【F1 2021】荒れたレースでフェルスタッペン勝利 ハミルトンは命拾い
2021.04.19 自動車ニュース![]() |
2021年4月18日、イタリアのイモラにあるアウトドローモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリで行われたF1世界選手権第2戦エミリア・ロマーニャGP。レース直前に降った雨により、スピンやクラッシュが続出し、セーフティーカーに赤旗中断と荒れた展開に。そんな難しい状況で、開幕戦に続き2人のトップドライバーがしのぎを削った。
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ハイレーキ対ローレーキ論争と来季の新レース発表
開幕戦バーレーンGPでは、速さで勝るレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンに、メルセデスのルイス・ハミルトンがタイヤ交換作戦で勝負を仕掛けてまずは1勝を奪った。レッドブルの躍進、メルセデスのつまずきというプレシーズンテストの戦力図そのまま、コース上で2強チームが手に汗握る接戦を繰り広げたのだが、その裏では、2021年レギュレーションの影響を巡る“舌戦”もあった。
今季型マシンは原則前年のキャリーオーバーとなるが、ダウンフォース削減のためマシン後端に変更が加えられた。この変更がマシンコンセプトを異にするチーム間で明暗を分けたのではないかとする発言が、チーム首脳やドライバーから聞かれたのだ。いわく、このルール変更はマシンフロアの前傾角が大きめの「ハイレーキ」マシンに有利に働き、傾斜の緩い「ローレーキ」勢にはハンディになっていると。
ハイレーキの代表格はレッドブル、ローレーキはメルセデスとアストンマーティン。特に強い不満をあらわにするのは、バーレーンGPでも中位に埋もれていたアストンマーティンで、オットマー・サフナウアー代表は「ルール変更はローレーキに不利。ハイレーキより1秒遅くなった」と主張、そのルール改定のプロセスにも疑義を唱えていたほどだった。しかし、ルールは全チーム共通であり、決まった以上はそれに従うしかないのも事実。どちらの利になるかも結果論でしかない。今季はマシン開発が制限されていることもあり、そうした焦りもあっての発言なのかもしれない。
かような話題に始まった2021年シーズンだが、早くも来季の新レースのニュースが舞い込んできた。かねてうわさになっていた「マイアミGP」の開催が4月18日に発表されたのだ。NFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地、ハードロック・スタジアム周辺に新設される5.41kmのコースが舞台。市場開拓に野心を燃やすF1は、オースティンに加えアメリカでの年2回開催に踏み切ることとなった。
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上位3台の差はわずか0.087秒 ポールはハミルトン
当初4月に予定されていた中国GPがパンデミックを理由に延期となり、空いた日程を埋めるかたちでエミリア・ロマーニャGPが復活。昨年14年ぶりにF1に戻ったイモラでのレースが2年連続で開かれることになった。
コース幅が狭く、間近に壁とグラベルが待ち構えるこのオールドコースで、アルファタウリの角田裕毅が手痛いミスをしでかした。予選Q1アタック中に「バリアンテ・アルタ」で挙動を乱しリアをしたたかにウォールにヒット。角田は最後尾スタートとなってしまった。
ポール争いは、開幕戦よりも走りに安定感が加わったメルセデス勢と、レッドブル勢の一騎打ち。ハミルトンが最速タイムをたたき出し、彼の持つ歴代最多ポール記録はいよいよ「99」と大台目前となった。予選2位はレッドブルの2台だが、セルジオ・ペレスが自身初のフロントロースタートとなる2位、ミスでタイムを失ったフェルスタッペンは3位だった。3台が0.087秒の中にひしめく、まさに激戦だった。
2戦連続でフェラーリのシャルル・ルクレールが4位、同じく開幕戦に続いてアルファタウリのピエール・ガスリーが5位。マクラーレン勢は、ダニエル・リカルドが6位となるも、ランド・ノリスは、トラックリミットを越えたことで最速タイム取り消しとなり、3位を逃し7位となった。メルセデスのバルテリ・ボッタスはリアの挙動に苦しみ8位、アルピーヌのエステバン・オコン9位、アストンマーティンのランス・ストロールは10位で予選を終えた。
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レース直前に雨! スタートでフェルスタッペンがトップに
レース直前に降った局地的な雨で、4.9kmのコースは半分がウエット、半分はドライという難しいコンディションに。多くが浅溝のインターミディエイトを履いて、63周のレースがスタートした。フェルスタッペンがハミルトンに並びかけ、ぬれた路面の「タンブレロ」でレッドブルが前、押し出されたかっこうのハミルトンは縁石に乗り上げフロントウイングのエンドプレートにダメージを負いながら2位、ルクレール3位、ペレス4位、リカルドは5位に上がり、最後尾の角田は14位までジャンプアップした。
オープニングラップ中にニコラス・ラティフィのウィリアムズがクラッシュしたことで最初のセーフティーカー。この徐行中に4位ペレスがコースオフしたのだが、コースに戻った後に抜かれたマシンを抜き返したことで10秒のストップ・ゴーペナルティーを受けることになった。その後4位まで挽回するも再びスピンを喫し、予選2位から結果11位完走という残念な週末となってしまった。
7周目にレースが再開すると、トップのフェルスタッペンは1周で2位ハミルトンに3.3秒ものリードを築き、ファステストラップで逃げにかかった。一方、手負いのハミルトンも10周を過ぎてようやく最速タイムを連発し反撃開始。2台の丁々発止の戦いが序盤から繰り広げられ、やがてその差は27周目に1.3秒まで詰まった。
28周目、フェルスタッペンが最初に動き、ドライのミディアムタイヤに変更。翌周ハミルトンが同じ動きをとると、引き続きレッドブルが前、メルセデスは5秒差で2位という間隔となった。
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ハミルトン痛恨のコースオフ それを救ったのは……
タイヤ交換後も追撃を止めなかったハミルトンだったが、周回遅れを処理中に痛恨のコースオフ、壁にマシンを軽く当ててフロントウイングを壊してしまった。泥にまみれたメルセデスはコースに復帰できたものの、これでハミルトンのレースもおしまいか、と思われた。その直後、もう1台のメルセデス、ボッタスがウィリアムズのジョージ・ラッセルと接触し大クラッシュ、2度目のセーフティーカーの後に赤旗中断となった。自らのミスにショックを隠しきれないハミルトンにとって、この約30分間の中断は、リセットと挽回へのチャンスをもたらした。
35周目にローリングスタートでレース再開。1位フェルスタッペン、2位ルクレール、3位ノリス、4位ペレス、そしてハミルトンは9位、角田は10位から後半戦に突入した。すぐさまノリスが2位、ハミルトンは8位に上がる一方、角田はスピンして15位まで脱落。その後アルファタウリのルーキーは、トラックリミットを度々越してペナルティーを受けながら、自身2戦目を12位で終えることになる。
失いかけたレースを赤旗で取り戻したハミルトンは、ストロールをかわして6位、リカルドを抜き5位、そして50周目にサインツJr.、55周目にはルクレールをも抜き、表彰台圏内に復活した。そして60周目、ついにノリスもパスしたハミルトンは2位に返り咲くのだった。
その間22秒ものリードを築いた首位フェルスタッペンが堂々とチェッカードフラッグ。スタートでのトップ奪取から集中を切らさなかったレッドブルのエースが、開幕戦で取り損ねた今季初Vを収めた瞬間だった。
運を味方につけ2位でゴールしたハミルトンがファステストラップを記録したことで、チャンピオンシップではハミルトンが1点だけリードを保つことができたが、2戦連続の2人の接戦に、シーズンの今後への期待は高まるばかりである。
次戦は、イモラに続き2年連続開催となるポルティマオでのポルトガルGP。決勝は5月2日に行われる。
(文=bg)