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第10回:柔軟? それとも棄国!?
NISSAN 360で分かったインフィニティ香港ブランド化の衝撃!

2013.09.28 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ

イベントを通してアイデンティティーを再確認

いやはや「NISSAN 360」、久々に衝撃、大衝撃! ですよ。いわゆる見えてきた“日産自動車の未来”であり“自動車メーカーとしての進化”にね。

ほかのページにも出ている通り、NISSAN 360はざっというと日産自動車を「360度味わい尽くす」イベント。英国BBC『トップギア』じゃないけど、北米カリフォルニアのアーバインにある広大な元米空軍飛行場に全世界で販売されている日産車を集め、ぜいたくにも全世界のメディアにイッキ乗りさせるんだけど、その規模からしてメッチャ、ハンパない。
北米や欧州、南米、それに日本を含むアジアから、全900名のメディアを9グループに分け、5週間かけて招待する大イベント。日本人ジャーナリストだけで120名! ホンマにそんないたんかい? ってレベルだけど、実は開催するごとに規模が膨れあがっているそうだ。今回の参加者は総勢1500人で、聞けばそのうち600人ぐらいはグローバルな日産の関係者。要は、ある意味“全世界的社内イベント”にもなっている。

でも、1999年にフランス元国営企業の「ルノー」と日本を代表する「日産」が合併してできた企業ってそういうことなんだよね。そもそも会社のアイデンティティー自体がデカすぎて、4年に1回のオリンピック的間隔で、内外ともに集まれるだけ集まって確認しないと自分たちの位置がよく分からない。

おそらくトヨタやホンダはいくらデカくなってもこの手のイベントはやらないか、やっても日本国内で、ということになるのだろう。そもそも、どちらも基本日本国籍だから独特の“あうんの呼吸”があって、おそらくルノー日産グループのような「確認」を必要としない。でもルノー日産は、そうはいかないわけよ。

「インフィニティQ70(日本名:日産フーガ」を前に。このほかにも、会場には日本ではお目にかかれない海外向けの日産車が大集合していた。
「インフィニティQ70(日本名:日産フーガ」を前に。このほかにも、会場には日本ではお目にかかれない海外向けの日産車が大集合していた。
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こちらは2013年10月からニューヨークで本格的に走りだす「NV200ニューヨークタクシー」。イエローキャブが日産車になるということで、発表時には日本でも話題になった記憶が。
こちらは2013年10月からニューヨークで本格的に走りだす「NV200ニューヨークタクシー」。イエローキャブが日産車になるということで、発表時には日本でも話題になった記憶が。
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イベントに参加した世界各国のメディアや日産関係者(の一部)。参加者は5日間合計で1500人にものぼるとか。
イベントに参加した世界各国のメディアや日産関係者(の一部)。参加者は5日間合計で1500人にものぼるとか。
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夕食会の会場には、日産の歴史を語る上で欠かせない名車を展示。こちらは1958年のオーストラリア一周ラリー「モービルガス・トライアル」でクラス優勝を遂げた、「ダットサン210“富士号”」。
夕食会の会場には、日産の歴史を語る上で欠かせない名車を展示。こちらは1958年のオーストラリア一周ラリー「モービルガス・トライアル」でクラス優勝を遂げた、「ダットサン210“富士号”」。 拡大

世界中で活躍する日産車をイッキ乗り

さて、オザワ的に乗れて感動したのは、まず2011年に中国で本格始動した初自主ブランドの「ヴェヌーシア」。中国じゃ国際免許が使えないから外国人が乗れるのはここぐらいしかない。乗ったのはセダンの「D50」とハッチバックの「R50」。基本は「日産ティーダ」や中国版「サニー」とプラットフォームを共用するFF車で、実は月1万台は売れているヒット作なのだ。で、乗ってビックリしたのは運転が楽しい! ってこと。遮音や質感は価格に合わせてそれなりに落としてあるんだけど、動力性能、特にアクセルを踏んだ時のスロットルレスポンスやステアリングレスポンスはほかより上。でも、きっと中国人って今も全購入者の5割以上が「初めてクルマを買う人」だから、そっちのテイストが優先なのよ。いかに「このクルマ速い!」「このクルマ楽しい!」って思わせるかが重要であって、プライオリティーが違う。

プライオリティーが違うっていったら、いち早くコース内で乗れた「インフィニティQ50」もよかった。来年おそらく日本でも「スカイライン」の名前で販売されるFRスポーツセダンで、最大のポイントは世界初の電動フライバイワイヤ式ステアリングを導入すること。つまり、ステアリングホイールとタイヤの間にメカ的つながりがなく、遠隔操作で動かしているのだ。漠然と「ステアリングフィール甘いのかな?」と思っていたら逆も真逆でメチャクチャ濃い!! FR車はただでさえステアリングフィールが出やすいレイアウトであるとはいえ、ほかのFRと比べてもずっしりしていて、「切れ」もある。
だからすごく象徴的なんだよね。ダメと言われそうなテイストが逆に豊かになっていて、恐らくだからこそフライバイワイヤにしたわけで、詳しくは今後日本で乗れた時にまたお伝えしたいけど、とにかくビックリよ。

あとは「日産ジュークR」。ほかの方もさんざん書いていると思うけど、面白デザインのコンパクトSUV「ジューク」に「R35GT-R」の心臓と4WDシステムを無理やりぶっ込んだもので、問答無用に楽しい!
GT-Rって、ボディーだけでなく、パワーであり、エンジンフィールであり、音であり、振動が楽しいんだなってことが、そのエンジンを別のボディーで味わえたことであらためて実感できたけど、なによりうれしかったのは、今の日産にこういう「アホなクルマを企画する人がいる」ってこと。なにかとエンジンを共用したり、ボディーを共用したり、コスト優先でクルマの味や個性を薄くする方向に向かっているような日産だけど、そうじゃない人もいるってこと。知られざるクルマ好きは眠っているのだ。

「ヴェヌーシア」は日産の現地合弁会社である東風日産の自主ブランド。「D50」はそんなヴェヌーシア初の量産モデルで、2011年11月の広州モーターショーで発表された。
「ヴェヌーシア」は日産の現地合弁会社である東風日産の自主ブランド。「D50」はそんなヴェヌーシア初の量産モデルで、2011年11月の広州モーターショーで発表された。
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日本でも間もなく新型「日産スカイライン」として発売される予定の「インフィニティQ50」。
日本でも間もなく新型「日産スカイライン」として発売される予定の「インフィニティQ50」。
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第10回:柔軟? それとも棄国!?NISSAN 360で分かったインフィニティ香港ブランド化の衝撃!の画像 拡大
コンパクトSUVの「日産ジューク」に、「日産GT-R」の3.8リッターV6ツインターボエンジンを搭載した「日産ジュークR」。
コンパクトSUVの「日産ジューク」に、「日産GT-R」の3.8リッターV6ツインターボエンジンを搭載した「日産ジュークR」。
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インフィニティが香港のブランドに!?

ただ、個々のクルマ以上にビックリし、考えさせられたのは、今後の日産全体のブランド戦略だ。筆頭は日産が誇るプレミアムブランド、インフィニティに関して。不肖オザワ、情けないことに注目してなかったが、2012年春にインフィニティの本社が横浜から香港に移転! そんなニュースあったっけ……って感じだが担当の石川さんいわく、「今インフィニティブランド全体を立て直している」最中で、アウディ出身の常務執行役員、ヨハン・ダ・ネイシン氏の英断でそうなったらしい。

もちろん開発部隊やデザイナーの大部分は相変わらず神奈川県厚木市にあるテクニカルセンターにいるが、いわゆる経営陣や開発トップが在籍するヘッドクオーターは香港に移転。表向きの理由は「日本のインフィニティというより、アジア発のインフィニティにする」ことで、もっとぶっちゃけた話、一番の理由は今世界で最も高級車が売れる国=中国をターゲットとするため。
なにしろ去年1年間でアウディが42万台、BMWが33万台、メルセデス・ベンツが20万台も売れた国で、一番伸びているBMWは日本の約6倍! そりゃ無視できないわけよ。プレミアムブランドとしては。
しかも現実にインフィニティが取れているシェアはわずか約1%で、そりゃ欧米を攻めるより、これからの中国に注力したくもなるわな。

実際、去年9月の尖閣問題で移転効果を早速実感。
「意図はしていませんでしたが、まったく影響なくて、これ(地の利)を使わない手はないなと」と正直な石川さん。
そもそも中国人でインフィニティが日本ブランドだと思っている人は少なく、香港イメージはどう考えてもポジティブに働く。その上、香港は中国であって中国でないイメージもあり、ある種“無国籍なアジアのメガシティー”。妖艶(ようえん)なイメージのインフィニティにふさわしいといえばふさわしい。

インフィニティ中国のゼネラルマネージャーを務める石川義人さん(写真右)。
インフィニティ中国のゼネラルマネージャーを務める石川義人さん(写真右)。
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日本未導入のブランドとあって、インフィニティのラインナップの多くは日本ではみかけないクルマだ。こちらは大型クロスオーバーSUVの「QX60」。
日本未導入のブランドとあって、インフィニティのラインナップの多くは日本ではみかけないクルマだ。こちらは大型クロスオーバーSUVの「QX60」。
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ルノー日産のみが持ちうるブランド的柔軟性

加えてユニークなのは、今回初のショーカー「GO」を持ってきていた新生ダットサン。ほぼ創業当時からある日産の別ブランドであり、「そんな由緒ある名前を新興国向けに」という声もなくはないが、担当者の岡本幸一朗さんいわく「そういう考えではなく、単純に新しいモノ、チャレンジングなモノを作ろうって考えた時に『もともとうちってそういうクルマ作ってましたよね』という話になった」のだとか。

もちろんうがって考えると、香港インフィニティにしろ、新興国向けダットサンにしろ、この時代、棄国とか歴史の冒瀆(ぼうとく)とやゆされるリスクもある。ただし、全く逆の、ある種の柔軟性とも解釈できる。
確かにトヨタがやっているような、“国内生産3割死守”や“国内モノづくり回帰”や“東北工場新設”は美談だし、素晴らしい。だが、それはそれで感情に走っているようでもあり、本当に現実を見据えた前向きな戦略なのか? ある種の共倒れ思考じゃないのか? と思える部分もなくはない。

なにより日産はある意味日本とフランスの二重国籍であって、それこそがアイデンティー。今、世界ベスト10に入る自動車ブランドで、この種の“柔軟性”を持つメーカーは他にないのだ。アジアと欧米にまたがるという意味では。
間違ってもメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンがドイツ以外に本社を置くことはなく、プジョーやフィアットもそうで、おそらくいくら国際的だからといってGMやフォードも北米からは出ない。だが、ルノー日産はそこにある種のメンタル的しばりがない。まさにハーフの子が成人する時に、父か母かどちらかの国籍を自由に選べるようなモノで、それこそが根源的メリットになりうるのだ。特のこの国際感情が複雑化しつつある時代にこそ。

去年、中国日産の中村公泰総裁がおっしゃっていたが「今の日産を象徴する言葉はダイバーシティ(多様性)」とか。期せずして今回のイベントでは、見事それが体現されていたのであーる。

(文と写真=小沢コージ) 

 

 

お話をうかがったダットサン事業本部の岡本幸一朗さん(写真中央)。
お話をうかがったダットサン事業本部の岡本幸一朗さん(写真中央)。
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かつての「ダットサン(DATSUN)」の「DAT」は、メーカーを支えてくれた出資者の名前の頭文字をとったものだったが、新生ダットサンでは「DREAM」「ACCESS」「TRUST」の頭文字と紹介されている。
かつての「ダットサン(DATSUN)」の「DAT」は、メーカーを支えてくれた出資者の名前の頭文字をとったものだったが、新生ダットサンでは「DREAM」「ACCESS」「TRUST」の頭文字と紹介されている。
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2013年7月にインドで発表拡大された新生ダットサンの第1号車「GO」。同年9月には、インドネシアで小型ミニバン仕様の「GO+」も発表された。
2013年7月にインドで発表された新生ダットサンの第1号車「GO」。同年9月には、インドネシアで小型ミニバン仕様の「GO+」も発表された。

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』

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