激動だった2025年の自動車業界を大総括! 今年があのメーカーの転換点になる……かも?
2025.12.26 デイリーコラム円安が救いか
例年、webCGでは“今年の重大クルマニュースを振り返る”的なコラムを書かせてもらっているが、直近の2年は連続して、暮れも押し詰まった12月下旬にビッグニュースが舞い込んできて慌てさせられた。
2024年末といえば、12月23日にホンダと日産(そして三菱)が「経営統合に向けた検討に関する基本合意書」の締結を発表したことを、ご記憶の向きも多いだろう。その世紀の経営統合交渉は、結局のところ破談になった(とされる)が、2024年末から2025年の年始にかけての自動車業界は上を下への大騒ぎとなった(参照)。
さらに1年さかのぼった2023年末は、同年春からくすぶっていたダイハツによる認証不正の全貌が、12月20日に第三者委員会の調査結果として発表され、ダイハツはそのまま全車種出荷停止という事態におちいった(参照)。
こうして、その年最大といっても過言ではないビッグニュースで締められる結果になった2023年と2024年に対して、この2025年は、年初から日本の自動車産業が大きく揺さぶられた。いうまでもなく“トランプ関税”である。
2025年1月にアメリカで発足した第2次トランプ政権は、即座に「輸入車に追加関税を課す」と発表。実際、日本からの輸入車には4月3日から、(従来の2.5%に25%を追加した)27.5%の関税が課せられた。その後の日米交渉によって、日本車の関税は9月13日から15%に下げられたものの、3月まではそもそも2.5%だったわけで、日本の自動車メーカーの経営の圧迫要因となっているのには変わりない。
唯一の救いは、トランプ大統領の意に反して“円安”が続いていることだ。日本国内の物価にとってはうらめしい円安だが、輸出で食べている日本の自動車産業にとって、円安がトランプ関税の影響を最小限にとどめる役割を担っているのは間違いないところである。
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師走に飛び込んできた2つのニュース
というわけで、この年末はさすがに平穏か……と思ったら、トランプ関税ほどではないしても、なかなかにビッグなニュースが2つ飛び込んできた。
ひとつは、欧州連合(EU)での「2035年にエンジン車の新車販売を禁止する」方針が事実上、撤回されたことだ(参照)。正確にいうと、現地時間の2025年12月16日、EUの“内閣”にあたる欧州委員会が、エンジン車販売禁止の撤回の提案を提出した。もっとも、2025年に入って以降は、外堀を埋めるように、ドイツやイタリアなどの同方針の撤回を求める発言が取りざたされていたから(参照)、今回の欧州委員会の動き自体に驚きはあまりなかった。
もうひとつは、同じ12月16日に発表された、ホンダによる大手自動車部品メーカーのAstemo(アステモ)の子会社化だ。アステモの出資比率は現在、ホンダと日立が40%ずつ、残る20%がJICキャピタルとなっているが、ホンダが日立から21%を追加取得して、新たにホンダ61%、日立19%、JICキャピタル20%とするというのが今回の骨子。これが実現すれば、アステモはホンダの連結子会社となる。
アステモは2021年1月に、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業(ニッシン)の経営統合によって設立された総合自動車部品メーカーである。もっとさかのぼると、日立オートモティブシステムズは、1930年にはじまった日立の自動車部品事業が基礎となっており、戦前から日産とのつながりが深かった。対して、キャブレターで創業したケーヒン、ショックアブソーバーで有名なショーワ、ブレーキのニッシンは、ホンダ系サプライヤーとして知られてきた。
そんな日産とホンダの両方に関係が深いサプライヤーが結集して生まれたアステモは、今やパワートレインからシャシー、自動運転・先進運転支援まで一手に引き受ける、日系3大メガサプライヤーのひとつとされる。
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メガサプライヤーの子会社化にみる思惑
アステモの連結子会社化について、ホンダはプレスリリース内で「(アステモの)高いソフトウエア開発力を強みとしながら(中略)グローバルメガサプライヤーとしての地位を確固たるものにする」、そして「ホンダにとってアステモは(中略)重要なパートナーであり、SDV開発やコスト競争力において、ホンダがさらなる向上を目指すうえで、アステモの成長は欠かせない」としている。
今をときめくトヨタの強みは、アイシン、デンソー、豊田自動織機という御三家サプライヤーが強力に脇を支えるグループ構造にあるともいわれる。かねてアステモの主導権を握ることを目指していたホンダも、それと似たカタチを想定しているかもしれない。そういえば、2024年末の日産との経営統合交渉のときも、もとから対日産の売り上げも大きいアステモがカギ……と論じたメディアもあった。
前記のように、エンジン車の販売禁止はひとまず撤回される欧州だが、将来的な電気自動車(BEV)の普及という大きな流れが止まるわけではない。また、世界最大のBEV市場と化した中国での苦境が伝えられた日本勢も、開発手法の転換(簡単にいえば、主導権を中国サイドに渡す)に成功したトヨタや日産が「bZ3X」や「N7」などのヒット作を生み出しているのに対して、ホンダは今も苦戦中と伝えられる。
2024年末の経営統合交渉ではどことなく勝ち組側とされたホンダも、中国市場での苦戦やトランプ関税の影響に加えて、利益の大半を占める二輪事業でも、アジア市場で急速に進む電動化への対応が後手にまわっているとの指摘もある。今は黒字のホンダだが、いまだ独立独歩路線の経営を不安視する声もなくはない。
そうしたホンダを取り巻くもろもろを考えると、今回のアステモ連結子会社化は、その成否が今後のホンダを大きく左右する可能性がある。この件は、2023年末のダイハツ認証不正や2024年末の日産とホンダによる経営統合交渉ほどの注目は浴びていないが、こうして2025年も、日本の自動車産業の将来を占うような出来事とともに暮れていく……のか。
(文=佐野弘宗/写真=European Commission、The White House、アステモ/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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