“付加価値”で勝負する欧州車【上海ショー2013】
2013.04.25 自動車ニュース ![]() |
【上海ショー2013】“付加価値”で勝負する欧州車
ワールドプレミアがめじろ押しの上海モーターショー。今回、気が付いたことに、“付加価値”の訴求がある。BMWやシトロエンはクロスオーバーモデルを披露して、観衆に“プラスアルファ”を訴えた。フォードは懐かしい「エスコート」の名を与えた“他とは違った”実用車を提案した。消費者の好みにも質的な変化が生じているようだ。
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■「3シリーズGT」の異母兄弟!?――「BMWコンセプトX4」
車名では「コンセプト」とうたうものの、すぐにでも売り出せそうな完成度をもったショーモデルを展示するのは、BMWのいつもの手法だ。ご覧の通り、「コンセプトX4」は「X6」の弟分的な、ひと回り小さなSUVである。発表されたばかりの「3シリーズ グランツーリスモ」の、異母兄弟のようにも見えてしまう。
2007年のデトロイトモーターショーで初めてX6を見た時には、「『X5』のルーフを斜めに切り取ったキワモノ」と感じてしまったが、コンセプトX4にはそれがない。とても自然に見えて、乗ってみたくなる。時代の流れがSUVの多様化を促したのだろう。
■実用車も付加価値の時代へ――「フォード・エスコート コンセプト」
広大なフォードブースの中央にある回転台の上に置かれていたのは、なんとも懐かしい「エスコート」の名前を持つコンセプトカーだった。こちらもコンセプトとうたわれるものの、すぐにでも生産できそうな現実的なフォルムとディテールを有している。
1970年代のエスコートのプロポーションを現代流に再現しているのだが、MINIのように演出過多でないところもまたすがすがしい。プレスキットにはメカニズムや内容に関する言及は一切ないので、純粋なデザイン提案である。
フォードいわく、「中国の顧客にとって、他と違っていて、欲しくなるコンパクトカー」とのことである。つまり、“単なるクルマ”であるだけでは、もう振り向かれないのだ。機能や価格以外の価値を訴求する段階に、中国のマーケットもそろそろ達し始めた。フォードのマーケット分析と認識の結果が、「エスコート コンセプト」という形となって展示されたわけである。
超高級車やスポーツカーではなく、大量生産されるコンパクトカーをフォードのような大手が模索しているのだから、中国マーケットにも確実に質的な変化が訪れているのだろう。とても興味深い提案だった。
■ロングボディーとPHVが登場――「ポルシェ・パナメーラ」
4年前の上海ショーでワールドプレミア発表された「パナメーラ」は、追加モデル発表の場に再び上海の地を選んだ。追加されたのは、ホイールベースを15cm伸ばした「パナメーラ4S エグゼクティブ」と「パナメーラ ターボ エグゼクティブ」。リアシートのレッグルームが増えている。
もうひとつ上海で発表されたのは、「パナメーラS eハイブリッド」。これまでの「パナメーラS ハイブリッド」を発展させたもので、プラグインハイブリッド化された。電気だけで36kmの航続距離を持ち、その時の最高速も135km/hと高速なのがポルシェらしい。
さらに、「パナメーラS」と「4S」用のポルシェ製V8エンジンが、新開発の3リッターV6ツインターボに置き換えられた。この新エンジンは、V8から2気筒切り取ったものに過給することでパフォーマンスとエコ性能を両立させる、ダウンサイジング志向のものである。
これらの大きな改変によって、パナメーラのラインナップは合計10モデルに増えた。
2012年は生産されたパナメーラの3台に1台が中国で売れたという。中国はポルシェにとって世界第2位の重要なマーケットである。
■シトロエンの方向性を示す――「シトロエン・ワイルドルビー」
鮮やかなルビー色に輝くシトロエンのコンセプトカー。クロスオーバーやSUVのカテゴリーに分類されるのだろう。ウィンドウラインは直線的で、ボディーサイドには抑揚の強い面を配している。こういったデザインの傾向は、今回の上海ショーで目についた。
(文=金子浩久/写真=金子浩久、BMW、フォード、ポルシェ、シトロエン)
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