【F1 2017 続報】第2戦中国GP「メルセデスのカウンターパンチ」
2017.04.09 自動車ニュース![]() |
2017年4月9日、中国の上海インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権の第2戦中国GP。開幕戦でフェラーリ&セバスチャン・ベッテルに優勝をさらわれた王者が開眼、難しいコンディションでミスすることなく、メルセデスのルイス・ハミルトンが勝利をおさめた。
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今年のフェラーリは「本物」なのか?
常勝メルセデスを破り、開幕戦オーストラリアGPで劇的な優勝を飾ったフェラーリのセバスチャン・ベッテル。速さとレーシングカー然としたルックスを目指し、大胆なレギュレーション変更に踏み切った今年のF1は、世界中で絶大な人気を誇る最古参チームの1年半ぶりの勝利により、変革の第一歩を広く印象付けながら幕を開けた。
もちろんオーストラリアは全20戦のうちの初戦に過ぎず、この先もフェラーリが勝ち続けるかどうかはまだ分からない。ストップ&ゴーを繰り返すアルバートパークは各マシンの真のポテンシャルが見えづらい特殊なコースだったため、よりコンベンショナルなサーキットでの戦いにならないと本当の勢力図は見えてこないからだ。
開幕戦を振り返ってみると、予選でポールポジションを奪ったルイス・ハミルトンと2番手ベッテルとの間には依然0.2秒の開きがあり、一発の速さではメルセデスに一日の長があった。一方フェラーリが優れていたのは、レースペース。特に、温度が上がった状況下でも安定して走れていた点だ。逆にメルセデスは、レース序盤のウルトラソフトでハミルトンが苦戦を強いられ早めのピットストップを余儀なくされ、その後レッドブルのマックス・フェルスタッペンを抜きあぐねたことも影響し、ベッテルにオーバーカットを許して2位に甘んじた。
第2戦中国GPは、この2強の真の力量が試される今年最初のレースと見られていた。上海インターナショナル・サーキットでは、メルセデスが昨季まで5年連続でポールポジションを取り4勝を記録。フェラーリはといえば、2013年にフェルナンド・アロンソが勝った以外は目立った戦績を残せていなかった。「上」の字を模したレイアウトに、シーズン最長1.2kmのストレートや高い回頭性が要求されるコーナーなどがちりばめられた上海は、メルセデスのパワーユニットがその威力を発揮するコースだ。そんなシルバーアローの強さが際立つ上海でも跳ね馬が活躍するとなれば……。
果たして今年のフェラーリの速さ、強さは「本物」なのか? メルセデスの逆襲はあるのか? 今年で14年目を迎えた中国GPは、不順な天候のもとで始まった。
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接戦の予選を制し、ハミルトンが6戦連続ポール
金曜日は、雲が低く垂れ込めメディカルヘリコプターが飛べない状況になり、2回のフリー走行のほとんどは出走のないまま終わった。明けて土曜日、事実上予選前の唯一のセッションとなった3回目のフリー走行では、ベッテル1位、キミ・ライコネン2位とフェラーリ勢が上位を占め、挙動が安定しなかったメルセデス勢はバルテリ・ボッタスが3位、ハミルトンは4位だった。
予選に入ってもQ1、Q2とフェラーリが1-2を奪い、いよいよQ3でスクーデリアが1年半ぶりのポールポジション獲得かと期待も高まったが、メルセデスは最後に、隠していた爪をあらわにした。ハミルトンが2度のアタックでトップタイムを記録し、通算63回目、昨年10月のアメリカGPから6戦連続となるポールを決めてしまった。メルセデスにとっては参戦150戦目、75回目のポール奪取。またそのタイムは、昨年より3.72秒速く、2004年にミハエル・シューマッハーが記録したコースレコードを0.56秒縮める記録となった。
続く2番グリッドは、最後の最後でボッタスからその座をかすめ取ったベッテル。タイムはハミルトンから遅れること0.184秒、3番グリッドのボッタスとはわずかに1000分の1秒差という接戦だった。予選4位にはライコネンが入り、前2列には開幕戦と同様の顔ぶれが並んだ。
レッドブルは、ダニエル・リカルドが5番手、マックス・フェルスタッペンはエンジンがミスファイアを起こしQ1敗退の19位、他車のペナルティーで16番グリッドからスタートすることになった。トップ3チームに続くのはウィリアムズで、フェリッペ・マッサが予選6位、新人ランス・ストロールも初のQ3進出を果たし10位の座を得た。ルノーのニコ・ヒュルケンベルグ7位、フォースインディアのセルジオ・ペレスが8位、トロロッソのダニール・クビアトは9位につけた。
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難しいコンディションでレッドブルが上位進出
決勝日に降った雨はレース前には既にやんでおり、路面の所々がぬれているコンディション。今季からクラッチ操作が難しくなるようルール変更が行われておりスタートでの波乱も予想されたのだが、上位陣は無難な出だしを見せた。1位ハミルトン、2位ベッテル、3位ボッタスまではグリッド順通り、4位にリカルドが上がり、ライコネンは5位にポジションダウンした。
しかしウィリアムズのストロールがコースオフしたため、56周レースの早々にバーチャル・セーフティーカーの指示が出された。これをチャンスとみたのが2位ベッテルで、コースが急速に乾きつつあることからすぐさまタイヤをドライに替えて勝負に出た。しかし、開幕戦ウィナーにとっては不運なことに、4周目にレース再開となるとザウバーのルーキー、アントニオ・ジョビナッツィがメインストレートで激しくクラッシュ、セーフティーカーの出番が回ってきてしまった。この徐行中に全車がドライへとスイッチしてしまい、ベッテルはアドバンテージを生かすことができなかったのだ。
順位は1位ハミルトン、2位リカルド、3位ライコネン、そして16番手スタートのフェルスタッペンが驚異的な追い上げで4位まできており、ベッテルはボッタスの後ろ、6位につけていた。あと1周でレース再開という時点で、ボッタスが痛恨のスピン。上位争いから脱落してしまった。
8周目に再びレースが始まると、フェルスタッペンがライコネンを抜き3位に。気がつけばトップのハミルトンの背後にはリカルド、フェルスタッペンのレッドブル勢が迫ってきていた。元気のいいフェルスタッペンは11周目にチームメイトをもオーバーテイクし、1秒半先行する首位ハミルトンに照準を合わせた。一方フェラーリ勢はといえば、タイヤに苦しむ3位リカルドにフタをされ、4位ライコネン、5位ベッテルとも、さらに上を狙えないままでいた。
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フェラーリ&ベッテル、2位の座を奪還
難しいコンディションを利用して表彰台まで上がってきたレッドブル、逆に状況を味方につけられないでいたフェラーリという構図は、その後のベッテルの“オーバーテイキングショー”で変わった。ベッテルは、ハイブリッドシステムの不調を訴えるライコネンを20周目にかわし4位に。そして2周後にはリカルドにも仕掛け、3位の座を奪った。この時のフェラーリとレッドブルによる、ホイールを当て、火花を散らしながらの激しいドッグファイトは、レースのハイライトとして語り継がれるだろう。
さらに29周目、2位フェルスタッペンがヘアピンでタイヤをロックアップさせたのを見逃さなかったベッテルは、レース半ばにして2位に返り咲いたのだった。
ようやく優勝を狙えるポジションにまできたフェラーリだったが、1位ハミルトンは既に11秒も先行していた。35周目、2位ベッテルがフレッシュタイヤを求めピットイン。翌周1位ハミルトンもその動きにならってタイヤを交換。その後はハミルトンが7~8秒の間隔を維持しながらレースをコントロールし、今季初勝利を飾った。
レース後、共に健闘をたたえ合うハミルトンとベッテルの姿が見られた。過去3年にわたり繰り広げられたハミルトン対ニコ・ロズベルグの「メルセデス同士対決」には、同じチームに属する2人のタイトル争いということで独特の緊張感を伴っていたが、今年はメルセデスとフェラーリが切磋琢磨(せっさたくま)し、この2強がF1を盛り上げ、競争のレベルを上げている、そんな力強い前向きな雰囲気を感じ取ることができた。
2戦目のメルセデスのカウンターパンチに、フェラーリがどう応戦するのか? あるいは、不順な天候を味方につけて3-4位をものにしたレッドブルの追い上げはなるのか? 残る18レースへの興味は尽きない。
第3戦バーレーンGPの決勝は、1週間後の4月16日に行われる。
(文=bg)