第17戦アブダビGP「別格の速さで7連勝」【F1 2013 続報】
2013.11.05 自動車ニュース ![]() |
【F1 2013 続報】第17戦アブダビGP「別格の速さで7連勝」
2013年11月3日、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1世界選手権第17戦アブダビGP。予選でチームメイトのマーク・ウェバーにポールポジションを奪われたものの、レースではあっという間にトップに立ち、別格の速さで駆け抜けていったセバスチャン・ベッテル。同じレッドブルのマシンを駆りながら、2位に終わったウェバーに30秒もの大差をつけて7連勝を飾った。
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■2位を争う各陣営の“悩み”
1週間前の前戦インドGPでセバスチャン・ベッテルとレッドブルがともに4連覇を決めたことで、残る3戦の興味は、6連勝中のベッテルの連勝がどこまで伸びるか、そしてチャンピオンに次ぐのが誰でどこのチームかに移った。
なかでもランキング2位争いは、まだどちらに転ぶか分からない状態。3戦=最大75点を奪い合うのは、207点で2位につけるフェルナンド・アロンソを筆頭に、183点で3位のキミ・ライコネン(アロンソの24点ビハインド)、169点で4位のルイス・ハミルトン(同38点差)、148点で5位のマーク・ウェバー(同59点差)と並ぶ。
アロンソは2005年と翌年にルノーで連覇して以来タイトルから遠ざかっているが、2010年、2012年に続く2位の座は確実にものにしたいところ。フェラーリを成功に導くためにやってきた男が4年連続で最良の成果を出していないという事実を前に、スクーデリアとエースドライバーの不仲説を立てたがるのはメディアの性(さが)のようなもので、実際、夏には会長ルカ・ディ・モンテゼーモロがアロンソの発言に憤慨しているというニュースも流れた。さらに2007年王者キミ・ライコネンの来季加入も決まっており、アロンソは自らの優位性を示すためにもライコネンに負けるわけにはいかないのだ。
一方のライコネンだが、今季でお別れとなるロータスとの信頼関係が揺らいでいる。9月のフェラーリ移籍決定後、ロータスから“グロジャンびいき”の空気を感じるようになったが、インドGPレース中、チームはライコネンに対し、ロメ・グロジャンを先に行かせろという辛辣(しんらつ)な言葉を無線で浴びせ、ライコネンの怒りを買った。
続くアブダビGP、ライコネンは予定より遅く現地入りし、木曜日のメディア活動はキャンセルされ、チームとの関係性がいよいよ悪化しているとの臆測が流れた。その後遅刻したライコネンは、チームへの不満、特に金銭問題について口を開き、アブダビの欠場も考えたがロータス上層部との話し合いで出場を決めたこと、続くアメリカ、ブラジルGPに出ない可能性もあることを語った。幸いアブダビで持たれた話し合いで両者基本合意に至り、欠場は回避されたようだが、イギリスはエンストンに本拠を置くロータス(元ルノー)は、上位チームながら財政は芳しくないといわれ、サラリーの未払い問題は今回が初めてではない。ライコネンとは訴訟等などなく終わりそうだが、来季のドライバーにも影響が及びかねない状況であることは間違いないだろう。
ロータス以外でも、ハミルトンが所属するメルセデスは代表のロス・ブラウンが今季限りでチームを去るかもしれないといわれている。コンストラクターズランキング2位争奪戦も接戦で、メルセデス(313点)、フェラーリ(309点)、ロータス(285点)がしのぎを削っているが、各陣営それぞれが固有の悩みを抱えているようである。
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■ウェバー、今季2回目のポールポジション、ライコネン予選失格
金・土の計3回のフリー走行のうち2回で1-2だったレッドブル。いずれもベッテルがトップで、やはりヤス・マリーナでもチャンピオンの速さが群を抜いていたが、予選では僚友が最速タイムをたたき出した。
Q1で11位、Q2で4位と目立たなかったベッテルが、トップ10グリッドを決めるQ3に入ると最初のアタックで1分40秒091を記録、後続に0.328秒差をつけて堂々の1位に。だが2回目のフライングラップでウェバーがただひとり1分39秒台に突入すると、ベッテルは自らのミスでそれを上回ることができなかった。ウェバーは日本GPに次ぐ今季2回目、通算13回目のポールポジションを獲得し、母国のチャンピオン、サー・ジャック・ブラバムのポール記録に並んだ。
ベッテルは2位に甘んじ、ニコ・ロズベルグ3位、ハミルトン4位とメルセデス勢がセカンドローを占めた。ライコネンは5位、シーズン後半に健闘が光るザウバーのニコ・ヒュルケンベルグを間に挟み、ロータスのもう一人グロジャンは7位だった。フェラーリのトップはフェリッペ・マッサで8位、エースのアロンソは2012年6月のヨーロッパGP以来となるQ2敗退で11位に沈んだ。
マクラーレン唯一のQ3進出を果たしたセルジオ・ペレスが9位、そしてトロロッソのダニエル・リチャルドが10位だった。
セッション終了後、渦中の人ライコネンに予選失格が言い渡された。FIA(国際自動車連盟)の車検でフロントフロア部分が規定の5mmより“たわむ”ことが発覚。ロータスは、縁石でフロアが痛んだことによると説明したが、スチュワードはこれを認めなかった。ライコネンは最後尾から55周のレースに臨まなければならなくなり、また6番手タイムのヒュルケンベルグ以下は1つグリッド順位が繰り上がった。
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■ベッテル、ハイペースで逃げる
夕暮れ時にスタートするトワイライト・レース、今年で5回目のアブダビGPは、フロントローの2台、ウェバーとベッテルが出だしからもたついたが、順位を落としたのはポールシッターのウェバーの方。ベッテルは首位でターン1に飛び込み、2位ロズベルグ、3位ウェバー、4位グロジャン、5位ハミルトンの順でオープニングラップを終えた。
また一番後ろからスタートしたライコネンは、早々に前車にヒットしフロントサスペンションを壊してリタイア。ゴールを待たずにサーキットを後にした。
レースはチャンピオンのお家芸、先行逃げ切りパターンで進んだ。ベッテルはオープニングラップで1.9秒のギャップを築いたかと思うとハイペースで飛ばし、上位各車が最初のタイヤ交換を済ませソフトからミディアムに履き替えた22周目、1位ベッテルの27.2秒後方に2位に上がったウェバーという大量リードができあがっていた。まさに別格の速さである。
そしてあたりがすっかり暗闇に包まれたレース半ばの32周目、ベッテルのアドバンテージは30秒を超え、2位ウェバーと3位ロズベルグの間には3.6秒、その4.6秒後に4位グロジャンとフロントランナーは膠着(こうちゃく)状態に。結局このポジションのままチェッカードフラッグが振られ、ベッテルは同じマシンを駆るウェバーに大差をつけ、同郷ミハエル・シューマッハーのシーズン最多連勝「7」に肩を並べた。
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■アロンソ、猛チャージで5位入賞
トップ4には動きがみられなかったが、5位争いは白熱。なかでも終盤猛チャージをかけてきたアロンソの走りは冷めかけたレースへの興味を呼び覚ますに値した。
レース中盤、5位マッサとの差をジリジリと詰めてきたアロンソは、39周目にマッサが2度目のタイヤ交換に入るとその座を譲り受けた。自身は17周目に履き替えたミディアムタイヤで走行を続けており、ひょっとするとこのまま1ストップで走り切れるか、と思われたが、12周を残してピットへ飛び込みソフトで追い上げることを選んだ。
コースに復帰する際、ジャン=エリック・ベルニュのトロロッソが進路をふさいだことでアロンソはコース外に出てこれを避けた。このアクションについて、スチュワードはレース後の審議対象としたが、結局アロンソの非は認められなかった。
7位アロンソの前には、精彩欠くハミルトンと、1ストッパーのポール・ディ・レスタ。アロンソは3秒前にいたハミルトンを残り6周で抜き、さらに翌周にはディ・レスタをオーバーテイク。ファイナルラップにはレースのファステストラップを記録し5位10点を獲得した。
これによりアロンソはポイントを217点とし、今回不運にも無得点に終わったライコネンとの差は24点から34点に拡大。優位なポジションで残る2戦を戦えることになった。一方のコンストラクターズランキング2位争いではフェラーリは分が悪くなり、2位メルセデスに11点の先行を許す結果となった。
2013年シーズンは、次のアメリカ大陸2連戦でいよいよフィナーレを迎える。次戦は11月17日に行われるアメリカGP。今年で2回目の開催となるテキサスはオースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズがその舞台だ。
(文=bg)
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