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第19回:ラウンドアバウト――環状交差点の“今”を見に行く(その2)
ラウンドアバウトと認知症の父親

2015.10.15 矢貫 隆の現場が俺を呼んでいる!?

円形交差点と環状交差点

社会実験として運用されてきたラウンドアバウト(=環状交差点)が、道交法の一部改正によって“これまでとは決定的に異なる通行方法をとる交差点”として正式に位置づけられたのは2014年9月1日のことだった。

円形の交差点でありながら「円形交差点」とは言わず「環状交差点」とか「ラウンドアバウト」と呼ぶラウンドアバウト。円形交差点は全国に140カ所ほどあるのだけれど、そのうちの42カ所(2015年3月現在=警察庁資料)がラウンドアバウトに指定されている。

このややっこしい名称の違いは何?
つまり、
つまり?

いわゆる交差点(優先道路と路地が交差するような交差点のことではないという意味)では、そこが円形であろうと十字路であろうと、交差点である以上、進入するには直前で一時停止するとか、信号機によって交通整理されていたりとかするものだ。
けれど、ラウンドアバウトではそうじゃない。

ラウンドアバウトには信号機がない。一時停止によって進行が中断されることもない。交差点をぐるっと回っているのが環道で、そこを走っている車両が優先。この交差点に差しかかった車両は、環道を走っている車両の通行を邪魔しないように流入する。そこはもちろん一方通行で、時計まわり、というのがラウンドアバウトの通行方法なのである(警察庁のポスター参照)。

とにかく、交差点への進入時でも基本的には「止まらない」という、それまでとは決定的に異なる通行方法。いくつかの地域、場所で社会実験として運用されてきたわけだけれど、今後、これを本格運用していくとなると道交法を一部改正(注)しないといけないとなって、それが施行されたのが2014年の9月1日だった。

あれから1年。
改正法施行から1年がたったラウンドアバウトの現状を見てみたい、と思った。
どうせ見学するなら、信号機付き交差点だった場所をラウンドアバウトに改修した全国で最初の地点、長野県飯田市の東和町のそれがいい、と思った。

ラウンドアバウトの運用開始と、通行方法を告知したポスター。
ラウンドアバウトの運用開始と、通行方法を告知したポスター。 拡大
 
第19回:ラウンドアバウト――環状交差点の“今”を見に行く(その2)ラウンドアバウトと認知症の父親の画像 拡大

東和町と吾妻町

ロードスターをオープンで走らせるには絶好の秋晴れだった。
風越山は<花の百名山>として知られているんですよ、と、同行の編集担当者に話しながら、自分が何気なく口にしたその言葉に愕然(がくぜん)とする私なのだった。

飯田市に行くのは初めてなんです、と、ついさっき言ったばかりの私じゃないか。それなのに、なぜ俺は風越山を知っているのだ!?
だが、本当に愕然としたのはその直後である。
中央自動車道の飯田ICの料金所を通過した瞬間、風越山を背景にしたJR飯田駅前の風景が脳裏に浮かんだのだ。
それは要するに、私は、少なくとも一度は飯田市を訪れたことがあるという意味ではないのか!?
ところが、まるで覚えがない。

あやふやさに歯止めがかからない近ごろの自分の記憶。それにおびえを感じるのは、まさにこんなときである。カーナビの案内なんて見ていないのに、熟知した道を走るように飯田市の中心部にロードスターを走らせている自分に気づき、大丈夫かな、俺、亡くなった父親は軽度とはいえ認知症だったな、と、不安な気持ちに拍車がかかった。

西に中央アルプス、東に南アルプスが連なり、その真ん中を天竜川が流れる、いわゆる伊那谷のいちばん端に位置する長野県飯田市。県内に5つある10万人超の都市のうちのひとつである。
そこで運用されている2カ所のラウンドアバウト、JR飯田駅にほど近い東和町と、すぐ隣の吾妻町のそれである。

いくら考えても、いつ、何しに飯田市にきたのか思いだせないまま、白いロードスターを運転する私の前に、前方のラウンドアバウトを知らせる最初の道路標識が現れた。そこが東和町だった。

それにしても、と、思う。
そもそも、今、なぜラウンドアバウトなのだろうか、と。
国土交通省は、ラウンドアバウト検討委員会の設置理由をこう言っている。                    

「欧米の多くの国で導入され、交通事故削減のための取り組みとして、その導入が期待されているラウンドアバウトに関して、わが国での整備における技術的な課題について専門的見地から審議を行うため『ラウンドアバウト検討委員会』を設置します」

文章が正しい日本語になっていないので何を言わんとしているのか判断が難しいところだが、文脈から察するに、おそらく「交通事故を減らすためにラウンドアバウト導入が期待されている」のは「日本で」という意味なのだと思う。
だとすると、その理屈は無理やり感でいっぱいだ。
だって、深刻な交通事故が多発する交差点では、つまり、交差点の形状を変えてまで交通事故対策が必要なほど交通流が激しい交差点では、ラウンドアバウトは有効に機能しないのではないかという推測は誰にでもつくのだから。

では、なぜラウンドアバウト?

東和町と吾妻町のラウンドアバウトを眺めているうちに、その答えが見えてきた。

(文=矢貫 隆)

(注)改正された内容は、「環状交差点の定義」「環状交差点における左折等」「環状交差点における他の車両等との関係等」「環状交差点における合図」など。

JR飯田駅の前で。奥に見える赤い屋根が飯田駅で、その奥の山が風越山。
JR飯田駅の前で。奥に見える赤い屋根が飯田駅で、その奥の山が風越山。 拡大
飯田市東和町のラウンドアバウトを示す道路標識。
飯田市東和町のラウンドアバウトを示す道路標識。 拡大
矢貫 隆

矢貫 隆

1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。

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