第191回:これが最新の「ウニモグ」だ! ~“はたらくクルマ”のイマをリポート
2013.06.22 エディターから一言 拡大 |
独ダイムラーが手がける作業用トラック「ウニモグ」が、久々にフルモデルチェンジ。“はたらくクルマ”の代名詞は、どんな進化を遂げたのか? 発表会の様子や関連施設の情報とともに紹介する。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
進化を続ける“動力装置”
トラックやバスなど、ひと口に「はたらくクルマ」といっても、ジャンルやサイズ、用途はさまざま。車種名を聞いても、即座に思い浮かばないようなクルマだって多いと思う。しかし、はたらくクルマに特別な興味がなくとも、ちょっとしたクルマ好きなら「ウニモグ」という名前はご存じだろう。「あぁ、高速道路や工事の現場で見かけたことのある、黄色くて丸っこいやつかな……」と、思い出す人もいるのではないだろうか。
2013年4月19日、ウニモグは大規模なモデルチェンジを実施、新型モデルがデビューした。
ウニモグとはドイツ語の「Universal Motor Gerät」の頭文字部分をつなげて読んだもので、直訳すると「多目的動力装置」という意味だ。誕生したのは第二次大戦の終戦から間もない1951年。エンジンの出力を車外に取り出す機構「PTO(パワーテイクオフ)」を備えており、それを利用した作業用アタッチメントを使って、丘陵地帯の田畑で作られた農作物を引き上げ、そのまま荷台へと積み込み、アウトバーンを走って市場へと運ぶための道具として開発された。そのため、初期モデルから車体の前後左右には、さまざまな作業機器を駆動させるためのPTOを装備しており、泥濘(でいねい)地や丘陵地帯でも走行できるよう総輪駆動が採用されたのである。
誕生から60年を迎えた2011年には“ウニモグの未来像”を提案したコンセプトモデルも発表されており、熱狂的ファンの間では次期モデルへの期待と興味が高まっていた。さて、フルモデルチェンジを果たした、待望の新型ウニモグとはどのようなクルマ、いや装置で、一体何が進化したのだろうか……?
乗り手にも環境にも優しく
従来モデルでは「U20」と呼ばれるコンパクトウニモグのほか、多目的作業型、高機動型の3シリーズを展開していた。新型ウニモグもこうしたバリエーション展開を継承するが、多目的型と高機動型の2シリーズに統合されている。
多目的型は、細かく分けると「U216」から「U530」まで8モデルが用意され、型式名は、百の位がモデルレンジ、下2桁が出力(馬力)を表す。つまりU216であれば200シリーズの160hp(正確には156hp)仕様ということだ。200番台はエントリーモデル、300/400/500番台はその他多目的型という位置付けで、200番台モデルには5.1リッターの4気筒エンジンが、300~500番台には4気筒と7.7リッターの6気筒が設定される。
高機動型は「U4023」と「U5023」の2モデルが用意され、ともに230hpを発生する直列4気筒ディーゼルエンジンを搭載する。両モデルにおける大きな相違点はGVW(車両総重量)で、U4023はGVW10.3トン、U5023は14.5トンである。
さて、新型ウニモグにおける最大のトピックは、ヨーロッパにおいて2015年から実施される次世代の環境規制、ユーロ6への対応だ。新型は「クリーンで、より高効率、そしてパワフルに」をコンセプトに掲げており、SCR(尿素触媒装置)、EGR(排ガス再循環装置)、DPF(黒煙除去フィルター)を組み合わせた、メルセデス・ベンツではおなじみのBlueEfficiencyテクノロジーにより、厳しい基準をクリアしている。
エクステリアは、バンパー部分に埋め込まれた丸型ヘッドライト、最新メルセデスの流れをくむグリル形状など、凛々(りり)しくモダンなイメージとなった。
一方、インテリアで重視されたのは「最高の労働環境」。インパネ形状も丸みを帯びたデザインとなり、乗用車と同等の快適装備も与えられている。もはや、人々の手足となって働く装置としても、環境性能をはじめ、全方位において優しさが求められる時代なのである。
試乗ができる(!)場所もある
さて「大規模なモデルチェンジを実施!」といっても、悲しいかな大きな話題にならないのも、はたらくクルマならでは。日本はもちろん、ヨーロッパにおいても、最大のユーザーは自治体などの公共団体や企業であり、やはり趣味の対象としては、身近な存在ではないのだろう。
一方で、「斜度45度の坂をらくらく登る」「線路上で列車をけん引できる」など、ウニモグにまつわるうわさばなしを聞いたことがあるという人はいるはず。かの地にもこうした特殊性に引かれるマニアが少なからずいるようで、ドイツ本国にはウニモグだけのミュージアムがあり(http://www.unimog-museum.com/)、結構な人気スポットとなっている。
シュトゥットガルトから西に約100キロ、フランス国境にほど近い小さな街ガッゲナウにそのミュージアムはある。「なぜ、そんな田舎町に!?」と思われるかもしれないが、ガッゲナウはウニモグ誕生の地であり、2002年までは生産工場も置かれていた。こうした経緯もあり、2006年にウニモグミュージアムが開設されることになったのだ。
館内の展示スペースに並ぶのはウニモグと派生モデルが約15台という規模だが、プロトタイプや軍用車両、除雪車など、バラエティー豊かなラインナップが顔をそろえる。そして、最大の見どころといえば実車の同乗走行が可能ということ。隣接する敷地あるオフロードコースにおいて専属ドライバーが操るウニモグの助手席に座り、驚くべきパフォーマンスを体験することができるのである。
「名前のとおりウニモグは装置であり、仕事のための道具」と思われるかもしれないが、同乗走行が終わるころには、力強く、頼れる”道具”ならではの魅力に気付くはず。もしもドイツを旅行する機会があったら、ぜひとも訪れていただきたいスポットだ。
(文と写真=村田尚之)

村田 尚之
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
