ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)
未知との遭遇 2025.11.29 試乗記 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。全モデルの電動化が完了
いわゆるスーパーカーを取り巻く未来は、少なくとも10年前と比較すれば明らかに混沌(こんとん)としている。それは経済や環境などの社会情勢などもさることながら、その環境に端を発しての電動化の波が自動車業界全体を覆い、それにまつわる選択肢が驚くほど多様化しているからだ。
大枠ではフォルクスワーゲングループにいるランボルギーニも例外ではなく、電動化を積極的に自らの商品力へと転化すべく開発を重ねてきた。2021年に発表された商品展開の中期計画となる「コルタウリ」では、2024年末までに全ラインナップの電動化とともにブランニューのモデルを電気自動車(BEV)として2020年代後半までに開発するとされているが、現時点でその計画はおおむね予定どおりに進んでいる。
2023年のモントレーカーウイークで発表されたBEVのコンセプトカーである「ランザドール」の上市は2028年から2029年と1年延期されたが、SUVの「ウルスSE」もフラッグシップの「レヴエルト」も、そしてこの最も好戦的なポジションとなるだろうテメラリオも、既にプラグインハイブリッド化を完了させた。気づけばフルラインナップでxEV化を果たしていたのが最もぼーぼーに油を炊いていそうなランボルギーニという冗談のような事態が起きている。これを混沌と言わずして何と言おうか。
でも、そこはランボルギーニだ。自らの足かせのためにわざわざモーターや電池を積んで音もなく走ることだけを商品価値として訴求することはない。むしろそれは副次的な能力、オマケのようなものだ。本丸として控えるのは内燃機の不得手な領域をカバーするパワーサプライとしての役割だ。その端緒として、極めて限られた台数が頒布される、彼らが言うところの「フューオフ」、つまり極少量生産のスペチアーレにあたる「シアンFKP37」が、スーパーキャパシタを搭載したハイブリッド車として2019年にデビューしている。
内燃機関の常識を覆すスペック類
レヴエルトが「アヴェンタドール」の後継ならば、テメラリオはウラカンの後継……と、大小的な区分けで位置づければそういうことになる。が、テメラリオがこれまでのスモールランボと大きく異なるのは、アーキテクチャーをレヴエルトと共有していることだ。つまり「ガヤルド」以降続いたアウディとの関係はチャラとなり、ランボルギーニが徹頭徹尾、2モデルのエンジニアリングをつかさどることとなったわけである。ちなみにアウディは次期「ボクスター/ケイマン」とのコラボレーションを模索しているとのうわさがあり、既にインゴルシュタットナンバーのミュールもスクープされている。今年(2025年)のドイツ国際モーターショー(IAA)で現れた「コンセプトC」はその示唆だろうという見方もある。
テメラリオが搭載する4リッターV8ツインターボエンジンはランボルギーニの設計をうたう。そうはいってもグループのアセットを共有しているのではという疑念も湧くが、フラットプレーンにしてレッドゾーンは1万rpmだという。そして悠々開いたバンク間に収まるツインターボの過給圧が最大2.5barと、ことごとく内燃機の常識をひっくり返すスペックにはランボの本気をくむほかない。
そこに組み合わせられる3つのモーターは、レヴエルトと同じく前軸にベクタリング効果を担わせる2モーターが、そして8段DCTとエンジンとの間にISGを兼ねる1モーターが配される。ITの世界ではゼロスピンドル化が定着して久しいが、こちらはエンジンも含めれば4スピンドルと、回転体が満載だ。こういうスペックをみせられるにつけ、返す返すも「NSX」の人柱ぶりに思いをはせる。
リッターあたり200PSを発生する内燃機と3つのモーターからなるシステム総合出力は920PS。トルクは公表されていないが限りなく今日的な大台、つまり1000N・mに近いものとうかがえる。0-100km/h加速は2.7秒とされるが、これはレヴエルトに対してのお気づかいではなかろうか。最高速は343km/hだが、もはや出る出ないの真偽よりも、何秒でそこに到達するのかのほうが興味の対象のようにも思えてくる。
レーシングドライバーも太鼓判の速さ
その動力性能に偽りなしと納得するしかなかったのがまさに今回の試乗機会だった。場所はコーンズが運営するMAGARIGAWA CLUBのコースだ。ティルケが設計したという全長3.5kmのコースは速さを競うというよりも、クルマとドライバーのポジ&ネガをねっちりとあぶり出すような仕立てになっていて、会員がじっくりと走り込むに適したものとなっている。約800mというそのコースのストレートでテメラリオはメーター読みで270km/hを示すほどの瞬発力をみせた。それも隣にインストラクターが陣取って、安全マージンをとった指示に従っての数値である。
試乗の最後に「ウラカンGT3 EVO2」でSUPER GTを戦う坂口夏月選手の隣に同乗してのホットラップも経験したが、氏のドライブでは同じポイントでほぼ300km/hに達していた。プロにかかれば……という話もあるだろうが、坂口選手をして「いやこれマジ速いっすよ」と言わしめたくらいだ。そのスピードの乗り方から推するに、1.5km近くある富士スピードウェイのストレートならレヴエルトを超える310km/hくらいに達しても不思議ではないだろう。ともあれ異様な速さである。
その速さの質はやはりレヴエルトによく似ている。シフトアップ時のパワードロップをも穴埋めする勢いでアシストが働き、息つく間もなくオーバー200km/hゾーンにゴンゴン押し込まれていくようなスピード感はまさにxHEVのなせるところだ。加速に山谷が薄いぶん情感に欠けるところもあるが、そのぶんを有無を言わさぬ速さで納得させると、そんな印象だ。
そこにもうひとつ、加点要素となるのが新設計のV8エンジンのパフォーマンスだ。1万rpmまでしっかり回るのはもとより、トップエンド付近でも露骨なパワードロップを感じさせない。そして音の官能性もV8のスポーツユニットとしてトップクラスにいる。ターボであることを忘れるほど回して楽しみたくなるエンジンだが、うかつに全開にするとくだんの爆速ぶりがさく裂してしまうのが玉にきずだ。
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ガチのスーパースポーツ
テメラリオには現在、標準グレードに付加するかたちで「アルジェリータパッケージ」なるものが用意されている。これは専用の内外装やチタンエキゾーストなどを組み合わせることで25kg軽量化されるとともに空力特性もハイスピードドライビング向けに改善されるというもので、サーキット走行を念頭に置いたオプションだ。クローズドコースでの限られた周回でもその差は軽快感と安定性として十分に感じられたが、それによって標準グレードが見劣りするほどではない。
何より、これもウラカンからのさらなる進化点としていえることだが、テメラリオは直進性においてもハンドリングにおいてもスタビリティーが格段に高められている。わずか数周のトライで自分のようなドライバーがとんでもないスピードを出せたのは、まさにその安定性によるところが大きいだろう。このところランボは好んでブリヂストンの「ポテンザ スポーツ」を用いているが、クローズドコースでもタイヤの相性はビタッとハマっているようにうかがえた。
ドアは上に開かないし見た目も薄味だし……と、ちまたではレヴエルトに対してネガティブな印象も耳にするテメラリオだが、そんな物差しで測るクルマではない。これはランボとしても未知の領域に踏み込むガチのスーパースポーツである。その火力とダイナミクスのすさまじさを知ると、色物的な先入観は消し飛ぶことになるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=ランボルギーニ・ジャパン/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ランボルギーニ・テメラリオ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4706×1996×1201mm
ホイールベース:2658mm
車重:1690kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:800PS(588kW)/9000-9750rpm
エンジン最大トルク:730N・m(74.4kgf・m)/4000-7000rpm
フロントモーター最高出力:150PS(110kW)/3500rpm(1基あたり)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:150PS(110kW)/3500rpm
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:920PS(677kW)
システム最大トルク:--N・m(--kgf・m)
タイヤ:(前)255/35ZR20/(後)325/30ZR21(ブリヂストン・ポテンザスポーツ)
燃費:11.2リッター/100km(約8.9km/リッター、WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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