第6回:日本で乗れない4ドアセダン
2013.09.26 世界のNISSAN、イッキ乗り!今後、新型「スカイライン」として日本に導入されるであろう「インフィニティQ50」のほかにも、国内ではまだ知られていないセダンがある。「アルティマ」と、“フーガの大排気量グレード”たる「Q70 5.6 AWD」の走りをリポートする。
日産アルティマ
■こんなセダンがあっていい
かつての「ブルーバード」に端を発する「アルティマ」は、2012年発表のこのモデルで5代目。北米では「カムリ」や「アコード」などをライバルとする売れ筋セダンだ。もともと競合車に比べればスポーティーなフォルムがウリだったが、今の北米日産デザインを象徴する一台という現行型は、さらに研ぎ澄まされたカタチが目を引く。
でもインテリアは一転してラグジュアリー。走りの方向性もそうだった。ステアリングの切れ味はリニアで、身のこなしは前輪駆動であることを感じさせないけれど、3.5リッターV6とコンビを組むのがCVTなのでレスポンスは穏やかだし、乗り心地は予想以上にまろやか。長距離巡航に向いていそう。なぜか「ボルボV70」を思い出した。
ヨーロッパのクルマ作りでは、エモーショナルなデザインにはそれにふさわしいハンドリングを組み合わせるのが常識。でもアメリカにはそんな堅苦しい文法はない。それがアルティマの自由で爽やかでリラックスできるキャラを生んでいる。こういうセダンがあればと思う人、自分以外にもいるんじゃないだろうか?
(文と写真=森口将之)
インフィニティQ70 5.6 AWD
■インフィニティのAMG
初代「フーガ」が出た時、「これにアメリカ向けSUVの大排気量V8を積んじゃったら」と冗談半分で提案したら、「とてもバランス取れん」と却下された。でも今、それがある。3.7リッターのガソリンV6を基本としてハイブリッドも3リッターディーゼルも選べる「インフィニティQ70」だが、そこに5.6リッターものV8(最高出力426ps 、最大トルク57.6kgm)を無理やり押し込んだのがこのクルマ。過剰なほどの大トルクで大地を踏みしめる欲求は、まだまだアメリカ人の心の奥に健在らしい。
無理やり(まるで船舶用みたいにかさばるエンジンなのだ)といっても、走らせてみると完成度は高く、鼻先だけが重いという不自然な感覚はない。重いには重くても、切れば切っただけ素直に向きを変えるし、うっかり攻めすぎても、だらしなくフロントから膨らむことはない。もちろんトルク感は排気量相応で、空気の壁を切り裂くというより、周囲の空気ともどもムムッと行ってしまう感じ。
でも、いったん怪力を味わってしまうと、いたずらに踏みまくる気にならないのも事実。限りない余力を秘めたまま、ほとんどアイドリングとトップギアで悠然と行くのが基本のスタイルになる。インフィニティのAMG?
(文=熊倉重春/写真=日産自動車)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
NEW
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから”
2025.9.12デイリーコラム新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。 -
NEW
思考するドライバー 山野哲也の“目”――BMW M5編
2025.9.11webCG Moviesシステム最高出力727PS、システム最大トルク1000N・mという新型「BMW M5」に試乗した、レーシングドライバー山野哲也。規格外のスペックを誇る、スーパーセダンの走りをどう評価する? -
NEW
日々の暮らしに寄り添う新型軽BEV 写真で見る「ホンダN-ONE e:」
2025.9.11画像・写真ホンダの軽電気自動車の第2弾「N-ONE e:(エヌワンイー)」の国内販売がいよいよスタート。シンプルさを極めた内外装に、普段使いには十分な航続可能距離、そして充実の安全装備と、ホンダらしい「ちょうどいい」が詰まったニューモデルだ。その姿を写真で紹介する。 -
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ
2025.9.11デイリーコラム何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。 -
ポルシェ911カレラT(前編)
2025.9.11谷口信輝の新車試乗製品の先鋭化に意欲的なポルシェが、あえてピュアな楽しさにこだわったというモデル「ポルシェ911カレラT」。さらなる改良を加えた最新型を走らせた谷口信輝は、その仕上がりにどんなことを思ったか? -
第927回:ちがうんだってば! 「日本仕様」を理解してもらう難しさ
2025.9.11マッキナ あらモーダ!欧州で大いに勘違いされている、日本というマーケットの特性や日本人の好み。かの地のメーカーやクリエイターがよかれと思って用意した製品が、“コレジャナイ感”を漂わすこととなるのはなぜか? イタリア在住の記者が、思い出のエピソードを振り返る。