「WRX STIタイプRA-R」が1日で完売!
スバリストの心に刺さる“RA-R”ってなんだ?
2018.07.25
デイリーコラム
「S208」よりも速い(はず)
スバルが2018年7月19日に500台の台数限定で発売したコンプリートカー「WRX STIタイプRA-R」が、なんとその日のうちに完売となった。499万8240円もの高額車が、たった1日で売り切れてしまったのだ。クルマが売れないなんていわれる昨今、なんとも景気のいい話である。スバルにとってもこの展開は予想外だったようで「うれしい悲鳴」となっているようだ。
今回のタイプRA-RはSTIの設立30周年を記念したコンプリートカーで、スポーツセダンの「WRX STI」をベースに、「軽さ」「速さ」「愉しさ」をテーマにクルマの本質である「走る・曲がる・止まる」という性能を極限まで突き詰めたというもの。
簡単に説明すると、STIによる徹底したチューニングを施されながら、ベース車から10kgの軽量化を実現。しかも、そこに2017年10月に発売されたコンプリートカー「S208」と同じ329ps仕様の「EJ20」エンジンを搭載している。つまり(パワーと車重で考えれば)S208よりも速いクルマが、約126万円(S208の標準車との比較)も安く手に入ってしまうということなのだ。「S」シリーズの歴代最強スペックを超えるモデルが、WRX STIプラス113万円のプライスを掲げているのは、お買い得と言って差しつかえないだろう。ただし、SシリーズはBMWの「M」モデルやアルピナのような存在を目指しているだけに、スパルタンなタイプRA-Rとは異なり、ラグジュアリーという視点からのクルマの作り込みがなされている。そのため見た目や装備も特別で、それが価格に反映されているのだが。
今回の即売劇については、450台限定のS208を売り切ったばかりであることやスパルタンなキャラクターであること、さらに昨今の不祥事による販売への影響があることなどを考慮すると、500台の限定台数は妥当と思えるし、あえてオーダーを抽選とはせず、先着順としたことにも納得できる。スバルに問い合わせてみると、年末の受注期限前に完売することは想定内だったが、たった1日で完売するとは思っていなかったとのことだ。
これについては、S208には450台の限定数を大きく上回る2619件もの購入希望があったのだから、そのチャンスを逃した人が飛びついたと考えるのが自然だ。しかし、もっとストレートにスバルファンの心に刺さったのは、直球勝負のスパルタンなキャラクターに加えて、伝説の“RA-R”の名を受け継いでいるという点ではないだろうか。
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STIコンプリートカーの原点にさかのぼる名前
STIことスバルテクニカインターナショナルはスバルの子会社であり、モータースポーツ活動やスポーツパーツの開発・販売を目的として、1988年4月に設立された。「レガシィ」がデビューする前年である。そのため、当時レガシィが挑戦した10万km耐久走行における最高速チャレンジにも、STIが大きく関わった。そのチャレンジャースピリットを示す「RA」(Record Attempt:記録への挑戦)の名が、レガシィのモータースポーツベース車である「レガシィRS-RA」に授けられたのだった。
レガシィRS-RAには、STIによるエンジンチューニングが施されており、事実上、STI初のコンプリートカーといえるだろう。これが伝説の始まりとなった。RAの名は、初代「インプレッサWRX」のモータースポーツベース車「タイプRA」が受け継ぐ。こうした流れを経て、ロードユースのコンプリートカーにはSTIの名が、モータースポーツベース車にはRAの名が冠されるようになる。そして2006年、“RA”にレーシングを指す“R”を加え、「走りだけをトコトン研ぎ澄ました」とうたわれた限定300台のコンプリートカー「インプレッサWRX STIスペックCタイプRA-R」が登場する。
その気高き名を復活させたのが今回の限定車であり、STIとスバリストにとって“RA-R”は特別な響きを持つフレーズなのだ。それと同時に、今回のタイプRA-Rの持つ性能が、ただ者ではないことを予感させる(売り切れだけど)。
一方で、ほんの少し前まで誰もが手にすることができた、国産のストイックなスポーツモデルのほとんどが消滅したいま、自動車ファンがそれをスバルに求めている側面もあるのではなかろうか。
確かに「日産GT-R」やレクサスの「Fシリーズ」など圧倒的なパワーを誇る高性能な国産車は存在するが、軽量、高出力エンジン、MTというピュアな高性能スポーツカーは、いまでは事実上、スバルの専売品となっている。そんなスバルも、「インプレッサWRX STI」までは軽量モデルである「スペックC」を用意していたのだが、現行のWRX STIでは消滅。それだけに、スバリストたちのタイプRA-Rへの注目が高かったのかもしれない。
では、今回買えなかった人にとって、次のチャンスはいつなのか。ズバリ……それは……分かりません。ただ、スバルに聞いてみたところ、「今回の即完売の流れを通じてタイプRA-Rのようなスパルタンなモデルのニーズがあることをあらためて認識した」とのことなので、今後、いろいろな可能性が検討されると思われる。個人的にも、Sシリーズのようなオールマイティーで高価格なクルマよりも、国産車だからこそ可能な圧倒的なパフォーマンスと現実的な価格を両立したモデルを期待したい。
(文=大音安弘/写真=スバル/編集=藤沢 勝)
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大音 安弘
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