スバルのSUVはこれからこうなる!?
「スバル・ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」を検証する
2019.03.30
デイリーコラム
SUV推しは原点回帰
第89回ジュネーブモーターショーで世界初公開されたスバルのコンセプトカー「VIZIV ADRENALINE CONCEPT(ヴィジヴ アドレナリン コンセプト)」。「XV」や「フォレスター」とは違う新しいSUVの追加を示唆するものと解釈しているスバルファンは多いのだが、その真偽はともかく、このコンセプトモデルの出展により、スバルは今後もSUVに力を入れることは一段と鮮明になった。
2019年2月のスバルの国内新車販売を見ると、OEM車を除く車種の合計は9430台。そのうちXVとフォレスター、「アウトバック」が6281台で、SUVの販売比率は66%に達している。「WRX」や、かつての「レガシィ」のターボのようなスポーツモデルに魅了され続けてきたスバルファンにとっては、正直寂しさを禁じ得ない現実だが、SUVの比率が高まっているのはどのメーカーも同じだし、世界的な傾向でもあるので、SUVの充実に力を注ぐのは当然の流れだろう。
そもそも、スバルは「レオーネ」時代から乗用車で悪路走破性能を高めることに傾注していたメーカーなので、SUV色を強めることは原点回帰ともいえる。レオーネから主力車種をレガシィおよび「インプレッサ」に切り替えて以降は、「泥や土に強い」イメージからの脱却を図り、「アスファルトでも速い」を強くアピール。イメージチェンジの大成功によりブランド力を向上させたが、オフローダーからの脱却を図ってから30年たった今も、ほとんどの車種で泥濘(でいねい)路での走行性能が重視されている事実に、あらためて注目したい。細かい部分では思想のブレを感じさせるところも多々あるが、スバルが大事にしている「不易流行」のクルマづくりは、本質的にはブレることなく貫かれているのだ。
スバルの硬派な思想が伝わる
レヴォーグと現行型のインプレッサは最低地上高が比較的低くなってはいるが、燃費性能に有利なスタンバイ式のAWDは採用せず、「BRZ」を除くすべての車種で「常時四輪駆動」をアピール。一部で否定的な評価を受けるCVTを採用し続けるのも、泥濘路や雪上などの低ミュー路での発進・走破性能との相性の良さによるところが大きい。
今回発表されたヴィジヴ アドレナリン コンセプトを見て、多くのスバルファンが安心したのは、悪路走破性能重視の伝統がしっかり守られているところではないだろうか。
最低地上高やアプローチアングルなどの数値が高いレベルで確保されているのは明らかだし、派手なオーバーフェンダーも樹脂製。タイヤは「ブリヂストン・デューラー」のオールテレインタイプで、現状のフォレスターやXVよりもさらに踏み込んだオフローダー感が強められている。SUVが世界的によく売れているからといって、雰囲気重視の都市専用SUVを安直に増やすワケでは決してないといった、スバルのSUVに対する硬派な設計思想が伝わってくる。まさに不易流行を具現したコンセプトカーである。
今回、「BOLDER(ボールダー)」という言葉を新しく使い、アクティブな生活を送る層への訴求力を高めようとしているが、そういう言葉によるアピールよりも、クルマを見ただけで開発の狙いや意図が伝わるコンセプトカーだったことを歓迎したい。これが新たに展開する車種ではなく、普通に次期型XVであったとしても、軟派路線の安直仕立てなSUVへ傾くことがなさそうなところも安心材料だった。
その思想はいつか生かされる
ヴィジヴ アドレナリン コンセプトは、そんな感じで多くのスバルファンに好印象を与えたが、ここで気になるのが「どうせ市販車は大幅に異なる姿になるのでは?」という懸念だろう。
「コンセプトカーは良かったのに、市販車になると残念になる」と評価されがちなのは、スバルに限らず、ショーモデルやコンセプトカーの“あるある”のひとつになっている。見る側としても、コンセプトカーはショーモデルならではの過剰な演出が施されているものだと理解はしているつもりだが、それでも、市販車はあまりにもかけ離れすぎた姿になっているのでは? などと思ってしまうことがある。
「ヴィジヴ」シリーズは、最近のスバルが推し進めるデザイン戦略「ダイナミック×ソリッド」(躍動感と塊感の融合)をわかりやすいカタチとして表現するもので、やはり「あくまでコンセプトを示唆するもの」と解釈すべき存在であると、あらためて認識し直さねばならない。
ヴィジヴが初めて登場したのは2013年3月のジュネーブモーターショーで公開された「ヴィジヴ コンセプト」で、次世代のクロスオーバーSUVの姿を表現したものだった。翌年のジュネーブモーターショーでは「ヴィジヴ2コンセプト」に進化し、「ダイナミック×ソリッド」の思想を本格的に表現。日本カーデザインコンセプト大賞を受賞するなど、幅広い層から高い評価を受けた。跳ね上げ式&スライド式のドアなどのド派手な機構が市販車に反映されることはなかったが、水平対向エンジンのピストンをイメージさせる「コの字」を強調した前後のライトや、リアビューのフォルム、全体的なたたずまいは現行型XVと共通する部分がとても多い。今見ると、ヴィジヴ2で提案されたデザインコンセプトの多くは、意外と今の市販車に反映されていることが確認できる。ヴィジヴシリーズは、「走りは良いけどデザインに難あり」などと評価され続けてきたスバル積年の課題克服に挑戦する象徴的存在として理解したい。
ヴィジヴ アドレナリン コンセプトがイメージそのままに市販化されることはないかもしれないが、前述のとおり強くアピールされているスバルの設計思想は、市販車にもしっかり反映されるはずだ。
(文=マリオ高野/写真=佐藤靖彦、スバル/編集=関 顕也)

マリオ高野
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