【F1 2017 続報】第12戦ベルギーGP「真っ向勝負、ほぼ互角」
2017.08.28 自動車ニュース![]() |
2017年8月27日、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで行われたF1世界選手権第12戦ベルギーGP。夏休み明けのシーズン後半戦は、メルセデスのルイス・ハミルトンとフェラーリのセバスチャン・ベッテルの真っ向勝負で幕を開けた。
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2強の激突、後半戦へ
恒例のサマーブレイクを終えたF1は、第12戦ベルギーGPからシーズン後半戦に突入した。ここまでの11戦で4勝を記録したフェラーリのセバスチャン・ベッテルは202点、そして同じく4勝した、メルセデス駆るルイス・ハミルトンは14点ビハインドの188点。さらに優勝2回で僚友ハミルトンを19点差で追うバルテリ・ボッタスを含めた今季のタイトル争いは、11月末の最終戦アブダビGPまでの9戦のうちに決することになる。
2017年シーズン前半は、メルセデスとフェラーリの2強がシーソーゲームを繰り広げてきた。過去3年の覇者メルセデスは、抜群のパワーと速さを武器に第7戦カナダGPや第10戦イギリスGPでハミルトンを圧勝に導いた。しかし安定したパフォーマンスはフェラーリに分があり、特にハミルトンは第4戦ロシアGPなど取りこぼしも多かったことが14点のギャップに表れていた。
一方のフェラーリは、第6戦モナコGP、第11戦ハンガリーGPといったタイトなコースで強さを発揮。シーズン中盤にかけて調子を上げているキミ・ライコネンとともにチームの総合力にも自信を深めてきている。
ベルギーのスパ・フランコルシャン、続くイタリアのモンツァはシーズンきっての高速コースでありメルセデス優勢、第14戦シンガポールGPは市街地コースでフェラーリが有利とみられていた。2強の激突、後半戦の戦いは、それぞれのマシンの強みをいかに発揮し、弱みをどこまでカバーできるかにかかっている。
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ハミルトン、シューマッハーのポール記録に並ぶ
カレンダー最長7kmの難コース、全開率70%のハイスピード・サーキット、スパを大の得意としているのがライコネンだ。ここでの優勝は現役ドライバー最多の4回で、実に彼の通算勝利数の5分の1を占めるほど。フェラーリとの来季契約を結んだばかりの“スパ・マスター”がフリー走行から気を吐き、1回目と3回目でトップタイムをたたき出してメルセデス勢の脅威となった。
しかし、予選になるとパワーをひねり出せるのがメルセデスである。Q1、Q2としっかりと最速タイムを刻んできたハミルトンが、トップ10グリッドを決めるQ3に入ってもずば抜けた速さでポールポジションを獲得。コースレコードを更新する今季7回目の予選P1はキャリア通算68回目となり、ついにミハエル・シューマッハーが持つ最多ポール記録に肩を並べた。
2番手につけたのはベッテル。チームメイトのライコネンのスリップストリームを活用し、ポールタイムの0.242秒差にまで迫ることができた。この週末なかなか帳尻が合わせられないでいたボッタスは3番手。リアのバイブレーションを訴えていたライコネンは4番手だった。
2強の後ろにはレッドブル。マックス・フェルスタッペンが5位、ダニエル・リカルドは6位と定位置からレースに臨むことになった。
ベルギーで元気がよかったのがルノー勢。中でもジョリオン・パーマーはチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグを上回るパフォーマンスを披露していたが、不運にもQ3でトラブルが発生、ギアボックス交換で14番グリッドに降格。ヒュルケンベルグは7位につけた。セルジオ・ペレス8位、エステバン・オコン9位とフォースインディアのペアはいつも通りタンデムでグリッドに並んだ。パーマーのペナルティーでマクラーレンのフェルナンド・アロンソが繰り上がり、10番グリッドからスタートすることになった。
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スタートからハミルトンを追い回すベッテル
アルデンヌ地方の山間部にあるスパは天気が変わりやすいことで有名だが、レースは雲間から太陽が顔を出すようなコンディションで行われた。
44周の高速戦の幕開けに波乱はなく、ポールシッターのハミルトン以下、2位ベッテル、3位ボッタス、4位ライコネンと順当にスタートを切った。
トップのハミルトンに逃げられまいと、2位ベッテルが1秒半程度の差で食らいついていた。10周を待たずに3位ボッタスはベッテルに5秒も突き放されており、この日の優勝争いは早々に2台に絞られた。そしてこの2台による緊迫感あるマッチレースはゴールまで続くのだった。
ピレリがベルギーに持ち込んだタイヤは、ウルトラソフト、スーパーソフト、ソフトの3種類。13周目にタイヤ交換に飛び込んだ首位ハミルトンは、ウルトラソフトからソフトタイヤに換装した。15周目、今度はベッテルにピットインの番が巡ってきたが、ハミルトンの前に出ることはできなかった。それでもベッテルは諦めず、程なくしてハミルトンの1秒以内に接近。これにハミルトンも応戦して再び1秒半までギャップを広げるなど、その後もトップ2は押し合いへし合いを繰り返した。
レースの中間地点である22周目を過ぎ、1位ハミルトン、1.6秒差で2位ベッテル、その5.7秒後方に3位ボッタス、トップから遅れること22秒で4位リカルドというオーダー。スタートから4位を走っていたライコネンは、イエローフラッグ無視で10秒のストップ・ゴーペナルティーを受けて6位に後退しており、5位を走っていたフェルスタッペンのレッドブルは8周目にメカニカルトラブルでリタイアを喫していた。
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ベッテル、セーフティーカー明けに賭けたが
膠着(こうちゃく)気味のコースで白熱していたのがフォースインディア同士の争いだ。アゼルバイジャンGPで接触、カナダGPでは進路を譲らないなど、シーズンを経るに従って関係を悪化させていたペレスとオコンは、オープニングラップでのニアミスに続いてレース中盤に接触。パーツが飛散したことでセーフティーカーが導入され、これを機にとハミルトンやベッテルを含め各車がピットへとなだれ込んだ。1位ハミルトンが選んだのはソフト、2位ベッテルは、最もやわらかいウルトラソフトを装着し再スタートを待った。
34周目にレース再開。1位ハミルトン、2位ベッテル、3位ボッタス、4位リカルド、5位ライコネンという隊列で鋭角のターン1を抜けていった。名物コーナー「オールージュ」までにベッテルがハミルトンの背後にピタリとつけるも、ベッテルにとっては接近するタイミングが早過ぎた。ストレートで十分なスリップストリームを使う前にハミルトンの横に並んでしまい、スピードが乗らずオーバーテイクまで至らなかった。その後ろの3位ボッタスは、アウトからリカルド、インからライコネンに挟まれるかたちでかわされ、5番手に落ちた。
ベッテルは再スタートという好機を逃してしまったが、ゴールが近づいてきても1秒強の間隔でシルバーのマシンを追い続け、最終的に2.3秒の差で、2位でチェッカードフラッグを受けた。
ドライバーズサーキットのスパで3勝目、今シーズン5勝目を飾ったハミルトン。しかしメルセデス優位とみられていたサーキットで、フェラーリはほぼ互角といっていい戦いを披露した。ベッテルはポイントリードを半減させ、ハミルトンに7点差にまで詰め寄られたが、スリーポインテッドスターの独走を許さないだけの力量を示せた分だけ、スクーデリアの自信はより深まったのかもしれない。
次戦はヨーロッパでの最後のレース。イタリアGP決勝は1週間後の9月3日に行われる。
(文=bg)