加藤隆雄CEOらが語る 三菱自動車の今後と「エクリプス クロス」

2020.12.04 自動車ニュース webCG 編集部
2020年12月4日に発売された改良型「三菱エクリプス クロス」。
2020年12月4日に発売された改良型「三菱エクリプス クロス」。拡大

三菱自動車は2020年12月4日、同日に発売した改良型「三菱エクリプス クロス」および同社の今後について、加藤隆雄CEOおよび技術開発を担当する長岡 宏Co-COOが報道陣の質問に答える形で説明した。

三菱自動車の加藤隆雄CEO。販売現場の意見を重く見ているという姿勢が印象的だった。
三菱自動車の加藤隆雄CEO。販売現場の意見を重く見ているという姿勢が印象的だった。拡大
長岡 宏Co-COO。三菱自動車の置かれた現状を踏まえたうえで、できることから着々とやっていくという意思を示した。
長岡 宏Co-COO。三菱自動車の置かれた現状を踏まえたうえで、できることから着々とやっていくという意思を示した。拡大

7月に2022年までの新中期経営計画「Small but Beautiful」を発表し、パジェロ製造における生産停止といった構造改革やASEAN地域への経営資源の集中投入などにより、2022年度に営業利益500億円、2025年度に営業利益率6.0%という目標を掲げた三菱自動車。改良型エクリプス クロスはこの計画に基づく新製品の第1弾である。

――まずは改良型にかける期待のほどを教えてください。

加藤CEO:三菱自動車が新型コロナウイルスによる販売落ち込みからの回復で、他社よりも遅れているのは間違いありません。これには低価格でのロット販売や赤字のフリート販売をやめたという事情もありますが、いずれにしても全体に台数が減少しているのは事実です。

実はこのエクリプス クロスのプラグインハイブリッド車(PHEV)以降は、「アウトランダー」の後継およびそのPHEVの投入に加えて、ASEANで好調な「エクスパンダ―」のビッグマイナーチェンジも控えています。こうした流れの中で「先頭バッター」になるのがエクリプス クロスであり、これをきっかけに台数の面でも上昇に転じたいと考えております。幸い、先行受注は好調であり、目標をオーバーする、月販目標(1000台)を上回る注文をいただきました。その8割ほどをPHEVが占めており、非常に手応えを感じています。

――エクリプス クロスはグローバルでは2017年のデビューですが、このタイミングでのPHEV投入となったのはなぜですか。

長岡Co-COO:モデルライフの中でラインナップを拡充していくという、プラン通りの行動です。ディーゼルモデルと置き換える形になったのは、環境対応という側面もありますが、大トルクによる走りというところで、PHEVと商品性がかぶるところがあるからです。似た商品を2つ持つという余裕はないので、整理することになりました。当面、国内でディーゼルモデルを新規投入する予定はありませんが、海外で販売しているフレームシャシーのクルマ向けには継続採用していきますし、開発も続けています。

――似た商品というと、サイズが拡大したエクリプス クロスのPHEVと「アウトランダーPHEV」は、極めて近い商品のように感じます。どのように売り分けていくのでしょうか。

長岡Co-COO:アウトランダーPHEVはファミリー向けの商品としてこれまで通りに販売していきます。一方のエクリプス クロスはもう少しスポーティーなモデルとして訴求します。子育てを終えた層の方々や、活発な人生を送っている方など、新たなユーザーに乗っていただきたいです。エクリプス クロスのほうが価格も抑えてあります。

――先日、日本政府も2030年代に純ガソリン車販売禁止を目指す動きがあるという報道がありました。これを受けて、プラグインハイブリッドシステムのさらなる小型車への展開などは考えているのでしょうか。

長岡Co-COO:実は三菱のプラグインハイブリッドシステムは、次のアウトランダーに向けて刷新を図っているところです。コストのことがあるのでそのまま小型車に……というのは難しいかもしれませんが、これをベースにハイブリッド車をつくるというプランはあります。搭載するバッテリーが少なく、安く提供できるので、ASEAN地域でも展開できるでしょう。電動パワートレインの多様化ということでは、われわれのアライアンスの中で日産とルノーが電気自動車(EV)を持っています。こうした枠組みの中で、三菱はPHEVをしっかりとやっていきます。

――EVの展開について詳しく教えてください。

加藤CEO:EVで利益が出ているメーカーはほとんどないというのが現状です。テスラがようやく黒字になったというところで、われわれが単独でEVを手がけるというのは現実的ではありません。今後投入予定の軽のEVは、日産と一緒だからできるというのが正直なところです。

長岡Co-COO:以前は2020年ごろに大容量バッテリーが実用化し、kWhあたり1万円を切るといわれていたが、そうはなっていないのが現状です。全固体電池を実現したというメーカーもあるが、大きくて重い自動車を動かすためのバッテリーとしてはまだまだです。商業ベースに乗るには5年でも足りないでしょう。

――国内市場に向けての意気込みを教えてください。

加藤CEO:一連の不祥事のあと、私どもに元気が足りなかった、前向きな気持ちが足りなかったんじゃないかと考えております。今は全国の販売会社を回って、経営者や現場スタッフの声を聞いて歩いています。なかには「せっかくPHEVをつくったのだからもっと宣伝してほしい」という声がありまして、今度のエクリプス クロスはそうした意見を反映したうえでプロモーションを展開しています。テレビやインターネット、SNSなどですね。

しかしながら、大事なのは何といっても商品です。三菱らしいクルマを投入していきたいわけですが、現状のモデルラインナップは決してバランスが取れているとは思っていません。クルマはあるのに売れていないわけですから。ラインナップを整理し、それから魅力的な商品を出すことによって販売会社の皆さんが元気を出るようにしていきたい。そうしたクルマの構想は練っています。それで国内でのブランド力を回復させていけたらと考えております。

――ありがとうございました。

 

(webCG)

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