【F1 2018 続報】第8戦フランスGP「ハミルトン3勝、表彰台に3強」
2018.06.25 自動車ニュース![]() |
2018年6月24日、フランスのサーキット・ポールリカールで行われたF1世界選手権第8戦フランスGP。10年ぶりに復活した“元祖GP”で、メルセデスとルイス・ハミルトンは再び速さを取り戻し、そして表彰台には3強が並んだ。
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久々にして新鮮なフランスGP
フランスに10年ぶり、南仏ポールリカールには28年ぶりにF1が戻ってきた。仏中部のマニクール・サーキットを舞台に行われ、フェリッペ・マッサが優勝した前回のフランスGPを戦った現役ドライバーは、20人中でたった4人。ポールリカールで最後のGPが開催された1990年より後に生まれたドライバーは10人にも及ぶというから、時代は変わったという感があるのは否めない。
今世紀に入りテスト専用コースとして近代的な設備に生まれ変わったポールリカールは、前回より2km延びて全長5.8kmに。空力性能が試される高速「シーニュ」、続く「ボーセ」といったおなじみのコーナーは健在だが、この地方特有の風にちなみ命名された1.8kmもの「ミストラル・ストレート」は、安全性の観点からシケインにより分断された。1906年に始まった「GP=グランプリ」発祥の国、フランスでの伝統のレースではあるものの、実質的にはほぼ新顔といっていいだろう。
久々にして新鮮なフランスGPの目前に入ってきたのが、「2019年レッドブル・ホンダ誕生」のニュースだった。12年間で57勝、V8エンジン最後の4年間はドライバー、コンストラクター両タイトルを連取したレッドブルとルノー。2014年に始まったV6ハイブリッド時代になると急激にパフォーマンスを落とし、以降両者の関係は悪化の一途をたどっていた。それでも、今季ダニエル・リカルドが2勝を記録するなど、ルノーが“勝てるパワーユニット”であったことは事実。一方のホンダは、4年間で最高位が4位と、発展途上ながら表彰台すらまだない。
レッドブルは今後のホンダの「伸び代」に賭けたということだろうが、その賭けは、当面、ホンダとの契約が切れる2020年末までのもの。その翌年に予定される大幅なレギュレーション変更のタイミングで、現在はタイトルスポンサーとしてチームをサポートしているアストンマーティンや、F1での成功をもくろむポルシェなど、新たなパワーユニットメーカーの参入があるかもしれないことを考えると、将来的なくら替えというプランもまだ残っているのだ。
来年のルノー陣営は、今季3強に次ぐポジションにつけている本家ルノーチームと、マクラーレンの2チーム体制となる。カスタマーが減りパワーユニットによる収益も下がるものの、身軽になった分リソースを集中させ、メルセデスやフェラーリとのギャップを縮めたいところである。
レッドブル、ルノー、ホンダ。久しくタイトルから遠ざかっているそれぞれの戦局が、これから大きく変わることは間違いないだろう。
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メルセデス、今季2回目のフロントロー独占
史上最多タイの21戦で争われる2018年のF1は、選手権始まって以来初となる3週連続開催に突入。フランス、オーストリア、イギリスと比較的近場なヨーロッパでの連戦とはいえ、GPサーカスはいまだかつて経験したことのない過酷な戦いを強いられることになる。
フランスGPウイークの序盤から好調だったのがメルセデス勢だ。時折コースの一部で小雨が降る中行われた予選に入ってもその勢いを維持し、トップ10グリッドを決めるQ3では、ルイス・ハミルトンが第5戦スペインGP以来となる今季3回目、通算75回目のポールポジションを獲得した。僚友バルテリ・ボッタスが0.118秒差で2位につけたことで、メルセデスは今年2回目、通算では52回目のフロントロー独占に成功した。
フェラーリのセバスチャン・ベッテルは、最後のアタックをまとめきれず予選3位。マックス・フェルスタッペン4位、リカルド5位とレッドブルの2台が並び、フェラーリのキミ・ライコネンは6位だった。
3強に次ぐ7位はルノーのカルロス・サインツJr.。ザウバーのルーキー、シャルル・ルクレールが大健闘し、初のQ3進出で8位につけた。ハース勢はケビン・マグヌッセン9位、ロメ・グロジャンは10位。今季まだ無得点のグロジャンは、初めての母国GPの予選でアタック中にスピン、ウオールにヒットしてタイム計測はできなかった。
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ベッテル、スタートが良すぎてボッタスと接触
トップ3チームのうち、メルセデスとレッドブルが中間のスーパーソフトタイヤ、フェラーリは一番やわらかいウルトラソフトを履いて、53周のレースがスタート。やわらかいタイヤで蹴り出し抜群のベッテルがターン1でボッタスに並びかけるも、前にも横にもスペースがなく、2台は接触。ベッテルもボッタスもマシンを壊し大きく順位を落とした。さらに後続ではエステバン・オコンとピエール・ガスリーらが当たったことで、オープニングラップでセーフティーカーの出番が回ってきた。
1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位サインツJr.、4位リカルド、5位マグヌッセン、6位ルクレールときて、修復&タイヤ交換のためピットに入ったベッテルは17位、ボッタス18位という変則的なオーダーで6周目にレース再開。母国GPで表彰台圏内というまたとないチャンスが到来したルノーだったが、サインツJr.は10周目にリカルドに3位の座を奪われてしまい、レッドブルが2-3を走ることとなった。
アグレッシブな追い抜きで11位まで挽回していたベッテルに、接触の原因を作ったとして5秒加算のペナルティーが言い渡されてしまう。それでもチャンピオンシップでのダメージを最小限にすべく、フェラーリのエースはオーバーテイクを繰り返し、20周目には5位まで順位を上げた。
その間、先頭のハミルトンはファステストラップを連発し、2位フェルスタッペンに5秒以上のマージンを築いてしまった。レッドブルは、26周目にフェルスタッペン、29周目にリカルドをピットに呼び、ソフトタイヤを履かせてコースに戻す。トップのハミルトンはさらに周回を重ね、34周目にソフトに替えて勝利を目指した。
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ハミルトン3勝目、3強の拮抗した戦い
ピットストップが一巡すると、首位はハミルトン、5秒遅れで2位フェルスタッペン、さらに7秒差で3位リカルド。1周目にピットインしていたベッテルはそのタイヤのまま4位を走行していたが、後ろのライコネンとの間には4秒しかなく、やがてチームメイトに抜かれて名実ともに5位となった。フェラーリは41周目にベッテルに5秒ペナルティーを受けさせ、その後ウルトラソフトタイヤを装着し、5位のままレースに復帰させ、結局このポジションのままチェッカードフラッグが振られることとなった。
レース序盤から2-3を守っていたレッドブル勢に、47周目、ライコネンが襲いかかる。フレッシュなタイヤを武器にリカルドをオーバーテイク、3位に上がったライコネンは、4月末のアゼルバイジャンGP以来となる久々の表彰台を獲得したのだった。
ゴールまで数周の時点でウィリアムズのランス・ストロールのタイヤがバーストし、バーチャルセーフティーカーの指示が出るも、先頭のハミルトンにとってはどこ吹く風。フェルスタッペンを7秒差の2位に従え、スペインGP以来となる勝利を手にした。
2週間前、得意とするカナダGPでベッテルに勝利とポイントリーダーの座を奪われたばかりか、自身は5位フィニッシュと、さえなかったハミルトン。起死回生の今季3勝目で、ベッテルと勝利数で並んだ。これに2勝しているリカルドを加え、3強が拮抗(きっこう)した戦いを繰り広げている。さらに3つのチームが表彰台に上がるのは、過去6戦で5回目。次の展開がなかなか読めない、スリリングなシーズンが展開中である。
過酷な夏の3連戦の2戦目はオーストリアGP。決勝は7月1日に行われる。
(文=bg)