第13戦イタリアGP「ハミルトンに一日の長あり」【F1 2014 続報】
2014.09.08 自動車ニュース ![]() |
【F1 2014 続報】第13戦イタリアGP「ハミルトンに一日の長あり」
2014年9月7日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第13戦イタリアGP。前戦ベルギーGPで起きたニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンの同士打ちの余波は一応の収束を見せており、メルセデスの優位性は超高速コースでも変わらなかった。
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■メルセデス接触騒動のその後
前戦ベルギーGPの2周目に起きた、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトン、2人のメルセデス・ドライバーによる接触事故。先頭を走っていたハミルトンはパンクに見舞われ結局リタイア、ロズベルグはウイングを壊したものの2位でフィニッシュし、タイトルを争う2人のポイント差は、ロズベルグが29点リードと大きく開いた。
レース直後、ロズベルグがわざとぶつけたことを認めた、とハミルトンが口を開けば、ロズベルグはレースにつきもののアクシデントだったと主張。一方で十分可能だった1-2フィニッシュをふいにしたチーム首脳は、同士打ちがもたらした影響の重大さを隠さなかった。
各人が落ち着くのを待って8月29日に開かれた緊急ミーティングで、メルセデスは一応の“収束宣言”を出した。ロズベルグは自らの判断ミスを謝罪、「コース上での接触はあってはならない」という最大のプライオリティーを2人が守ることを条件に、チームはこれまで通りロズベルグとハミルトンを自由に戦わせることを確認した。
しかしメルセデスにとっては、いつまた再燃するか分からない火種を抱えながらチャンピオンを目指さなければならないことに変わりはない。
イタリアGPに入ると、ハミルトンは、自らの非を認めたロズベルグにFIA(国際自動車連盟)から何のおとがめもないのはどうなのかと苦言を呈し、他のドライバーからも、ロズベルグを擁護する意見と罰するべきとする意見の両方が聞かれた。
1980年代後半にマクラーレンのアイルトン・セナとアラン・プロストが、2007年にはハミルトンとフェルナンド・アロンソが、また最近ではレッドブルのセバスチャン・ベッテルとマーク・ウェバーがそれぞれ陥った微妙な(時として険悪な)関係 ── マシンは同じ、あとは自らのポテンシャルを武器に勝負に挑まなければならないという、チームメイト同士の逃げ場のない厳しい競争がそこにある。
隣り合うライバルが互いに感情を交錯させること自体が問題なのではない。勝った側も負けた方も、いい戦いだったといえるコース上での攻防こそ、スポーツとしての、ファンが一番望んでいるカタチである。どちらか一方にナンバー1ステータスを与えるチームオーダー発令が避けられたことはGP全体にとっても朗報だったが、少なくとも、ベルギーでの一件はその類いではなかったということもはっきりした。
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■ハミルトン、5月以来のポールポジション
ヨーロッパ・ラウンド最後の舞台は、おなじみ超高速コースのモンツァ。パワフルなメルセデス・ユニットに大きなアドバンテージがあると見られ、実際、予選では上位6台がこの強心臓の持ち主だった。
ポールポジションを獲得したのはハミルトン。現役ドライバーの中でも抜群の速さを誇る2008年チャンピオンだが、予選P1には久しく縁がなく、今季5度目のポールは5月の第5戦スペインGP以来となった。
2番手はロズベルグで、案の定メルセデスが1列目を占拠。4戦連続ポールを奪っていたポイントリーダーだったが、予選前の3回目のフリー走行ではトラブルでほとんど走れずじまいで、Q3では最終的にハミルトンに0.274秒離された。
2列目はウィリアムズの2台が並び、バルテリ・ボッタス3位、フェリッペ・マッサ4位。ケビン・マグヌッセンが5位にジャンプアップ、ジェンソン・バトンは6位とマクラーレン勢がその背後につけた。
地元イタリアで期待がかかるも、フェラーリにはやはり一発の速さがなく、フェルナンド・アロンソ7位。ベルギーで4位に入り復活の兆しを見せたキミ・ライコネンはQ2で敗退し12番手タイム、他車のペナルティーで11番グリッドとなった。
非力なルノー・パワーのレッドブルは、セバスチャン・ベッテル8位、2連勝中のダニエル・リカルドは9位。フォースインディアのセルジオ・ペレスが10番手に収まり、各人が翌日のレースに臨むこととなった。
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■ロズベルグ、痛恨のミスで宿敵に勝利を譲る
秋晴れの決勝日。スタートでポールシッターのハミルトンにシステムの不具合が発生、ロズベルグがトップに立った。2位にマグヌッセンがジャンプアップ、3位マッサ、ハミルトンは4位に落ち、3番グリッドのボッタスに至っては一気にポイント圏外の11位まで順位を落としてしまった。
マグヌッセンとマッサがポジションを争う一方で、1位ロズベルグは快調に飛ばし、53周レースの5周目までに3秒のリードタイムを築いた。出だしでつまずいたハミルトンはマッサと同じタイミングでマグヌッセンを抜き、10周目にはマッサをもかわして2位へ。約3秒前方の宿敵ロズベルグを追った。
ロズベルグのリードタイムを、一周につきおよそ0.2秒ずつ削り出すハミルトン。しかしロズベルグも応戦し、ハミルトンにDRSを使わせない1秒強のギャップを維持し続けた。25周目にロズベルグ、翌周ハミルトンがこの日唯一のピットストップを済ませると、ポジションはそのまま、2秒弱を開けてメルセデス2台による“第2ラウンド”が始まった。
しかし29周目、あっけなくトップが変わってしまう。ジリジリと差を詰められていた1位ロズベルグが、ターン1でこの日2度目のコースオフを喫し、その間隙を突いてハミルトンが首位を奪還したのだった。
ハミルトンのリードは35周で4秒まで拡大。タイヤを温存し、レース終盤に仕掛けたかった2位ロズベルグだったが差は縮まらない。
結局、予選同様にイタリアではハミルトンに一日の長があった。7月の第9戦イギリスGP以来となる今季6回目の勝利で、1勝=25点以上開いていたロズベルグとの差は7点縮まり、22点のギャップとなった。
ロズベルグはレースを終え、「ルイスが背後で追い上げてきたのでペースを上げなければいけなかったが、結果的にミスしてしまった」とコメント。まだ十分なリードを堅持しているからか、あるいはベルギーでの一件から落ち着きを取り戻している風をよそおっているのか、素直に負けを認めていた。
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■マッサ、今季初表彰台
今季7度目のメルセデス1-2フィニッシュの後ろでは、モンツァならではのスリップストリームを使った高速戦が繰り広げられていた。
なかでも最悪のスタートを切ったボッタスは、6周でポイント圏の10位に入ると、21周目までに4位まで挽回。タイヤ交換後もマグヌッセンと丁々発止と渡り合いながら37周に5位、40周目にはベッテルを抜き再び4位まで上がり、結局そのままチェッカードフラッグを受けた。
ボッタスの前方には、2台のメルセデスから遠く離れて3位を走るチームメイトのマッサ。フェラーリからウィリアムズに移籍してきたベテランは、今季既に4回もポディウムにのぼっているボッタスの陰にすっかり隠れてしまっていたが、この日はトラブルもミスもなく走り切り、移籍後初、2013年5月のスペインGP以来となる表彰台を勝ち取った。
ウィリアムズが3-4位で27点を加算した一方で、地元フェラーリはライコネンの9位2得点どまり。開幕から連続入賞をキープしてきたアロンソは、メカニカルトラブルで今季初リタイアを喫してしまった。これによりコンストラクターズランキングでウィリアムズが3位に躍進、フェラーリは4位に後退した。
非力なルノー・ユニットで劣勢否めなかったレッドブル勢は、ベッテルがレース序盤の19周でタイヤを交換する賭けに出た。逆にリカルドは第1スティントを長く走り、後半の巻き返しに期待をかけた。結果は、よりフレッシュなタイヤを履くリカルドが残り5周でベッテルを抜き5位の座をものにした。
メルセデスの優位性は揺るがず、ロズベルグ対ハミルトンの戦いはコースの内外で一進一退を続けている。リカルドの活躍もあってレッドブルは善戦、ウィリアムズは躍進目覚ましく、フェラーリはいまだ暗中模索の状態 ── そんなF1は、いよいよヨーロッパを離れ、残り6戦のフライアウェイに旅立つ。次戦シンガポールGP決勝は9月21日に行われる。
(文=bg)
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