第54回:18年目の大改良! 奇跡の不老不死ミニバン「デリカD:5」のナゾ
2026.01.11 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズなにごとも聞いてみなけりゃ分からないことってあるもので、それはモデルライフが10年をとっくに過ぎた2024年に国内過去最高の2万2000台も販売した伝説のクロカンミニバン「三菱デリカD:5」のナゾ!
ロシアのUAZを除き、世界唯一かもしれない本格4WDシステムを持つ3列シート(?)ミニバンってだけでも貴重なのに、さかのぼると骨格的にはデビュー18年目を迎える超カルトカー。
その不老不死カーが2025年末にまたまたビッグマイチェンし、顔を変えただけでなく、ついにD:5初の「S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)」を搭載。先進安全装備まで一新し、ついでにマツダがやめにかかってる直4ディーゼルもやめないとか。
イマドキ新車効果が半年続けばいいクルマ飽食時代にこの奇跡のロングセラーっぷりと改良のキモはなんなのか? 不躾(ぶしつけ)オザワが開発者の柴田直之さんにガシガシ疑問をぶつけてきましたっ!
手が入れられるところはほとんど改良
小沢:調べてびっくりしましたが、そもそもこのデリカD:5、奇跡のロングセラーで前回のビッグマイナーチェンジから7年目なんですってね。
柴田:はい、この顔になってからですね。
小沢:それどころか骨格的にはD:5は2007年デビューだからなんと18年目なのに2024年に過去最多の2万2000台も国内で売れたと。そのうえ今回また力の入ったマイチェンが施されて内外装から走りまで変わって、しかも三菱自慢のS-AWCをデリカ初搭載! ついでに先進安全も大幅進化してるってことなんですが。
柴田:そうなんです(笑)。
小沢:まず外観から言っちゃうと2023年に出た「シャモニー」が売れて、賛否両論だったシェーバー顔(電気カミソリ似なので)からシャモニー顔にした。より分かりやすいソリッドなSUVマスクにしたのがフロントのキモですね。
柴田:スリットがなくなり、テカテカしないというかソリッド系の抑えた色にしてギラギラ感を抑えた。前回はちょっと高級路線を狙ってたので、今回はもう少しワイルドな形にして、デリカらしさをより強調させました。
小沢:ついでに前後バンパーのリップの部分も今までにないブロック調。これ結構新しい!
柴田:実際に車高が上がってるわけじゃありませんが、リフトアップ感と同時に力強さも増して、シンプルで凝りすぎていないボクシーさを強調したみたいなところで。
小沢:リアデザインとロゴの部分も変わってて。今までは普通にガーニッシュがあって「DELICA」の文字とは別だったのがガーニッシュ内に入って、バックランプもリアコンビにあったのがブロックの上あたりに収まった。どういう効果を狙ったんですか?
柴田:「DELICA」の文字をしっかり見せたいっていうのと、ランプがより地面に近くなって、より下側が明るく見やすくなるかなと。
小沢:確か「デリカミニ」もこんな感じで、しかもメッキにサテンシルバーを使ってて、他の三菱車はみんなメタリックなロゴという。ちょっとシブさも出してるという。
柴田:それからリアパネル全体も少しラウンド感を与えて立体感を持たせるようにしています。テールレンズも外側を少し黒めにして色を合わせています。
小沢:かたや内装ですがキモはデジタル化でメーターが今までアナログ2連に4インチぐらいの小さな液晶だったのが初めて8インチのフルデジタルに。ちなみにセンターディスプレイはディーラーオプション?
柴田:はい、11インチのディーラーナビで結構大きいです。
小沢:あとは全体の質感アップで、今まで木目調だったパネルがシルバーの金属調フィニッシュになったと。
柴田:手が入れられるところはほとんど手を入れています。
4輪トルク制御システムを搭載
小沢:あとはなんといっても走りで、新たに「アウトランダーPHEV」風のドライブモードが付いたのとデリカ初のS-AWCの搭載。実は僕、今の電動4WDではアウトランダーが一番よくできていると思っていて、前後ツインモーターのトルク制御がマジですごい。
ハンドリングがスポーツカー並みに軽快でデカいSUVサイズを全く感じさせない。とはいえデリカの場合は同じS-AWCといっても、前後モーターのアウトランダーとは違ってディーゼルターボよるエンジン4駆じゃないですか。それでそんなに細かい前後トルク制御ができるのかなって?
柴田:今回は新しく「AYC(アクティブヨーコントロール)」と呼ぶ、車両安定性を高めるためのブレーキ制御を追加しています。それにエンジンの前後トルク配分、安定性を出す「ASC(アクティブスタビリティーコントロール)」を加えて統合制御としてS-AWCを実現しています。
小沢:要するに電動ツインモーターじゃなく、ブレーキつまみ式のブレーキAYCによるS-AWCってことですね。今までの横滑り防止の制御じゃなくて、より気持ちよく曲がれるための統合的な4駆制御に。
柴田:そうです。
小沢:制御的にはどう違うんですか?
柴田:今までは「2WD」「4WD」「4WDロック」の典型的パートタイム4駆だったのが、常にフルタイム4駆だけど「エコ」「ノーマル」「グラベル」「スノー」の4モードが選べるようになっています。エコは今までの2WDと同じように燃費重視のほぼFFのモードで、ノーマルは従来の4WDモードとほぼ同じ。そこに今回新たにグラベルとスノーを追加したような感じです。
小沢:じゃ今回はグラベルがイチバン面白そうですね。イチバン積極的に姿勢制御をする。で、もう一つ言っちゃうとヒルディセントコントロールもデリカで初めて付いた。
柴田:はい、初めて付きました。
小沢:ついにデリカもアウトランダーほどじゃないんだろうけど4輪トルク制御で気持ちよく曲がれるようになったと。それからもう一つ、今までも衝突被害軽減ブレーキは付いてたと思うんですけど、今回クルマだけじゃなく、人と自転車も見えるようになった。具体的にハードはどう変わったんですか?
柴田:具体的にはシングルカメラの中身が変わって、フロントバンパーのミリ波センサーも変わっています。それぞれ性能が上がって、歩行者と自転車が見られるようになった。もう一つはパーキングセンサーで、従来はリアだけだったのが今回フロントに4カ所追加しています。
小沢:いわゆる超音波センサーが前後に備わったことによって、壁への接近とか、誤発進抑制にも効いてる感じですかね。
柴田:さらに言うと今回カメラがアナログからデジタルに変わっていますので、モニターの映像がきれいになっています。
小沢:確かに! アラウンドビューのモニター画像がキレイになってる。
柴田:モニターのサイズアップだけじゃなくて、映像自体が鮮明になっているんです。
デリカミニが引っ張ってくれた
小沢:それからエンジンですけど、これ2.3リッターのディーゼルターボですよね。ディーゼルターボ、いつまで使えるんですか? マツダは新型「CX-5」でディーゼルやめちゃうみたいなんですが。
柴田:排ガス規制が2035年ぐらいにさらに厳しくなるようで、それまではいけるんじゃないかと。技術的にはいけると思っています。
小沢:うーん、マツダさんにもその言葉を伝えたいくらいです。で、最後ですが、とはいえこの時代、マイチェンから7年目、骨格的には18年以上変わってないクルマが、時代を経てさらに売れるってちょっと考えられないんですけど。いったいどういうことなんでしょうか? アンティーク家具じゃあるまいし……。
柴田:やはりデリカミニの存在は大きいです。あのクルマにより「デリカブランド」そのものが広く理解されるようになってデリカD:5も伸びた。ミニの追い風で、デリカという存在がよりポピュラーなかたちに上がってきたんじゃないかなと。
小沢:そんなことあるんですか? 軽スーパーハイトが売れ、おかげでその兄貴分まで伸びるなんて。逆ならあり得ると思うんですけど。
柴田:ありがたいことにそれがあるようで。
小沢:それってつまり、そもそもデリカの存在に気づいていなかった、みんな忘れてたってことですかね?
柴田:そうかも……しれません(笑)。
ヒットは小説より奇なり。まさに奇跡のヒット作デリカミニ&D:5。三菱の開発者は当分、デリ丸。クンに頭が上がらないかもね(笑)。
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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