第9戦イギリスGP「伏兵も雨も何のその」【F1 2015 続報】
2015.07.06 自動車ニュース ![]() |
【F1 2015 続報】第9戦イギリスGP「伏兵も雨も何のその」
2015年7月5日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第9戦イギリスGP。スタートで伏兵に抜かれても、突然雨が降ってきても、チャンピオンにはどこ吹く風。母国の大観衆が見守る中、ルイス・ハミルトンが今季5勝目をマークし、宿敵ニコ・ロズベルグとのポイント差を再び広げた。
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■10点差でタイトルを争う2人の戦い
今季これまでの8戦を振り返ると、最初の4戦とその後の4戦で流れが変わっていることに気がつく。
開幕戦オーストラリアGPからの4戦では、第2戦マレーシアGPでフェラーリ&セバスチャン・ベッテルの奇襲に遭ったものの、ルイス・ハミルトンが快進撃を続け3勝を記録。2年連続3度目のタイトルに向けてハミルトンが盤石のシーズンスタートを切ったかに見えた。
それが第5戦スペインGPでニコ・ロズベルグが今季初優勝、続くモナコGPではハミルトンの不運にも助けられロズベルグ2連勝、そして前戦オーストリアGP、ロズベルグはハミルトンをレースで初めて負かし優勝を飾ると、チームメイト同士の対戦成績は、ハミルトン4勝対ロズベルグ3勝となった。
開幕からポイントリーダーの座を守り続けるハミルトンだったが、前半の4戦で稼いだロズベルグに対する27点もの貯金は、続く4戦で10点にまで減ってしまった。2年連続でタイトルを争う2人の戦いは、夏に向けていよいよ熱を帯びてきている。
ここでロズベルグがしなければならないことは、オーストリアのように勝負どころで最大のライバルであるハミルトンを打ち破ること、さらに、それを続けて「勝ちぐせ」をつけること。そのためには、まず7対1でチームメイトに負け越している予選での順位を向上させることだろう。昨年誰よりも多い11回ものポールポジションを獲得したのは、ほかでもないロズベルグなのだ。
イギリスGPの初日から、ロズベルグは好調なスタートを切った。しかし予選が始まると……。
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■ハミルトン、母国でポールポジション
レースウイークの入り方は、ギアボックストラブルに足を引っ張られはしたものの、明らかにロズベルグの方がよかった。金曜日の2回のフリー走行では、ロズベルグがトップタイムをマークする一方、ハミルトンはセッティングに苦しみ、チームメイトの陰に隠れがちだった。それが土曜日の、予選の、トップ10グリッドを決めるQ3になると一気に劣勢を跳ねのけてしまうのだからチャンピオンの底力は侮れない。
予選Q1、Q2とハミルトンを凌駕(りょうが)していたロズベルグだったが、Q3になると最初のアタックでハミルトンに0.113秒差をつけられ2番手。2回目のフライングラップでは2人ともタイムアップを果たせず、結果ハミルトンが4戦連続、母国では3度目、今季9戦して8回目のポールポジションを決めた。彼にとっては、通算46回目。セバスチャン・ベッテルを抜き歴代3位の座に躍り出たことになる。
予選2位のロズベルグから0.724秒も離されつつも3番手につけたのは、ベテランのフェリッペ・マッサ。バルテリ・ボッタスも4位に入り、ウィリアムズはフェラーリを押しのけ2列目を独占した。
そのフェラーリの2台は3列目に並び、キミ・ライコネンが5位、セバスチャン・ベッテル6位。2007年チャンピオンが予選でチームメイトを上回ったのは今季2回目である。
レッドブルのダニール・クビアトが7番グリッドを獲得。その姉妹チームであるトロロッソの新人カルロス・サインツJr.が8番手、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグは9番手と続き、10番グリッドにはレッドブルのダニエル・リカルドがついた。
なおマクラーレンの2台はQ1で敗退。フェルナンド・アロンソが17位、ジェンソン・バトンは18位からスタートすることとなった。
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■スタートでウィリアムズがまさかの1-2
ここシルバーストーンではポールからの勝率がそれほど高くなく、過去5年間、ポール・トゥ・ウィンを達成したドライバーは皆無であった。それでも、2年ぶりにポールポジションからスタートするハミルトンを応援しに大勢の観客がつめかけ、母国のヒーローの勝利を期待してレースを見守った。
その期待はスタート直後に打ち砕かれた。フロントローのメルセデスの間隙(かんげき)を縫ってウィリアムズのマッサが3番グリッドからトップに、ボッタスも一瞬2番手に上がったものの、ハミルトンが抜き返し3位、そしてロズベルグは4位にまで落ちた。
52周レースの1周を終えてセーフティーカーが導入された。バトンのマクラーレン、ロメ・グロジャンのロータスなどがコースの外にはじき出されたためだった。
4周目に再スタートが切られると、首位マッサを抜かんとするハミルトンが勢い余ってタイヤスモークをあげコースからはみ出し、その隙を突いてボッタスが2位に上がった。これでウィリアムズが1-2体制を築き、3位ハミルトン、4位ロズベルグとメルセデスの牙城が崩れた。
程なくして1位マッサ、2位ボッタス、3位ハミルトン、4位ロズベルグがDRS作動圏内の1秒差を切る接戦に突入。4台が一塊で周回を重ねる中、ボッタスは度々マッサに仕掛けたが抜くまでに至らなかった。高速コースとして知られるシルバーストーンは、追い抜きが難しいサーキットでもあるのだ。
20周目、3位ハミルトンが上位陣で先陣を切ってピットに飛び込み、ミディアムからハードタイヤに交換、アンダーカットを狙いにきた。翌周マッサとロズベルグが同時にタイヤ交換を行い、2台がコースに戻るとハミルトンが前に。22周目にボッタスがピットストップを終えると、1位ハミルトン、2位マッサ、3位ボッタス、4位ロズベルグとなり、ハミルトンはこの時点で勝機を自らに手繰り寄せた。
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■雨に乗じてロズベルグが2位に
トップに立ったハミルトンが3秒、4秒と着実にリードを広げる一方、その後ろのマッサ、ボッタス、ロズベルグは引き続き1秒前後の間隔のまま。5位ライコネン、6位ベッテルのフェラーリ勢はといえばメルセデス・ユニット勢についていけず、レース折り返し時点で、5位ライコネンは4位ロズベルグに12秒もの大差をつけられていた。
34周目、サインツJr.がコース脇にストップしたことで、実車が出なくてもスピードを落とさなけれなならない「バーチャルセーフティーカー(VSC)」が出た。
各車が徐行を続ける間、サーキットにはひたひたと黒い雲が迫っていた。そしてピットから各ドライバーには、「間もなく雨が降るぞ」というメッセージが飛んだのだった。
しかし、実際に雨粒が落ちていたのはコースの一部だけ。ウエットタイヤに替えるべきかを各陣営が悩んでいる最中、ドライタイヤのまま走行を続けたロズベルグはボッタス、続いてマッサを抜き2位へとポジションアップに成功した。ロズベルグには恵みの雨、またウィリアムズにとっては非情な雨になった。
引き続きドライタイヤのままのロズベルグは、同じくドライのハミルトンより2秒速いペースで追い上げた。追われる方のハミルトンは難しいコンディションでミスをおかすことなく、的確なタイミングでインターに履き替えた。ちょうど雨脚は広範囲で強くなっていた。
ハミルトンに続き、45周目にロズベルグ、マッサ、ボッタスらが続々とピットイン。全車がインターに履き替えたときには、1位ハミルトンは2位ロズベルグに8秒以上のリードを築いており、そして3位には、これまた抜群のころ合いでインターを選んだベッテルが上がっていた。
結局、ハミルトンが10秒ものマージンを築き完勝。2位に終わったロズベルグはダメージを最小限に抑えたというべきだろうが、ポイント差は10点から再び17点に広がった。
全19戦シーズンは折り返しを迎え、タイトル争いはハミルトンとロズベルグの間で一進一退を繰り返している。次のハンガリーGPはサマーブレーク前の最後のレース。夏休みを気分よく過ごせるのはどちらになるか? 次戦の決勝は、7月26日に行われる。
(文=bg)
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