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祝フルモデルチェンジ! でもスバルの異端児「BRZ」に継続のメリットはあるのか?

2020.11.16 デイリーコラム マリオ高野

すっかり欠かせない存在に

ネット上ではこれまでさまざまな臆測が飛び交ってきた次期型「BRZ」。北米スバルが先日公開した「チラ見せ」に続き、日本時間の11月18日23時には、ついに新型BRZの姿が明らかになるという。

燃費規制がさらに厳しくなる時代にあって、環境性能の向上というハードルが高いスポーツカーを、スバルが継続するのはなぜか?

その理由は、BRZはスバルにとって、そして(兄弟車の)「86」はトヨタにとって、もはや“欠かせない存在”となっているからだ。

振り返れば10年ほど前、トヨタとのアライアンスとしてスバルがFRスポーツ車を発売すると聞いたときに、多くのスバルファンが耳を疑ったのを思い出す。長年にわたりAWDの優位性を強くアピールし続けてきたメーカーと、それを信じてついてきたファンにとって、FRスポーツ車は異端児でしかなかったわけで、当のスバル側も最初は大いに戸惑ったという。FRの2ドアの販売は、トヨタ側からの話がなければ、まず実現しなかった商品企画だった。

しかし、いざつくって乗ってみると、メーカーもファンも「スバルの水平対向エンジンを軸としたFRスポーツ」の素晴らしさを実感。「スポーツモデルはAWDに限る」などと凝り固まったアタマがほぐれる契機にもなった。

2020年11月14日に公開された、新型「スバルBRZ」のティザーイメージ。全体像は日本時間の同年11月18日23時に明らかにされる見込み。
2020年11月14日に公開された、新型「スバルBRZ」のティザーイメージ。全体像は日本時間の同年11月18日23時に明らかにされる見込み。拡大
新型のデビューを前に、インターネット上には、さまざまな予想イメージがアップロードされている。果たして、“当たり”はあるか?
新型のデビューを前に、インターネット上には、さまざまな予想イメージがアップロードされている。果たして、“当たり”はあるか?拡大
スバル BRZ の中古車

良いことずくめの共同開発

スバルにとっては、トヨタとの共同開発により技術面と思想面でさまざまな新しい知見を得られたのが大きい。直噴「D-4S」の最新世代の技術供与はその後のFB型エンジンの直噴化に好ましい影響を与え、新境地を開くFR車の開発が引き金のひとつとなって、エンジニアの運転スキルと評価能力を高める組織「スバルドライビングアカデミー(SDA)」が誕生している。

さらに、BRZはこれまでのスバル車にはあまり関心を示さなかった層への訴求力が高く、スバルは新しい客層にもアプローチすることができた。86/BRZの生産は軽自動車の生産ラインをリセットして新設したラインで行われたので、薄利多売の軽自動車をつくるより利益率も高くなるなど、良いことずくめだったといえる。

スバルファンもまた、これまでのどんなスバル車よりも低くマウントされた水平対向エンジンを軸とした素性の良いスポーツカーの運動性能やハンドリングに酔いしれた。また、自らの運転に対して、AWDの駆動力や安定性への依存度が高かったことに気がつくなど、メーカーもファンも意識改革が進んだのだ。

一方トヨタ側も、スバルがエンジンの搭載位置を想定していたよりさらに低くしてきたことに驚かされるなど、エンジニア同士がリスペクトし合うという、提携関係において好ましい交流が深まった事実も見逃せない。

「トヨタ86」(写真上)と「スバルBRZ」(同下)の共同開発は、関わるエンジニア、そして会社組織にも好ましい刺激を与えた。
「トヨタ86」(写真上)と「スバルBRZ」(同下)の共同開発は、関わるエンジニア、そして会社組織にも好ましい刺激を与えた。拡大
初代「BRZ」に搭載されている、ノンターボのFA20型水平対向エンジン。パワーユニットにますます高効率化が求められる今、新型のものには過給機が装着されるかどうか。
初代「BRZ」に搭載されている、ノンターボのFA20型水平対向エンジン。パワーユニットにますます高効率化が求められる今、新型のものには過給機が装着されるかどうか。拡大

新型はキープコンセプト

SUVやエコカーのような多くの台数は望めないとはいえ、86を合わせれば一定以上の販売台数が今後も見込める。200万円台半ばから買えるFRスポーツカーは世界的にも極めてまれな存在で、GRブランドを中心にスポーツイメージを高めたいトヨタとしてもこれをやめる手はない。

スバルもトヨタも「モータースポーツで磨いた走り」を大事な付加価値としているので、手ごろな価格・サイズ感のスポーツカーはラインナップに必要不可欠。国内レーストップカテゴリーのSUPER GTに参戦するスバルとしても、FRのスポーツモデルは欠かせない存在となった。

そんなことを振り返ると、トヨタとスバルが86/BRZの開発を継続するのは極めて自然な流れだといえる。11月18日の段階でどこまで公表されるのかはわからないが、基本的にはキープコンセプトだ。

今の時代にあっては、比較的、軽量コンパクト。圧倒的なパフォーマンスよりもフィーリング面を重視した、誰でも気軽に運転の楽しさが満喫できるスポーツカーとして、性能と品質が底上げされる。旧型(初代)の開発時にも、例えばエンジンでは「高出力、高回転、低燃費」などと背反する多項目の要件をハイレベルで満たすべくスバル側は苦労を重ねたというが、新型でもその方向性で性能が高められたのは間違いない。

モータースポーツの世界では、2012年以来、9シーズンにわたってSUPER GT選手権(GT300クラス)で戦ってきた「BRZ」。兄弟車「86」も交えたワンメイクレース「TOYOYA GAZOO Racing 86/BRZ Race」も2013年から継続開催されてきた。
モータースポーツの世界では、2012年以来、9シーズンにわたってSUPER GT選手権(GT300クラス)で戦ってきた「BRZ」。兄弟車「86」も交えたワンメイクレース「TOYOYA GAZOO Racing 86/BRZ Race」も2013年から継続開催されてきた。拡大
スバルのスポーツモデルといえば、STI仕様は外せない。新型「BRZ」にも設定されることは、まず間違いないと思われる。なお写真のシートは、旧型(初代)のもの。
スバルのスポーツモデルといえば、STI仕様は外せない。新型「BRZ」にも設定されることは、まず間違いないと思われる。なお写真のシートは、旧型(初代)のもの。拡大

ユーザーのマインドも様変わり

スポーツカーということで、旧型ではスルーされた運転支援システム系のデバイスについても、時代の要請に応えざるを得ないご時世であり、多少は踏み込んだ仕様となることが想像される。もちろんスバルが得意としている受動安全性(衝突安全性)や動的な質感の面でも、大幅な底上げがなされるはずだ。

10年前は多くの人が戸惑ったスバル製FRスポーツカー。今ではスバルのトップスポーツモデルである「WRX」と同程度に、新型のデビューに心が躍り、胸がときめくファンが多いことだろう。

かつては「スバルのスポーツモデルはAWDに限る!」とかたくなに信じていた守旧派スバルファンである筆者も、今ではすっかり「スバル製FRスポーツ」が好きになった。旧型の中古車を買ってチューニングを楽しむことを計画中なのだが、新型の内容次第では、その計画が大いに揺らぐかもしれない(笑)!

(文=マリオ高野/写真=スバル/編集=関 顕也)

運転支援機能の強化が求められる今、スバル独自のステレオカメラを使った「アイサイト」(写真)が搭載される可能性もありそうだ。
運転支援機能の強化が求められる今、スバル独自のステレオカメラを使った「アイサイト」(写真)が搭載される可能性もありそうだ。拡大
「BRZ」の車名は、ボクサーエンジン(B)とリアドライブ(R)、そして究極を示すZに由来する。新型もその名を継ぐ以上、水平対向エンジンで後輪を駆動しつつ、より高次元な走りを味わわせてくれることだろう。
「BRZ」の車名は、ボクサーエンジン(B)とリアドライブ(R)、そして究極を示すZに由来する。新型もその名を継ぐ以上、水平対向エンジンで後輪を駆動しつつ、より高次元な走りを味わわせてくれることだろう。拡大
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