術とブランドを振興する「自主創新政策」を打ち出したのを契機に、独自ブランド車の開発を続々とスタート。現在までに6社全てが独自ブランド車を市場に投入した。
■上海汽車から「MGB」風のクロスオーバー
なかでも先頭を走っているのが乗用車最大手の上海汽車だ。同社は1984年にフォルクスワーゲン(VW)と中国初の乗用車合弁会社を立ち上げ、97年にはゼネラルモーターズ(GM)とも合弁。2つの合弁会社の販売台数は、2011年には合計約235万台に達した。GMとの共同出資で15年前に研究開発センターを設けるなど、技術習得や人材育成にも早くから力を入れてきた。
独自ブランド車への本格参入は2005年、経営破綻したローバーの主力車種の知的財産権を買収したのがきっかけだ。まず「ローバー75」をベースにした高級セダン「栄威750」を投入。その後、MGブランドを保有していた南京汽車を吸収合併し、現在は栄威とMGの2ブランドを展開している。
今回の北京ショーではフラッグシップセダン「栄威950」とクロスオーバーコンセプトモデル「MG ICON」を初公開。栄威950のボディーは全長×全幅×全高=4996×1857×1502mmと、「レクサスLS」(同5060×1875×1465mm)に迫るビッグサイズだ。展示車両を見る限り内外装とも安っぽい感じは微塵もなく、洗練すら感じさせる。乗り心地やドライバビリティーは実際に運転してみないと分からないが、上海汽車の技術力の底上げを着実に感じさせる1台だ。
MG ICONは往年の「MGB」のモチーフを取り入れた小型クロスオーバーで、これまた洗練されている。仮に予備知識なしで見たら、中国メーカーのコンセプトモデルとは思わないだろう。2014年の市販化を目指しているもようで、このままのイメージで出てきたら海外でも話題を集めるだろう。
■名門ブランド「紅旗」の復興めざす第一汽車
中国最初の自動車メーカーであることを社名に冠する第一汽車は、乗用車と商用車を合わせた販売台数で長年中国最大手の座を守っていた。ところが統計を見ると、昨年は上海汽車と東風汽車の後塵を拝する3位に後退していた。名門国有企業にありがちな保守的な体質がたたり、市場急拡大の波にうまく乗れなかったようだ。
乗用車では1991年からVW、2003年からトヨタと合弁しており、マツダとも提携している。しかし独自ブランド車では、これまで市場の話題を集めるクルマを出せていなかった。
そんな第一汽車が“長兄”のメンツをかけて北京ショーで初公開したのが、高級セダン「紅旗H7」だ。紅旗は1980年代まで国家指導者の専用車として使われていた国産高級車の代名詞である。だが、90年代からはアウディなど外資系の合弁生産車に市場を奪われ影が薄くなっていた。そこで、H7の投入で政府向けの公用車市場の奪回をめざしている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=5095×1875×1485mmと、高さ以外は「栄威950」より一回り大きい堂々たるもの。名門ブランドの復興なるか、興味深い。
■東風汽車の独自ブランド車に日産が協力?
上海汽車、第一汽車とともに「三大メーカー」と呼ばれる東風汽車は、もともとはトラック専業メーカーだったが、現在は日産やPSAプジョー・シトロエンとの合弁で乗用車を生産している。特に独自ブランドの大型トラックと日産との乗用車合弁が好調で、2010年に第一汽車を抜いて上海汽車に次ぐ2位に躍り出た。
しかし独自ブランドの乗用車の開発では第一汽車よりさらに出遅れ、2009年に初の小型セダン「風神S30」を投入したものの市場の注目度は低かった。そんな東風汽車のブースで筆者の目を引いたのは、今年3月に発売された新型小型セダン「風神A60」だった。このクルマは一見して、日産の旧型「シルフィ」の前後のデザインを変えただけであることが分かる。
東風汽車は独自開発を後退させ、日産から旧型車の設計図を買ったのだろうか。おそらく答えは否だ。むしろ「A60」は、東風汽車の独自開発に日産が前向きに協力し始めた表れではないかと筆者は推察している。東風と日産は合弁事業のパートナーであり、東風が完全な独自開発にこだわらず、日産の既存車台を利用してクルマを開発すれば両社にとってメリットがある。日産とルノーが車台を共通化してコストダウンしているのと同じ発想だ。
三大メーカー以外の国有大手3社 ― 長安汽車、広州汽車、北京汽車も、展示ブースに独自開発車をずらりと並べ、アピールを競っていた。少なくとも内外装のデザインは数年前までのような野暮ったさが消え失せ、先進国メーカーに追いつきつつある。量産品質の安定やブランドイメージの確立など課題は多いものの、中国から本格的なグローバルプレーヤーが登場するとすれば、それは独立系より国有大手の中から生まれる可能性が高いだろう。
(文と写真=岩村宏水)
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