マクラーレン750Sスパイダー(MR/7AT)/アルトゥーラ(MR/8AT)/GTS(MR/7AT)

変わりゆく名門 2025.09.23 試乗記 藤野 太一 晩夏の軽井沢でマクラーレンの高性能スポーツモデル「750S」「アルトゥーラ」「GTS」に一挙試乗。乗ればキャラクターの違いがわかる、ていねいなつくり分けに感嘆するとともに、変革の時を迎えたブランドの未来に思いをはせた。
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「750S」や「GTS」が買えるのはこれで最後?

2025年9月吉日、長野県・軽井沢でマクラーレンの試乗会が開催された。現在のマクラーレンのラインナップは、アルティメットシリーズの「W1」を筆頭に、4リッターV8エンジンを搭載する「750S」とそのオープン版である「750Sスパイダー」、3リッターV6エンジン+プラグインハイブリッドの「アルトゥーラ」と「アルトゥーラ スパイダー」、4リッターV8エンジンを搭載するグランツーリスモの「GTS」で構成されている。今回はW1を除くすべてのモデルが用意されていた。

なぜ今マクラーレンがわざわざ新車をそろえて試乗会を開催したのか。ひとつはビスポークプログラムである「マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)」のさらなる認知向上のためだ。したがって今回用意された試乗車にはいずれもMSOによるカスタマイズが施されていた。コロナ禍が収束してからは本国のMSOの開発者が定期的に日本を訪れ、顧客へ直接プレゼンテーションを行う機会を設けているようで、利用者は着実に増えているという。

もうひとつは、これはまだ正式に発表されたものではないが、おそらく2026年には日本向けの750SとGTSの生産終了が想定されるためだ。ガソリンモデルの「ポルシェ・マカン」がサイバーセキュリティーの法規に適合しておらず、2026年内での生産終了が発表されているが、マクラーレンにも同様の法規対応や、また自動ブレーキ装着の義務化などが求められることを考えると、アルトゥーラ以外のモデルの継続生産は難しいだろう。

ピュアなV8エンジンを搭載するマクラーレンの後継モデルが存在するのかは不明だが、これが最後になる可能性も否定はできない。新車で欲しいのであれば今のうちにというマクラーレンからのメッセージともとれる。

ここであらためてマクラーレンのロードカーに共通する特徴を挙げてみる。すべてのモデルが、軽量、高剛性なカーボンモノコックを採用していること。ミドシップであること。後輪駆動(2WD)であることだ。これらの要素によってマクラーレンは一気通貫しており、またライバルと一線を画す独自の乗り味を実現している。今回は750Sスパイダー、アルトゥーラ、GTSの順に試乗し、それぞれのキャラクターの違いをはっきりと体感できた。

「750S」は2023年に登場したマクラーレンの上級モデル。従来の「720S」より約30%のコンポーネントを変更し、より軽くて速いマシンに仕上げられた。今回はオープントップの「スパイダー」に試乗した。
「750S」は2023年に登場したマクラーレンの上級モデル。従来の「720S」より約30%のコンポーネントを変更し、より軽くて速いマシンに仕上げられた。今回はオープントップの「スパイダー」に試乗した。拡大
インテリアの仕様は、総ナッパレザーの「テックラックス」と、スエード調素材「アルカンターラ」とナッパレザーを組み合わせた「パフォーマンス」の2種類から選択可能。試乗車の仕様は後者だった。
インテリアの仕様は、総ナッパレザーの「テックラックス」と、スエード調素材「アルカンターラ」とナッパレザーを組み合わせた「パフォーマンス」の2種類から選択可能。試乗車の仕様は後者だった。拡大
高いホールド性を備えたレーシングシートは、カーボンファイバーシェルを用いることで軽量化も追求。「アルカンターラ」の表皮にはレーザーによるパンチング加工が施されており、下地のオレンジがグラデーション状に浮き出ている。
高いホールド性を備えたレーシングシートは、カーボンファイバーシェルを用いることで軽量化も追求。「アルカンターラ」の表皮にはレーザーによるパンチング加工が施されており、下地のオレンジがグラデーション状に浮き出ている。拡大
試乗会場に並べられた、マクラーレンの各車。
試乗会場に並べられた、マクラーレンの各車。拡大