ほこりまみれの“お宝車”
「バーンファインドカー」の魅力とは
2017.10.06
デイリーコラム
「ほったらかし」に価値がある!?
バーンファインド(Barn find)という言葉を見かけることが多くなった。以前からヒストリックカーエンスージアストの間では使われてきたが、最近になって、クルマ以外のメディアでも取り上げられたことで、広く知られるようになった。岐阜県内の納屋に長く置かれていた1969年型「フェラーリ365GTB/4 デイトナ」の希少モデルが、2017年9月に海外のオークションにかけられ、高価格で落札されて、大きな話題になったからだ。
バーンファインドとは、納屋や物置、倉庫などの中に長く保管されていたものが見つかり、再び日の目を見ることを指し、クルマの場合にはバーンファインドカーと呼ばれる。新しいクルマに乗り換えても手放さず、あるいは個人的なコレクションとして収集・保管するなど、風雨にさらされず、人目につくことなくしまい込まれていたクルマは、ヒストリックカーファンにとっては垂涎(すいぜん)の存在だ。
その理由はいくつかあるが、工場出荷時の状態、いわゆるオリジナルの状態に近いことが最大の魅力となっている。これを手に入れれば、自分の好みに応じてレストア(修復)することが可能だからだ。
だがそれ以上に、近年ではヒストリックカーを新車のようにピカピカに仕上げる行為を、「刻まれてきた歴史を捨てる行い」として否定する傾向にあることが、バーンファインドカーに注目が集まる要因になっている。どう修復するかは、所有者の考えに委ねられていることは言うまでもないが、そうした動きになっているのが現状だ。
世界中の名だたるコンクール・デレガンスでも、未レストア、あるいは修理箇所が少ないヒストリックカーを対象にした「プリザーブドカー」クラスが設けられている。すべてに当てはまるわけではないが、ヒストリックカーの売買では、レストアされたものより、バーンファインドでオリジナリティーが高いほど落札価格が高くなる傾向にある。事故の形跡がなく、装備品がそろっていればさらに評価が上がる。
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整備するにもセンスが必要
クルマが使用されてきた状況によりレストアの要件は千差万別だが、オリジナルを尊重すれば、走行距離が少ないなら、“未開封のままのエンジン”や駆動系はオイルや消耗品を交換するだけで目覚めるはずだし、安全な走行に必須なブレーキ等を整備し、塗面や内装をクリーニングする程度で完成ということになる。傷やへこみ、ほこりさえも“年輪”としてそのまま残すという極端な例もあるほどだ。その作業にあたっては、所有者もメカニックもクルマの歴史に対する深い知識と造詣が必要で、過去に加えられた修理や改造を見極め、周囲の状況に合わせてレストアするセンスが必要になる。
今回、岐阜で見つかったデイトナは使用期間が短く、走行距離も約3万6000kmと少ないうえに、車載工具を完備するなど保管状態がよく、さらに、一説には5台生産されたとされるレース用アルミボディーのうちの、1台だけの公道走行用仕様ということで高値が予想されていた。果たして180万7000ユーロ(約2億4000万円)で落札されたが、同じオークションできれいにレストア済みの標準生産型1970年デイトナが68万7000ユーロ(約9100万円)であったことを考えれば、希少価値とバーンファインドの相乗効果によって高価格になったといえるだろう。おそらく、このデイトナは、いずれ有名コンクール・デレガンスに姿を現すはずだが、どのような状態で出てくるのか興味は尽きない。
日本でも海外でも、バーンファインドカーに巡り会うのは、保管場所の関係で都市部ではまれで、郊外で発見される場合が多いようだ。もし、あなたが日本のどこかの納屋で長く眠っていたクルマに出会ったとしたら、それがたとえ高級なモデルでなく大量生産された日本の小型大衆車であったとしても、まさに希少なバーンファインドカーなのである。
(文=伊東和彦<Mobi-curators Labo.>/写真=フェラーリ/編集=関 顕也)
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伊東 和彦
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