【F1 2018 続報】第8戦フランスGP「ハミルトン3勝、表彰台に3強」

2018.06.25 自動車ニュース bg
F1第8戦フランスGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真右から2番目)、2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同左端)、3位でレースを終えたフェラーリのキミ・ライコネン(同右端)。(Photo=Red Bull Racing)
F1第8戦フランスGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真右から2番目)、2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同左端)、3位でレースを終えたフェラーリのキミ・ライコネン(同右端)。(Photo=Red Bull Racing)拡大

2018年6月24日、フランスのサーキット・ポールリカールで行われたF1世界選手権第8戦フランスGP。10年ぶりに復活した“元祖GP”で、メルセデスとルイス・ハミルトンは再び速さを取り戻し、そして表彰台には3強が並んだ。

一番やわらかいウルトラソフトタイヤを履いてスタートした3番グリッドのセバスチャン・ベッテルが、抜群の蹴り出しでフロントローのメルセデス勢に襲いかかる。しかしターン1を前に行き場を失ったフェラーリは、バルテリ・ボッタスのメルセデスと接触、2台は大きく順位を落とすことになった。(Photo=Red Bull Racing)
一番やわらかいウルトラソフトタイヤを履いてスタートした3番グリッドのセバスチャン・ベッテルが、抜群の蹴り出しでフロントローのメルセデス勢に襲いかかる。しかしターン1を前に行き場を失ったフェラーリは、バルテリ・ボッタスのメルセデスと接触、2台は大きく順位を落とすことになった。(Photo=Red Bull Racing)拡大
ライバルから遅れること1レース、改良型パワーユニットをフランスで投入してきたメルセデス勢。レースウイークが始まるやフリー走行すべてでトップタイムをマークし、予選ではハミルトン(写真)がポール獲得、ボッタスは2位で、第5戦スペインGP以来となるフロントロー独占に成功した。今季2度目の1-2フィニッシュを目指すも、ボッタスはオープニングラップの接触で後退、7位フィニッシュ。一方のハミルトンは快調なペースで周回を重ね、今季3勝目を飾り、ポイントリーダーの座に返り咲いた。(Photo=Mercedes)
ライバルから遅れること1レース、改良型パワーユニットをフランスで投入してきたメルセデス勢。レースウイークが始まるやフリー走行すべてでトップタイムをマークし、予選ではハミルトン(写真)がポール獲得、ボッタスは2位で、第5戦スペインGP以来となるフロントロー独占に成功した。今季2度目の1-2フィニッシュを目指すも、ボッタスはオープニングラップの接触で後退、7位フィニッシュ。一方のハミルトンは快調なペースで周回を重ね、今季3勝目を飾り、ポイントリーダーの座に返り咲いた。(Photo=Mercedes)拡大
長いストレートと、曲がり込むコーナーセクションの間でセッティングの妥協点を探っていたレッドブル勢。予選5番手のダニエル・リカルドはよりハイダウンフォース仕様に、同4位のフェルスタッペン(写真前)は直線優先のローダウンフォースに決めてレースに臨んだ。スタートでベッテル、ボッタスの接触の間隙(かんげき)を突いて2位に上がったフェルスタッペンがそのままの順位でゴール。リカルドは終盤ライコネンに抜かれ表彰台を逃し4位。(Photo=Red Bull Racing)
長いストレートと、曲がり込むコーナーセクションの間でセッティングの妥協点を探っていたレッドブル勢。予選5番手のダニエル・リカルドはよりハイダウンフォース仕様に、同4位のフェルスタッペン(写真前)は直線優先のローダウンフォースに決めてレースに臨んだ。スタートでベッテル、ボッタスの接触の間隙(かんげき)を突いて2位に上がったフェルスタッペンがそのままの順位でゴール。リカルドは終盤ライコネンに抜かれ表彰台を逃し4位。(Photo=Red Bull Racing)拡大

久々にして新鮮なフランスGP

フランスに10年ぶり、南仏ポールリカールには28年ぶりにF1が戻ってきた。仏中部のマニクール・サーキットを舞台に行われ、フェリッペ・マッサが優勝した前回のフランスGPを戦った現役ドライバーは、20人中でたった4人。ポールリカールで最後のGPが開催された1990年より後に生まれたドライバーは10人にも及ぶというから、時代は変わったという感があるのは否めない。

今世紀に入りテスト専用コースとして近代的な設備に生まれ変わったポールリカールは、前回より2km延びて全長5.8kmに。空力性能が試される高速「シーニュ」、続く「ボーセ」といったおなじみのコーナーは健在だが、この地方特有の風にちなみ命名された1.8kmもの「ミストラル・ストレート」は、安全性の観点からシケインにより分断された。1906年に始まった「GP=グランプリ」発祥の国、フランスでの伝統のレースではあるものの、実質的にはほぼ新顔といっていいだろう。

久々にして新鮮なフランスGPの目前に入ってきたのが、「2019年レッドブル・ホンダ誕生」のニュースだった。12年間で57勝、V8エンジン最後の4年間はドライバー、コンストラクター両タイトルを連取したレッドブルとルノー。2014年に始まったV6ハイブリッド時代になると急激にパフォーマンスを落とし、以降両者の関係は悪化の一途をたどっていた。それでも、今季ダニエル・リカルドが2勝を記録するなど、ルノーが“勝てるパワーユニット”であったことは事実。一方のホンダは、4年間で最高位が4位と、発展途上ながら表彰台すらまだない。

レッドブルは今後のホンダの「伸び代」に賭けたということだろうが、その賭けは、当面、ホンダとの契約が切れる2020年末までのもの。その翌年に予定される大幅なレギュレーション変更のタイミングで、現在はタイトルスポンサーとしてチームをサポートしているアストンマーティンや、F1での成功をもくろむポルシェなど、新たなパワーユニットメーカーの参入があるかもしれないことを考えると、将来的なくら替えというプランもまだ残っているのだ。

来年のルノー陣営は、今季3強に次ぐポジションにつけている本家ルノーチームと、マクラーレンの2チーム体制となる。カスタマーが減りパワーユニットによる収益も下がるものの、身軽になった分リソースを集中させ、メルセデスやフェラーリとのギャップを縮めたいところである。

レッドブル、ルノー、ホンダ。久しくタイトルから遠ざかっているそれぞれの戦局が、これから大きく変わることは間違いないだろう。

今年、フェラーリと1年契約を結んでいるライコネン(写真)。僚友ベッテルに迫る勢いを見せるも未勝利のままで、来季の残留が危ういのではとささやかれていた。フランスでは6番グリッドから苦しい戦いを強いられたが、終盤フレッシュなタイヤを武器にリカルドをオーバーテイク。第4戦アゼルバイジャンGP以来となる久々の3位表彰台にのぼった。(Photo=Ferrari)
今年、フェラーリと1年契約を結んでいるライコネン(写真)。僚友ベッテルに迫る勢いを見せるも未勝利のままで、来季の残留が危ういのではとささやかれていた。フランスでは6番グリッドから苦しい戦いを強いられたが、終盤フレッシュなタイヤを武器にリカルドをオーバーテイク。第4戦アゼルバイジャンGP以来となる久々の3位表彰台にのぼった。(Photo=Ferrari)拡大

メルセデス、今季2回目のフロントロー独占

史上最多タイの21戦で争われる2018年のF1は、選手権始まって以来初となる3週連続開催に突入。フランス、オーストリア、イギリスと比較的近場なヨーロッパでの連戦とはいえ、GPサーカスはいまだかつて経験したことのない過酷な戦いを強いられることになる。

フランスGPウイークの序盤から好調だったのがメルセデス勢だ。時折コースの一部で小雨が降る中行われた予選に入ってもその勢いを維持し、トップ10グリッドを決めるQ3では、ルイス・ハミルトンが第5戦スペインGP以来となる今季3回目、通算75回目のポールポジションを獲得した。僚友バルテリ・ボッタスが0.118秒差で2位につけたことで、メルセデスは今年2回目、通算では52回目のフロントロー独占に成功した。

フェラーリのセバスチャン・ベッテルは、最後のアタックをまとめきれず予選3位。マックス・フェルスタッペン4位、リカルド5位とレッドブルの2台が並び、フェラーリのキミ・ライコネンは6位だった。

3強に次ぐ7位はルノーのカルロス・サインツJr.。ザウバーのルーキー、シャルル・ルクレールが大健闘し、初のQ3進出で8位につけた。ハース勢はケビン・マグヌッセン9位、ロメ・グロジャンは10位。今季まだ無得点のグロジャンは、初めての母国GPの予選でアタック中にスピン、ウオールにヒットしてタイム計測はできなかった。

今季これまでポールを4回獲得しているフェラーリのベッテル(写真) だったが、フランスでは最後のアタックをまとめきれず予選3位。それでも今季常にトップ3グリッドにつけているあたりはさすがである。レースではスタートでの蹴り出しが良く、フロントローのメルセデス勢に迫り過ぎてしまいボッタスと接触。緊急ピットインを余儀なくされるも、後方から怒涛(どとう)の追い上げを見せ瞬く間に入賞圏内まで挽回してきた。接触による5秒加算ペナルティーを受けながら5位完走。14点差でポイントリーダーの座をハミルトンに明け渡した。(Photo=Ferrari)
今季これまでポールを4回獲得しているフェラーリのベッテル(写真) だったが、フランスでは最後のアタックをまとめきれず予選3位。それでも今季常にトップ3グリッドにつけているあたりはさすがである。レースではスタートでの蹴り出しが良く、フロントローのメルセデス勢に迫り過ぎてしまいボッタスと接触。緊急ピットインを余儀なくされるも、後方から怒涛(どとう)の追い上げを見せ瞬く間に入賞圏内まで挽回してきた。接触による5秒加算ペナルティーを受けながら5位完走。14点差でポイントリーダーの座をハミルトンに明け渡した。(Photo=Ferrari)拡大
トロロッソは予選でピエール・ガスリー14位、ブレンドン・ハートレー(写真)はQ1落ちの17位と振るわず。ハートレーはパワーユニットの交換により最後尾からスタートすることになった。レースでは、スタートでガスリーが同じフランス人のエステバン・オコンと接触してしまい0周リタイア。ハートレーは14位完走と不発に終わった。(Photo=Toro Rosso)
トロロッソは予選でピエール・ガスリー14位、ブレンドン・ハートレー(写真)はQ1落ちの17位と振るわず。ハートレーはパワーユニットの交換により最後尾からスタートすることになった。レースでは、スタートでガスリーが同じフランス人のエステバン・オコンと接触してしまい0周リタイア。ハートレーは14位完走と不発に終わった。(Photo=Toro Rosso)拡大

ベッテル、スタートが良すぎてボッタスと接触

トップ3チームのうち、メルセデスとレッドブルが中間のスーパーソフトタイヤ、フェラーリは一番やわらかいウルトラソフトを履いて、53周のレースがスタート。やわらかいタイヤで蹴り出し抜群のベッテルがターン1でボッタスに並びかけるも、前にも横にもスペースがなく、2台は接触。ベッテルもボッタスもマシンを壊し大きく順位を落とした。さらに後続ではエステバン・オコンとピエール・ガスリーらが当たったことで、オープニングラップでセーフティーカーの出番が回ってきた。

1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位サインツJr.、4位リカルド、5位マグヌッセン、6位ルクレールときて、修復&タイヤ交換のためピットに入ったベッテルは17位、ボッタス18位という変則的なオーダーで6周目にレース再開。母国GPで表彰台圏内というまたとないチャンスが到来したルノーだったが、サインツJr.は10周目にリカルドに3位の座を奪われてしまい、レッドブルが2-3を走ることとなった。

アグレッシブな追い抜きで11位まで挽回していたベッテルに、接触の原因を作ったとして5秒加算のペナルティーが言い渡されてしまう。それでもチャンピオンシップでのダメージを最小限にすべく、フェラーリのエースはオーバーテイクを繰り返し、20周目には5位まで順位を上げた。

その間、先頭のハミルトンはファステストラップを連発し、2位フェルスタッペンに5秒以上のマージンを築いてしまった。レッドブルは、26周目にフェルスタッペン、29周目にリカルドをピットに呼び、ソフトタイヤを履かせてコースに戻す。トップのハミルトンはさらに周回を重ね、34周目にソフトに替えて勝利を目指した。

マクラーレンは、フェルナンド・アロンソ(写真)16位、ストフェル・バンドールン18位(ハートレーのグリッド降格で17番グリッド)と今季初めて2台そろって予選Q1落ち。チームは、風洞で発見できない空力上の問題があることを認め、コース上で手探りでマシンをセットアップしている状態というから前途は決して明るくない。レースでも入賞圏は遠く、アロンソはリアサスペンションの異常でファイナルラップにピットに入り16位完走扱い。バンドールンは12位フィニッシュだった。なお、モータースポーツの3大レース制覇をもくろんでいるとされるアロンソは、モナコGPに加え、先週トヨタでルマン初優勝を飾った。残すはインディ500のみとなったのだが、マクラーレンの競争力がこのままなら、来季F1にとどまることを良しとするかは微妙なところかもしれない。(Photo=McLaren)
マクラーレンは、フェルナンド・アロンソ(写真)16位、ストフェル・バンドールン18位(ハートレーのグリッド降格で17番グリッド)と今季初めて2台そろって予選Q1落ち。チームは、風洞で発見できない空力上の問題があることを認め、コース上で手探りでマシンをセットアップしている状態というから前途は決して明るくない。レースでも入賞圏は遠く、アロンソはリアサスペンションの異常でファイナルラップにピットに入り16位完走扱い。バンドールンは12位フィニッシュだった。なお、モータースポーツの3大レース制覇をもくろんでいるとされるアロンソは、モナコGPに加え、先週トヨタでルマン初優勝を飾った。残すはインディ500のみとなったのだが、マクラーレンの競争力がこのままなら、来季F1にとどまることを良しとするかは微妙なところかもしれない。(Photo=McLaren)拡大
1990年を最後にF1から遠ざかっていたポールリカール。28年前のポールシッターはフェラーリ駆るナイジェル・マンセル、ウィナーはそのチームメイトだったアラン・プロストで、彼らがドライブした「フェラーリ641/2」は、甲高いエキゾーストノートを奏でた3.5リッターV12エンジンを積んでいた……というから、28年間ですっかり時代が変わってしまったという感があるのは否めない。なおこの年のレースでゴール目前までトップを快走していたのはイバン・カペリ。彼がドライブしていたマシン「レイトンハウスCG901B」を手がけたのは、エイドリアン・ニューウェイだった。現在レッドブル(写真)のデザイン・グルを務めるニューウェイは、時代を超えた逸材といえるだろう。(Photo=Red Bull Racing)
1990年を最後にF1から遠ざかっていたポールリカール。28年前のポールシッターはフェラーリ駆るナイジェル・マンセル、ウィナーはそのチームメイトだったアラン・プロストで、彼らがドライブした「フェラーリ641/2」は、甲高いエキゾーストノートを奏でた3.5リッターV12エンジンを積んでいた……というから、28年間ですっかり時代が変わってしまったという感があるのは否めない。なおこの年のレースでゴール目前までトップを快走していたのはイバン・カペリ。彼がドライブしていたマシン「レイトンハウスCG901B」を手がけたのは、エイドリアン・ニューウェイだった。現在レッドブル(写真)のデザイン・グルを務めるニューウェイは、時代を超えた逸材といえるだろう。(Photo=Red Bull Racing)拡大

ハミルトン3勝目、3強の拮抗した戦い

ピットストップが一巡すると、首位はハミルトン、5秒遅れで2位フェルスタッペン、さらに7秒差で3位リカルド。1周目にピットインしていたベッテルはそのタイヤのまま4位を走行していたが、後ろのライコネンとの間には4秒しかなく、やがてチームメイトに抜かれて名実ともに5位となった。フェラーリは41周目にベッテルに5秒ペナルティーを受けさせ、その後ウルトラソフトタイヤを装着し、5位のままレースに復帰させ、結局このポジションのままチェッカードフラッグが振られることとなった。

レース序盤から2-3を守っていたレッドブル勢に、47周目、ライコネンが襲いかかる。フレッシュなタイヤを武器にリカルドをオーバーテイク、3位に上がったライコネンは、4月末のアゼルバイジャンGP以来となる久々の表彰台を獲得したのだった。

ゴールまで数周の時点でウィリアムズのランス・ストロールのタイヤがバーストし、バーチャルセーフティーカーの指示が出るも、先頭のハミルトンにとってはどこ吹く風。フェルスタッペンを7秒差の2位に従え、スペインGP以来となる勝利を手にした。

2週間前、得意とするカナダGPでベッテルに勝利とポイントリーダーの座を奪われたばかりか、自身は5位フィニッシュと、さえなかったハミルトン。起死回生の今季3勝目で、ベッテルと勝利数で並んだ。これに2勝しているリカルドを加え、3強が拮抗(きっこう)した戦いを繰り広げている。さらに3つのチームが表彰台に上がるのは、過去6戦で5回目。次の展開がなかなか読めない、スリリングなシーズンが展開中である。

過酷な夏の3連戦の2戦目はオーストリアGP。決勝は7月1日に行われる。

(文=bg) 

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