【F1 2016 続報】第9戦オーストリアGP「メルセデス同士の接触、再び」
2016.07.04 自動車ニュース![]() |
2016年7月3日、オーストリアのレッドブル・リンク(4.326km)で行われたF1世界選手権第9戦オーストリアGP。6番グリッドからレースをリードしていたニコ・ロズベルグと、ポールシッターのルイス・ハミルトン、2台のメルセデスのマッチレースは、両車の接触という事態を再び招いた。
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■気の早い来季の話
季節は夏に入り、来季のドライバー移籍話にも熱が入りはじめている。筆頭は「フェラーリでセバスチャン・ベッテルとパートナーを組むのは誰か」ということ。 キミ・ライコネン残留の可能性もある一方で、新たなドライバーを望む声も多い。
2007年にスクーデリアでタイトルを取ったライコネンは今年10月で37歳。ドライバーとしてのピークを過ぎたことは否めず、また時折つまらないミスをする点は玉にきずだが、フェラーリという何かと難しいチームのなかで、ベテランとして安定感をもたらしていることも事実である。
ドライバーなら誰もが夢見る赤いマシンに近いと目されていたのはダニエル・リカルド。しかしオーストリアGPの記者会見で、来季もレッドブルでタイトル獲得を目指すと本人の口から語られたことから、その可能性は消えた。フォースインディアのセルジオ・ペレスとニコ・ヒュルケンベルグ、ウィリアムズのバルテリ・ボッタス、またハースのロメ・グロジャンらの名前もうわさされるが、果たして……。
開幕以来ポイントリーダーの地位を守るニコ・ロズベルグも今季でメルセデスとの契約が切れるが、こちらは残留濃厚。チームメイトのルイス・ハミルトンとの相性はともかく、ドイツのチームでドイツ人のトップドライバーが勝っているのは双方にとって悪い状況ではないからだ。
絶不調の昨季から一転、ポイント獲得を重ねるまで復活しつつあるマクラーレンでは、2009年チャンプのジェンソン・バトンの去就に注目が集まる。36歳のバトン自身は残りたい意向のようだが、ひとまわり若いストフェル・バンドールンがリザーブドライバーからの昇格を狙っているのだ。フェルナンド・アロンソの代役で急きょ参戦した第2戦バーレーンGPでいきなり10位入賞、周囲を驚かせた若手有望株のバンドールンにチームの未来を担わせるか、もう少しベテランの力を借り続けるか。バトンにはウィリアムズが食指を動かしているといううわさもあるようだ。
シーズン折り返しを前にした、気の早い来季の話をよそに、史上最多、21戦が予定される今年のF1は、その約20%にあたる4戦をたった1カ月で消化するという、多忙極まる7月に突入していった。
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■雨がらみの予選でハミルトンP1、バトン3番グリッド
2014年に復活したオーストリアGP。過去2年で2勝しているロズベルグは、金曜日の2回のフリー走行で堂々のトップタイムをマークしていたが、翌日の予選目前の走行で痛恨のクラッシュ、マシンを壊し、ギアボックス交換の5グリッド降格ペナルティーを受けることになった。
雨がらみの予選はスリリングな展開となった。Q2途中に降った雨はすぐにやみ、Q3になるとぬれた路面に合わせ各車インターミディエイトタイヤを履いてコースに。しかしコンディションの好転は早く、12分間のセッションの、最後の数分はドライタイヤでのアタック合戦となり、順位は目まぐるしく変わった。
ポールポジションは2年連続ハミルトンで今季5回目、通算54回目。2番手タイムはロズベルグだったが、4番手タイムのベッテル同様にギアボックス交換ペナルティーで、結果ロズベルグ6番グリッド、ベッテルは9番グリッドとなった。
これにより、フォースインディアのヒュルケンベルグが繰り上がってフロントローからスタート。5番手タイムのマクラーレンのバトンが3番グリッドという好位置を得た。
フェラーリのライコネンが4番グリッド、続いてレッドブルのリカルド、ロズベルグ、ウィリアムズのボッタスと来て、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが8番グリッド、間にベッテルを挟みトップ10最後にはウィリアムズのフェリッペ・マッサが入った(決勝日、マッサはピットスタートを選択した)。
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■メルセデスの2台がレースをけん引
曇天の決勝日。今季度々スタートでミスしていたハミルトンだったが今回は首位の座を守り、バトンが出だしよく2番手に。3位ライコネン、4位ヒュルケンベルグ、5位ロズベルグという順番で71周レースのオープニングラップを終えた。
2位を走行していたバトンは、7周目にライコネン、翌周ロズベルグと次々と抜かれ4位に。マクラーレンは9周して早々にタイヤ交換に踏み切り、バトンはポイント圏外へ落ちた。しかしレースが進むにつれバトンは再び入賞圏内に駒を進め、最終的にメルセデスやレッドブル、フェラーリに次ぐ6位入賞を果たすのだった。
レース序盤から各車のピットストップ作戦がばらけだした。3位に上がっていたロズベルグは10周して早くもピットイン。一方、1位ハミルトンは22周目になってようやくピットに飛び込んだのだが、タイヤ交換作業に手間取りロズベルグの後ろでコースに復帰。
27周目、スタートからノンストップで走行中だった首位ベッテルの右リアタイヤがバーストしクラッシュ。フェラーリの1台が消え、セーフティーカーの出番が回ってきた。この時点で、メルセデスの1-2フォーメーションができあがり、2台のシルバーアローがレースをけん引することになった。
32周目になってレース再開。順位は1位ロズベルグ、2位ハミルトン、3位フェルスタッペン、4位リカルド、5位ライコネン。その後、先頭を走る、2台のシルバーアローの間は1、2秒程度の程よいギャップができていった。
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■ファイナルラップでの接触
早めにタイヤ交換をしていたロズベルグと、その10周以上後にピットに入っていたハミルトンが、レース後半になり立て続けにタイヤ交換を行う。55周目に1周先んじてタイヤを替えたハミルトンはアウトラップで若干コースをはみ出すなどし、引き続きロズベルグがレースを先導することになった。
残り周回数が少なくなるにつれて、トップ2台が接近。67周目には2位ハミルトンがアタックを開始し、その差は1秒を切った。レース後に明らかになったことだが、ロズベルグはブレーキが不調だったという。
逃げるロズベルグ、真後ろにつけるハミルトン。2台のメルセデスの手に汗握る戦いはファイナルラップまで持ち越された。ターン1でのロズベルグのわずかなミスを見逃さなかったハミルトンが、ターン2でアウトから仕掛けた。ロズベルグは譲らず、2台は接触、ハミルトンはコース外にはじき出された。
ロズベルグはフロントウイングが脱落した状態のマシンで速度を落とし、大傷を負わなかったハミルトン、そしてフェルスタッペンやライコネンに次々と抜かれていった。
最終周での劇的な逆転勝利に喜ぶハミルトン。しかし表彰台では観客からブーイングを受けて困惑顔を見せていた。ハミルトンも、4位に終わったロズベルグも、接触は自分のせいではないという主張では一致していた。
メルセデス同士の接触にもはや驚きはない。タイトル奪取に闘志を燃やすこのトップドライバーたちを、チームオーダーなしに競わせるというチームの方針が続く限り、こうした事態は起こりうること。そしてそのチームの方針は、ライバルに対するマシンの優位性をよりどころにしているということを、われわれはこの3年で学んでいるのだから。
次戦イギリスGP決勝は、1週間後の7月10日に行われる。
(文=bg)