第849回:新しい「RZ」と「ES」の新機能をいち早く 「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」に参加して
2025.10.15 エディターから一言最新の「RZ」&「ES」とご対面
2025年のレクサスは3月にステアバイワイヤを搭載した最新の「RZ」を、4月には上海で新型「ES」を世界初披露した。一方で「RC」「RC F」には“ファイナルエディション”を設定するなど、「Lexus Electrified」に向けた歩みを一歩進めた格好だ。レクサスの現在地を報告……という趣旨のメディア向け体験会があったので、その内容をリポートする。
体験会の会場には最新のRZとESがそろって登場。簡単に説明するとRZは国内発売から2年余りで駆動用バッテリーやモーターなど、電気自動車(BEV)としての心臓部を総とっかえ。一充電走行距離が大幅に拡大し、動力性能も飛躍的に向上している。ステアバイワイヤシステムに加えて、パドルを使ってマニュアルトランスミッションのようなドライブが楽しめる「インタラクティブマニュアルドライブ」も新しい。
新型ESはこれまでと同じGA-Kプラットフォームをベースとしながら、ハイブリッドモデルだけでなくBEV版も設定されたのがトピック。ボディーの全長は165mmも大きい5140mmにまで拡大し、もともと広かった室内空間がさらに広くなった。オットマンや新たなリラクゼーション機能が設定されるなど、ラグジュアリーカーとして1つ上のステージに立ったといえるだろう。2023年のジャパンモビリティショーで披露されたコンセプトカー「LF-ZC」(これも会場に展示された)に着想を得たというシャープなデザインにも注目だ。
隣にドライバーがいるような気分
この日のイベントは「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」と銘打たれており、レクサスが掲げる「TIME」という哲学、すなわち「日本のものづくりが積み上げてきた歴史や文化をリスペクトし、LEXUSらしいイノベーションによって味覚、視覚、聴覚、嗅覚、触覚といった五感でお客さまの豊かな時間までをデザインすること」(資料から引用)を追体験できるようになっていた。
会場は室内のためテストドライブはかなわないのだが、新しいRZではインタラクティブマニュアルドライブを駆使して下山テストコースの第3周回路(全長:5385m、高低差:75m、コーナー数:32)を走り込んだ様子を映像とサウンドで疑似的に体験できた。車内に乗り込んで(触感)センタースクリーンで走行時の前方映像を見ながら(視覚)、走行時のログをもとに再現したサウンド演出を楽しむ(聴覚)といった具合である。
実際に隣にドライバーがいるわけではないのだが、サウンドの高鳴りによって、ドライバーが左パドルを引いたのが手にとるように分かるのが面白い。コーナー脱出時の回転数の高まりや右パドル操作時のわずかな回転落ちも心地よい。RZのモーターはなかなか“吹け上がり”が上等だ。実際に走らせた人に聞くと、上まで引っ張りすぎるとリミッターに当たって車両が揺動したり、十分に回転が上がっていない状態でギアを上げると加速しなかったりというギミックまで仕込まれているらしい。
BEV化のネガを打ち消すための巨大化
一方のESはデザイナーが会場でスケッチを描いていかに新型をデザインしたかを再現してくれた。これまでのESとの一番の違いはBEV版もラインナップされることだ。具体的な容量は不明ながら、ホイールベース間が駆動用バッテリーで満たされるため、乗員の着座位置が高くなる。高くなるだけなら問題ないのだが(むしろ乗り込みやすくなる)、これに合わせて屋根を上げてしまうと屋根だけがポコンと飛び出した妙に愛らしいスタイリングのクルマが生まれる。実際に新型ESは先代より全高が110mmも高くなっているが、そのように感じさせないのは、先に書いたとおり全長を延ばして全体のラインを滑らかに整えているからだ。さらにルーフの終わりとトランク部分は段差をつけずに結んでいる。ボディーの厚みを感じさせないのは、ドアミラーの下からリアタイヤに向けて走る太いブラックのモールのおかげだ。
もちろん大きくなるのはいいことばかりではないし、全長5140mmとなると乗り手(所有者)を選ぶのは間違いない。でもとにかくカッコいいセダンを、というチャレンジのもとに生まれたのが新型ESである。
乗り込んでみると、この個体が白内装ということもあり、静かで落ち着いた空間が広がっている。無菌室のように背筋が伸びる感じではなく、整理整頓が行き届いたリビングルームのようである。かつてのレクサスは室内調度に切り子やらなんやらを盛れるだけ盛っていたものだが、新しいほうに居心地のよさを感じる人のほうが多いだろう。レクサスのシグネチャーマテリアルだというバンブー(竹)の柔らかな色合いも心地よい。前席も後席も広々としており、ボディーサイズ拡大の恩恵が確かに感じられる。トヨタ車なのにシート調整やオットマンの展開・格納、電動トランクリッドなどの作動スピードが速いことにも驚いた。
機能を総動員して居心地のよい室内に
バンブーは内装材として使われるだけでなく、新型ESから搭載される「Sensory Concierge(センサリーコンシェルジュ)」にも活用される。この新機能はイルミネーションや空調などの連動によってパーソナライズされた体験価値を提供するというもの。もう少し具体的に書くと、アンビエントライトやセンタースクリーンのムービー、オリジナルの音楽、フレグランス、シートのマッサージ機能などを総動員して居心地のよい室内空間にするという試みである。
バンブーはこのうちのフレグランス=香りに使われている。香りは時の流れをイメージした5種類、早朝から深夜までをイメージした「晨明(しんめい)」「恵風(けいふう)」「青陽(せいよう)」「天光(てんこう)」「半夜(はんや)」が設定されており、カートリッジ化されていて車内に3つが搭載できる。5種類すべてが日本由来の「バンブーアコード」をベースにつくられているのである。
正直、香りのことはよく分からないが、例えば晨明は「深い森の中で広がるスモーキーグリーン」とされており、そう聞いてから嗅いでみると、確かにそう感じる。「あたたかい自然の光に包まれたウッディアロマティック」も、言われてみればそういう感じがする。信じる者は救われる……のかもしれないが、どれも主張は控えめながら、妙に落ち着くいい香りだったのは間違いない。
どんな宝石箱だったのか
この体験会は五感がテーマだったことを思い出していただきたい。残る味覚は京都の二つ星レストラン「美山荘(みやまそう)」の主人、中東久人さんが担当。バンブーアコードの香りにインスパイアされたというスイーツをふるまってくれた。中東さんはその香りに京都の竹林が浮かんだとのことである。
杉板に挟んでつくったという羊羹(ようかん)には、あんずのペーストがたっぷりとかかっている。ペーストにはグリーングレープとクランベリーが混ぜてあり、黒い粒は実山椒(みざんしょう)である。口に入れてみると、甘さと酸味、そして実山椒の刺激が見事に調和しており、これを笹(ささ)のフレーバーを加えたという水で流し込むと、得も言われぬ味わいである。彦摩呂が同席していたらどんな宝石箱に例えただろうか。
このスイーツはこの日のために用意したオリジナルメニューとのことで、五感をきちんと満たせたかどうかと問われたら、ちょっと無理を感じたのも事実である。しかしながら、レクサスが自動車のコモディティー化の波には巻き込まれまいと、よそとは違う車内体験に向けて熱心に取り組んでいるのは非常に心強く思えた。次の一手が気になるレクサスは、ジャパンモビリティショー2025(会期:10月29日~11月9日)で新たなブランドのあり方を示すとのことである。
(文=藤沢 勝/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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