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ランドローバー・ディスカバリーHSEラグジュアリー(ディーゼル)(4WD/8AT)

すべてに納得 2019.03.14 試乗記 櫻井 健一 どんなに代を重ねようとも、出自はオフロード1丁目1番地。ブランド設立から四駆一筋70年もの歴史を持つランドローバー自慢の4WD性能を試すために、「ディスカバリー」のディーゼルモデルで冬の信州路を走った。

静かでパワフルなディーゼルエンジン

その日の午後、長野駅の地下駐車場でカギを受け取り、スタッドレスタイヤであることを確認して急ぎクルマに乗り込んだ。せかされたワケではなかったが、駐車場出口で待機してくれているジャガー・ランドローバー・ジャパンのスタッフをあまり待たせたくなかったのと、夕暮れまである程度の距離を走って雪道での試乗と撮影をこなしたかったからだ。

2月の長野駅から目的地である白馬村までといえば、雪に覆われた山岳ルートをひた走るというイメージを持つ。しかし、試乗した日の前日、東京は春の陽気で、ここ長野では雪ではなく大雨だったという。よって白馬へのルート上に雪はなく、結果白馬村に入ってから雪道をわざわざ探すという本末転倒ぶりであった。

それはともかく、走りだしてすぐに「このクルマ、ディーゼルですよね?」と同乗のカメラマンに念のため確認した。前述のごとくバタバタと出発したので、ひょっとしてディーゼルとガソリンを間違えて受け取ったのでは、と思ったからだ。タコメーターを確認するとレッドゾーンは4200rpm付近から始まる。確かにディーゼル車だった。それほどまでにこのクルマのキャビンは静かで、街乗り程度であれば、エンジンノイズはほとんど室内に侵入してこない。振動もまったく感じられない。

試しにクルマを降りてエンジン音を確認すると、外ではディーゼル特有のノイズが聞こえた。直前に試乗したBMWの直6ディーゼルも、キャビンにおいてはノイズ・振動共にガソリンエンジンと間違うほどの静かさと快適性を感じさせてくれたが、このエンジンはそれに匹敵する。わずか1750rpmで最大トルク600Nmを発生するというスペックはだてではなく、街中では2000rpm前後でこと足りる。加速全体が力強く、ターボラグもほとんど気にならないレベルに落ち着いている。そうしたパワフルな印象は、白馬村に向かって緩やかに標高が上がる山岳ルートに入っても変わることがなかった。

2017年5月に日本で発売された5代目となる「ランドローバー・ディスカバリー」。先代とは打って変わってラウンドしたフォルムがエクステリア上の特徴となる。
2017年5月に日本で発売された5代目となる「ランドローバー・ディスカバリー」。先代とは打って変わってラウンドしたフォルムがエクステリア上の特徴となる。拡大
「ディスカバリー」は、最高出力340ps、最大トルク450Nmのスーパーチャージャー付き3リッターV6ガソリンモデルと、同258ps、同600Nmの3リッターV6ディーゼルターボをラインナップしている。今回の試乗車は後者。
「ディスカバリー」は、最高出力340ps、最大トルク450Nmのスーパーチャージャー付き3リッターV6ガソリンモデルと、同258ps、同600Nmの3リッターV6ディーゼルターボをラインナップしている。今回の試乗車は後者。拡大
Cピラーがボディー同色デザインとなるのは、初代から続く「ディスカバリー」の伝統。
Cピラーがボディー同色デザインとなるのは、初代から続く「ディスカバリー」の伝統。拡大
3列シートを標準採用する「ディスカバリー」のサイズは全長×全幅×全高=4970×2000×1895mm、ホイールベースは2925mmとなっている。
3列シートを標準採用する「ディスカバリー」のサイズは全長×全幅×全高=4970×2000×1895mm、ホイールベースは2925mmとなっている。拡大
ランドローバー ディスカバリー の中古車

クルマ任せで楽に走れる

長野駅から白馬村までの道筋は、さすがに冬季オリンピックの会場までのルートとなっていただけに十分整備されており、片側1車線ずつではあるものの道幅も問題なく確保されている。路面はほぼドライで、たまに雪解け水がたまっている程度だった。試乗車はフィンランドのノキアンタイヤ製「ハッカペリッタR2 SUV」スタッドレスタイヤを装着。しかし、白馬村に到着するまで雪上性能を発揮する出番は一切なかった。

山岳ルートではあるものの、長野駅を基準とすれば、目的地付近までの標高差は500m程度。曲がりくねった山道とは趣が違い、クルマにもドライバーにも負担が少ないストレートと大きなカーブを組み合わせたルートである。前車に追従しながら法定速度で登る山道は退屈極まりないが、その間でもディスカバリーのキャビンは快適そのもの。エンジン回転数はほとんどのシーンで2000rpmを下回り、粛々と8速ギアのまま流れに乗っている。

少々きつい上りに差し掛かり前車との距離が開いたとき、その差を詰めようと右足に軽く力を込める。ディスカバリーは、8速をキープしたまま少しだけ多めにトルクを4輪に送り、スルスルと加速。試しにキックダウンが行われる程度にアクセルを踏み込んでも、右足を戻せばすぐに8速に入る。ギアが変わったことは知れるが、変速自体はとてもスムーズ。ここまで高速道路こそ走行していないものの、3リッターV6エンジンと8段ATのマッチングの良さは申し分ない。クルマ任せでこれほど楽に走れたら、文句なしである。

白馬村のランドマークとなるジャンプ台を眺めながら脇道に入ると、おあつらえ向きに雪道だった。クルマですれ違うのがギリギリ程度の幅の道だったが、地元でも交通量が少ないのか対向車とも出会うことなく、しばしその道を進み雪上をドライブする。2mもの幅を持つディスカバリーではそのタイトさは少々つらいかとも思ったが、車幅にさえ気をつけておけば、四隅の感覚は比較的つかみやすい。座面が高く直立に近い着座姿勢によってもたらされる、ランドローバーならではのいわゆるコマンドポジションの恩恵でもある。

静かで乗り心地が良く、快適性では「レンジローバー」にも迫る印象を与えてくれた「ディスカバリー」。
静かで乗り心地が良く、快適性では「レンジローバー」にも迫る印象を与えてくれた「ディスカバリー」。拡大
3リッターV6ディーゼルターボエンジンは、最高出力258ps、最大トルク600Nmという実力を持つ。トランスミッションは8段ATを組み合わせている。
3リッターV6ディーゼルターボエンジンは、最高出力258ps、最大トルク600Nmという実力を持つ。トランスミッションは8段ATを組み合わせている。拡大
試乗車は、前後に265/50R20サイズの「ノキアン・ハッカペリッタR2 SUV」スタッドレスタイヤを装着していた。
試乗車は、前後に265/50R20サイズの「ノキアン・ハッカペリッタR2 SUV」スタッドレスタイヤを装着していた。拡大
ランドローバー各車で採用されるおなじみのダイヤル式シフトセレクターを「ディスカバリー」でも採用。試乗車はオプションの「テレインレスポンス2」を装備していた。
ランドローバー各車で採用されるおなじみのダイヤル式シフトセレクターを「ディスカバリー」でも採用。試乗車はオプションの「テレインレスポンス2」を装備していた。拡大

日常ではオートのままで

ドライ路面を2時間近く進んだ後に現れた待望の雪上走行だったが、しかしそこで期待したようなドラマは何も起きなかった。ディスカバリー自慢の「テレインレスポンス」で走行モードを選択するまでもなく、表面がシャーベット状になっていた雪道やそれを過ぎた後に再び顔をみせたドライ路面もすべて“オート”モードでカバーしてくれた。

走行状況を常にモニタリングし、最適なセッティングを施すというランドローバーの「テレインレスポンス」は、途中で路面状況が変わっても、ドライバーに走行モードが変わったと意識させないのがいい。自身のセンサー感度が良ければ、エアサスが車高を上げエンジン出力が絞られた段階で「きっと今テレインレスポンスは泥、わだちモードに入っている」と分かるのかもしれない。

しかし、自分の無神経ぶりを棚に上げて恥ずかしげもなく言うが、今回の試乗でクルマ側が“何かをやっている”ということを、強く意識できたシーンはなかった。スタッドレスタイヤを履いたディスカバリーで“オート”モードを選択している限り、冬の白馬のどこをどう走っても不安など一切感じられなかったのだ。

参考までに、ディスカバリーに用意される走行モードはオンロード/草、砂利、雪/泥、わだち/砂地/岩場の5つのモードで、試乗車はオプションとなるエンジンやトランスミッション、ディファレンシャル、エアサスペンションなどを統合制御する「テレインレスポンス2」を装備していた。このエアサスは、50~80km/hでわだちを走行する際は自動で車高を40mm、50km/h未満でオフロードや川を渡る場合は車高を最大115mmまで上昇させ、高速走行時には反対に車高を13mm下げるという。つまり、あえて雪深い道なき道や岩場に乗り込もうとするなどの“冒険”でもしない限り、リアルワールドの日常ではオートのままでほとんどのシーンをやり過ごせそうだ。

シンプルだが、使いやすさにこだわってデザインされたことが分かるインテリア。ドアトリムやダッシュボードなどの質感も、先代に比べて大幅に向上している。
シンプルだが、使いやすさにこだわってデザインされたことが分かるインテリア。ドアトリムやダッシュボードなどの質感も、先代に比べて大幅に向上している。拡大
自然と背筋がピンと伸びる、ランドローバーが“コマンドポジション”と呼ぶドライビングポジションとなる運転席。試乗車は、前席にシートヒーター&クーラーをオプションで装備していた。
自然と背筋がピンと伸びる、ランドローバーが“コマンドポジション”と呼ぶドライビングポジションとなる運転席。試乗車は、前席にシートヒーター&クーラーをオプションで装備していた。拡大
2925mmという余裕あるホイールベースを採用した恩恵で、後席空間は広々としていた。3列目シート同様この2列目シートの背もたれも、荷室にあるスイッチを用いてワンタッチで倒せる。
2925mmという余裕あるホイールベースを採用した恩恵で、後席空間は広々としていた。3列目シート同様この2列目シートの背もたれも、荷室にあるスイッチを用いてワンタッチで倒せる。拡大
ライバル車に比べれば、3列目シートまわりの空間は広いといえるが、座面は床から約30cmの高さしかないため、ゆったりとした姿勢を取りづらい。
ライバル車に比べれば、3列目シートまわりの空間は広いといえるが、座面は床から約30cmの高さしかないため、ゆったりとした姿勢を取りづらい。拡大

5代目はすべてが別次元

オフロード1丁目1番地となるランドローバー自慢の4WD走破性能とともに、ディスカバリーのセリングポイントとなる3列シートに7人の定員を収める余裕あるキャビンは、今回ぜいたくにも2人で使うことになった。それはともかく、2列目シートは1列目よりも少し座面が高い、いわゆるシアターシートを採用し、眺めの良さも特徴である。3列目シートは座面が床から約30cmの高さという設定ゆえに長時間の移動はきつそうだが、それなりの空間を確保しているのは立派である。

この2列目、3列目シートは、リアゲートを開けた荷室内左横にあるスイッチで簡単に折りたたみが可能で、ヘッドレストをいちいち取ったり外したりの作業もいらない。ワンタッチで2列目、3列目シートをたたみ、前席のみを残した最大荷室スペースを構築するのにかかる時間はわずか14秒。次の瞬間には、なんの面倒もなく2人掛けのソファ程度なら軽く飲み込んでしまいそうな広い荷室が現れる。

運転席から振り返ると、リアゲートがはるか後方に見えるミニバンのような空間を持ちながら、ディスカバリーはどんな段差を越えてもボディーをミシリともいわせない。この強靱(きょうじん)なボディーがあってこそのオフロード性能であり、乗り心地の良さなのだと感心する。

今回同行したもらったカメラマン氏は、初代ディスカバリー(ディーゼル)のオーナーだった。撮影しながら「パワーも快適性も機能性もすべてが別次元で、今のラインナップを知らなければ、これをレンジ(ローバー)だと言われれば信じちゃいそう」とひとこと。四角い道具感あふれる過去のモデルの面影はかけらもない。シュッとしたディスカバリーを受け入れるのにかつてのオーナーたちは抵抗もあろうが、この装備と安っぽさがみじんもない内外装のクオリティーを目の当たりにし、しかも相変わらずランドローバーの悪路走破性能を持つとなれば、3代目レンジローバー級の値段にも納得するしかなさそうだ。

(文=櫻井健一/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

3列目シートを使用する際の荷室スペース。リアゲートを閉めると、手前のインナーテールゲートが立ち上がる。
3列目シートを使用する際の荷室スペース。リアゲートを閉めると、手前のインナーテールゲートが立ち上がる。拡大
3列目シートを倒し、荷室スペースを拡大した様子。2列目シートも前方に倒せば、荷室容量は最大で2406リッターまで拡大できる。
3列目シートを倒し、荷室スペースを拡大した様子。2列目シートも前方に倒せば、荷室容量は最大で2406リッターまで拡大できる。拡大
荷室左サイドに設置された、2列目/3列目シートの背もたれを前方に倒すスイッチ。ヘッドレストなどを取り外すことなく、可動する全シートを14秒で倒すことができる。
荷室左サイドに設置された、2列目/3列目シートの背もたれを前方に倒すスイッチ。ヘッドレストなどを取り外すことなく、可動する全シートを14秒で倒すことができる。拡大
流れに乗って一般道を走るぶんには、1100rpm程度で粛々と回る3リッターV6ディーゼルターボエンジン。エンジンノイズはほとんどキャビンに侵入せず、静粛性を保ったままだった。
流れに乗って一般道を走るぶんには、1100rpm程度で粛々と回る3リッターV6ディーゼルターボエンジン。エンジンノイズはほとんどキャビンに侵入せず、静粛性を保ったままだった。拡大

テスト車のデータ

ランドローバー・ディスカバリーHSEラグジュアリー(ディーゼル)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×2000×1895mm
ホイールベース:2925mm
車重:2460kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/3750rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1750rpm
タイヤ:(前)265/50R20/(後)265/50R20スタッドレスタイヤ(ノキアン・ハッカペリッタR2 SUV)
燃費:11.6km/リッター(JC08モード)
価格:941万7000円/テスト車=1307万6000円
オプション装備:プレミアムメタリックペイント<ナミブオレンジ>(19万7000円)/4ゾーンエアコンディショナー(7万1000円)/自動防眩(ぼうげん)ドアミラー(4万8000円)/コンプリートダイナミックデザインパック(39万8000円)/5+2シート(29万4000円)/シートヒーター&クーラー<フロント>+シートヒーター<2列目、3列目>(12万1000円)/シートパック5(22万2000円)/360度パーキングエイド(6万円)/イオン空気清浄テクノロジー(2万円)/セキュアトラッカー(9万7000円)/プライバシーガラス(7万7000円)/ルーフレール<ブラック>(4万8000円)/自動緊急ブレーキ(2万3000円)/アクティブリアロッキングディファレンシャル(19万1000円)/ヘッドアップディスプレイ(19万6000円)/テレインレスポンス2(15万1000円)/12V電源ソケット×2(2万2000円)/リモートインテリジェントシートフォールドパック(17万2000円)/8インチリアシートエンターテインメントシステム(31万7000円)/ドライブプロパック(35万7000円)/アダプティブLEDヘッドライト(7万6000円)/アクティビティキー(6万5000円)/コールドクライメイトパック(8万円)/ウェイドセンシング(5万6000円)/パークアシスト(17万3000円)/デュアルビュータッチスクリーン(12万7000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(0)/山岳路(5)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

ランドローバー・ディスカバリーHSEラグジュアリー(ディーゼル)
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櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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