【F1 2019 続報】6冠王者のハミルトンが圧巻のレース運びで50回目のポール・トゥ・ウィン達成
2019.12.02 自動車ニュース![]() |
2019年12月1日、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1世界選手権第21戦アブダビGP。史上最多タイの21戦で争われた今シーズンの最終戦は、今年6回目のタイトルを手にしたルイス・ハミルトンの強さが際立つレースとなった。
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来季を見据えたプライドをかけた最終戦
アブダビGPのヤス・マリーナが最終戦の舞台となるのは今年で8回目。コースもランオフエリアも広々、レイアウトは凡庸とあってスリリングな展開こそ望みにくいコースであるものの、2010年には4人がタイトルを争うまれに見る激戦の末にセバスチャン・ベッテルが大逆転で初のチャンピオンを決め、また2016年にはメルセデスのニコ・ロズベルグが宿敵ルイス・ハミルトンを下し栄冠を勝ち取るなど、劇的なフィナーレも過去にはあった。
今季はファイナルレース以前に両タイトルが決着していたが、見どころはたくさんあった。まずはドライバーズランキング3位のマックス・フェルスタッペン(260点)、4位シャルル・ルクレール(249点)、そして5位ベッテル(230点)の争い。フェルスタッペンとルクレールは次世代を担う若手同士の、そしてルクレールとベッテルはフェラーリのリーダーとしてのポジションをかけての最後の戦いとなった。さらにランキング6位は、ピエール・ガスリーとカルロス・サインツJr.が95点で並び、アレクサンダー・アルボンが84点で迫るという接戦。6冠王者ルイス・ハミルトンとシーズン2位を確定していたバルテリ・ボッタスというメルセデスの2人を除けば、いずれも気が抜けない状況だった。
チーム間の争いで言えば、ランキング5位のルノーに注目が集まった。優勝経験のあるダニエル・リカルドをレッドブルから引き抜き、「3強との差を詰めたい」と期待と野望を胸に抱き迎えたワークス復帰4年目の今シーズン。3強に次ぐランキング4位が欲しかったルノーだったが、同じパワーユニットを載せたカスタマー、マクラーレンに49点も先行を許し、既に4位は夢と消えていた。また5位も安泰というわけではなく、終盤調子を上げてきていた6位のトロロッソとは8点しか差がなかった。メーカー系チームの面目を保つためにも、アブダビでしっかり上位入賞し来季につなげたいところだった。
各チームが試験的なパーツを持ち込むなど、2020年シーズンを見据えた動きも見られた今年最後のレース。世界一の頂に立てなかったものたちの、それぞれのプライドをかけた戦いがそこにはあった。
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ハミルトンが10戦ぶり5回目のポールポジション
これまでの20戦でポールポジションを獲得した回数は、メルセデス9回、フェラーリ9回、レッドブル2回。史上初めて6年連続でダブルタイトルを決めたメルセデスとしてはフェラーリに勝ち越したいところであり、さらにメルセデス内でボッタスに1回リードされていたハミルトンも同様だった。
今年最後のポール争いを制したのはハミルトン。7月末の第11戦ドイツGP以来、実に10戦ぶりとなる久々のポールは今シーズン5回目となり、自身が持つ最多ポール記録を「88回」に伸ばした。アブダビでは2年連続、5回目となる予選P1に、「今日はこの特別なマシン(W10)をドライブできる最後の土曜日だったから、ポールに戻れて本当にハッピーさ」と笑顔を見せた。
フロントローにはボッタスがつけたものの、彼のメルセデスはパワーユニット交換を受け最後尾スタートが決まっており、3番手タイムのフェルスタッペンが繰り上がって2番グリッドに。その後ろにはフェラーリの2台が並び、ルクレール3番グリッド、ベッテルは4番グリッド。この週末、赤いマシンは2台ともスピンやクラッシュを喫しており、また予選Q3の最後にはルクレールが時間切れでアタックできずに終わるなど落ち着きがなかった。
アレクサンダー・アルボンのレッドブルが5番グリッド。チーム内の予選対決で10勝10敗のイーブンだったマクラーレン勢は、ランド・ノリスが6番グリッド、カルロス・サインツJr.は8番グリッドとなり、新人ノリスが5年目のサインツJr.に勝ち越した。ルノー勢はリカルド7番グリッド、このレースを最後にチームを離れるニコ・ヒュルケンベルグは9番グリッドからダブル入賞を目指し、Q2敗退のレーシングポイント、セルジオ・ペレスが繰り上がって10番グリッドにつけた。
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ハミルトンはトップ快走 オープニングラップでルクレールが2位に
20戦して1207周を完了していた2019年のF1は、日暮れを迎えたアブダビで、残る55周のレースへと旅立っていった。
スタートでトップを守ったハミルトン。フェルスタッペンが2位をキープするも、程なくしてルクレールに抜かれ3位に落ち、4位ベッテル、5位アルボン、6位ノリス、7位サインツJr.らが続いた。通常は3周目から使用が許される可変リアウイング「DRS」だが、今回は技術的な問題が起きたことで、18周まで使用できないという珍しい事態に見舞われることとなった。
首位ハミルトンはファステストラップを更新し、2位ルクレールに対し5周で3秒、8周で5秒と順調にギャップを築いた。フェラーリは「もっと飛ばすんだ」と無線でせかすが、ルクレールは「バイブレーションがある」と訴え、2台の差は広がるばかり。一方、最後尾スタートのボッタスは8周目に入賞圏の10位まで順位を上げてきていた。
トップランナーで真っ先にタイヤ交換に踏み切ったのはフェラーリ勢。13周目にルクレール、ベッテルと連続してピットに入れたものの、ベッテルは左フロントタイヤの交換に手間取りタイムを失うことに。翌周にはレッドブルがアルボンをピットに呼びオーバーカットを狙ったが成功せず、ベッテルの後ろでコースに戻った。
スタートタイヤのミディアムで周回を続けていた1位ハミルトン、2位フェルスタッペンの後ろに、ハードに履き替えた3位ルクレール、ノンストップで走り続けていた4位ボッタス、そしてソフトからハードに換装した5位ベッテルという変則的な順位に。最初のスティントを長く取っていたフェルスタッペンは26周目、ハミルトンは翌周になってようやくタイヤを交換した。
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ハミルトンが若手を従えて完勝 記録ずくめのシーズンを締めくくる
タイヤ交換が一巡してのトップ3は、1位ハミルトン、6.7秒差で2位ルクレール、さらに4.7秒遅れて3位フェルスタッペン。2位の座を奪還したいフェルスタッペンだったが、ピットアウト後に「パワーユニットにすごいラグ(時間的なズレ)がある。何でこんな問題が起こるんだよ?」と無線で訴える事態に。レッドブルは「その問題を解決する方法はない。そのまま走れ」との指示。とはいえ、不調だと言いながらもフェルスタッペンはルクレールとの差を徐々に縮め、31周目にはDRSが使える1秒以下に接近。32周目のストレートエンド、レッドブルが火花を散らしながら鮮やかにオーバーテイクを成功させ、2位に上がるのだった。
この時点で1位ハミルトンと2位フェルスタッペンの間には15秒。3位に落ちたルクレールは瞬く間に後方の景色に埋もれ、20秒遅れて4位ベッテル、5位アルボン、6位ボッタスというオーダーでレースは中盤から後半に向かっていった。
39周目、フェラーリが2度目のピットストップをまたしても2台立て続けに行い、ルクレールはソフトに履き替え3位のまま、ベッテルはミディアムを装着し6位で復帰。その間にボッタスがアルボンをかわし、さらに残り2周でベッテルがアルボンを抜いたことで、最終的に4位ボッタス、5位ベッテル、6位アルボンという順位でチェッカードフラッグが振られた。
こうした後続のポジションを気にかけることなく、ハミルトンが自身250戦目にして50回目のポール・トゥ・ウィンを達成。一度もトップの座を失うことなく完勝したレースは19回目となり、アイルトン・セナの持つ最多記録に並んだことになる。加えてハミルトンは21戦全戦でポイントを獲得し、集めたポイントは413点と1シーズンでの最多を数えた。年間11勝は、2014年、2018年に次ぐ彼のベストタイとなる。
このレースを2位でゴールしたフェルスタッペンは、自身最高位のランキング3位でシーズン終了。最終戦で5レースぶりの表彰台となる3位だったルクレールは、先輩格ベッテルを上回るランキング4位でフェラーリ初年度を終えることとなった。
ルノーは2台ともポイント圏外だったが、コンストラクターズランキング5位の座は守りきった。サインツJr.は2ストップ作戦で10位入賞、ガスリーはスタート直後の接触で18位だったことで、サインツJr.がドライバーズランキング6位に輝いた。
フェルスタッペンとルクレール、次世代のワールドチャンピオン候補2人を従えてポディウムの頂点に立ったハミルトン。その強さが一段と際立ったレース、そしてシーズンが幕を閉じた。
(文=bg)