新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから”
2025.09.12 デイリーコラムメモリアルイヤーの“ひのき舞台”で
世界のクルマ好きにとって、夏といえばモントレー、もしくはペブルビーチである。その昔は8月の第3週末にイベントが集中したことからカーウイークエンドなどと言われていたのに、今では1週間以上にわたって多くの催しがあるためカーウイークと呼ばれるくらいになった。
2025年で22回目を迎える「モーター・スポーツ・ギャザリング」は例年金曜日に“ザ・クエイル”で開催される超有名イベントのひとつ。そもそもはクラシックレーシングカーやヴィンテージスポーツカーの展示イベントだったが、その並外れた集客力――何万円もするチケットが発売即完売する――に目をつけた世界のラグジュアリーブランドが、この場所を新型車のワールドプレミアの場に使い始めて久しい。
ランボルギーニもこの場所を積極的に活用するブランドのひとつ。2024年は「テメラリオ」を、2023年はBEVコンセプトの「ランザドール」を、2020年には「カウンタックLPI800-4」のワールドプレミアを催した。そして今年、2025年というちょっとした記念の年=チェントロ・スティーレの20周年+ポロストリコの10周年+ステファン・ヴィンケルマン氏の社長就任20周年(中抜けはあるけれど)にも、既報のとおり、新型フューオフの「フェノメノ」を発表したというわけだ。
前日の木曜日。私は日曜日に開催されるペブルビーチ・コンクールデレガンスの会場脇にある大きなヴィラにいた。例年、ランボルギーニは金曜から日曜までこの邸宅を借り切ってゲストラウンジとしているのだ。ゲストはここで朝食から夜のパーティーまで楽しむことができる。日曜には目の前の18番ホールでコンクールが開催されるという好立地にある。
つくり手も自信満々
もちろん木曜日の夕方など、まだイベントの準備も行われていない。昼間にはゴルファーが世界的に有名なこのコースを楽しんでいたに違いない。けれどもヴィラをのぞいてみれば、こっそり招かれた6人のジャーナリストとランボルギーニのトップ4、ステファン・ヴィンケルマン氏(社長)、フェデリコ・フォスキー二氏(マーケティング)、ルーベン・モール氏(開発)、ミッティア・ボルカート氏(デザイン)が小さな模型を見ながらにこやかに談笑する様子を見ることができたはずだ。
「いつものように8分の1のモデルを用意したのだけれど、トランプ関税のおかげで間に合わなかったよ」と、ミッティアが笑う。その代わりに彼が個人的に持ってきた43分の1スケールの3Dプリンターモデル(未塗装)を10人(いやスタッフを含めればもっと)で見つめていたというわけだ。
当然ながらミッティアのデザインプレゼンが最も盛り上がった(誰もがまずは知りたいところだから!)けれど、次世代を担うであろう若いデザイナーたちを紹介することも忘れない。彼らは常に未来を向いている。
「明日発表する新型フューオフはブランドのデザインマニフェストのみならず、次世代の新技術をたくさん盛り込んだモデルになる」と、ステファン。応えてルーベンもドイツ語なまりの早口英語で6つのポイント、ファインチューンされたV12エンジン/新設計のバッテリー/6Dセンサー/レーシングダンパー/CCM-Rブレーキシステム/ブリヂストンタイヤ、についてまくしたてる。彼がノリノリで語る様子は相当に自信がある証拠でもあった。
そして迎えた翌日。朝早くにもかかわらずランボルギーニブースの前には開始予定の半時間以上前から陣取り合戦が始まっていた。
9時50分、12分遅れでフェノメノ、デビュー。世界限定29台ももちろん完売御礼。休む間もなくアンベール後の舞台裏では、トップ4の個別インタビューが始まった。
普遍的なスタイルと異次元の走り
年産2000台だった頃のフューオフモデル「レヴェントン」が35台であったことを思い出せば、フェノメノがいかに希少であるか、がわかる。2007年のレヴェントンのあとはほぼ3年おきに、「セストエレメント」(2010年・20台)、「ヴェネーノ」(2013年・12台)、「チェンテナリオ」(2016年・40台)、「シアン」(2019年・82台)、カウンタックLPI800-4(2021年・112台)、と出してきた。
その限定数はモデルによって異なるが、「とにかくエクスクルーシブであることが重要で、それぞれに意味づけや、時々のブランドの置かれた状況、技術や生産面での制約、さらには顧客の要望などを考慮して決めてきた」とフェデリコ。彼は現在マーケティングのトップで事実上のナンバー2、1998年からサンタアガータに勤める生え抜きだ。
「入社した時は夢のクルマをつくる会社だから入ったんだ。経営状態なんてまるで知らなかったよ。アウディが買収してがらりと変わった。けれども彼らはヘリテージを理解して、組織だけを強くしてくれたんだ。とはいえ、これだけ成長できるとは、それこそ夢にも思わなかった」
ミッティアもまた筆者の単独インタビューに応じてデザイン制作の舞台裏を語る。「インパクトが強いだけのデザインには正直うんざりなんだ。見れば見るほど好きになっていくような、タイムレスなスタイルを目指した。若いデザイナーはやり過ぎたがるけれど、それを上手に抑えつつ、つくっていくんだよ。いろんなプロジェクトを同時並行的にね」。
「フェノメノのベースはもちろんV12プラグインハイブリッドのレヴエルトだ。V12エンジンはチューニングしたし、バッテリーは同じサイズながら中身を完全に新設計にした結果、電動走行距離も20kmに増えたよ。テメラリオも素晴らしいドライビングマシンだけれど、1000PSオーバーで新しい足まわりを手に入れたフェノメノはまるで別次元だ。サーキット性能はもちろん、実は乗り心地だって良くなったんだ。そしてサウンド。規制の範囲内とはいえ、期待してもらっていい」と、すっかり日焼けしたルーベンも自信たっぷりに語ってくれた。
これからも目が離せない
デザインマニフェストであると同時に、テクノロジーの博覧でもある。たった29台のためにそんなことをするはずがない。ステファンは、「フェノメノはエレガントなハイパーカーを目指した」と断言したうえで、こうも付け加えた。
「もちろん、これまでのフューオフでもそうであったように、デザインやテクノロジーは次世代のモデルへと受け継がれていく。単に馬力の上乗せやラップタイムの短縮だけを狙うことなく、ランボルギーニのスーパーカーとして総合的に進化させていくことが重要だ」
「状況の許す限りV12エンジンを続けていくこともまた以前に約束したとおり。近い将来にはテメラリオの別仕様も登場するだろう。そしてもちろんレヴエルトの後継モデルも出る」
その意味するところは、ひょっとすると「ムルシエラゴ」や「アヴェンタドール」のように10年選手とせず、マラネッロ(=フェラーリ)のように数年単位で名前とスタイルを変えていく手法をとるということだろうか。なるほどそのほうが希少性は高まるし、顧客満足度も上がるに違いない。
ちなみに期待の第4のモデル、ランザドールに関しては、「もうすぐ具体的な内容を発表することになるだろう。フル電動になるか、プラグインハイブリッドになるか、世の中の動向をさらに見極めて判断していきたい」とステファンはインタビューを締めくくった。
終わりぎわ、「同い年の君とは初めてのインタビューから20年になるよな」とステファンが感慨深げに言った。この20年でランボルギーニの規模は年産台数で約7倍、会社の規模で約5倍になり、フォルクスワーゲン グループでも有数の高収益ブランドにまで成長した。次の10年、20年がたったら、いったいどんなことが起こるのだろうか。良い意味で期待の裏切られることを願っている。
クンタッチ! で始まったモダンランボルギーニは、そうでなきゃいけない!!!!!
(文=西川 淳/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ/編集=関 顕也)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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