ランドローバー・レンジローバー スポーツHSEダイナミックD300(4WD/8AT)
大人の最適解 2021.09.13 試乗記 ランドローバーの新しい3リッター直6ディーゼルを搭載した「レンジローバー スポーツ」に試乗。ブラッシュアップされた内外装の仕上がりや、同じ48Vマイルドハイブリッド機構を組み込んだ直6ガソリンエンジン車との違いを確かめた。環境性能に優れる新ディーゼルエンジン
レンジローバー スポーツのラインナップは幅広い。パワーユニットが4種類あってそれぞれにいくつかのグレードがあり、さらに期間限定の特別モデルが加わる。高価格のプレミアムSUVとしては、かなり選択肢が多い。ガソリンエンジンは2リッター直4、3リッター直6、5リッターV8があり、2リッター版はプラグインハイブリッドシステムを持つ。2020年9月から加わったのが、3リッター直6ディーゼルターボに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたモデルだ。
以前のV6から置き換えられたもので、燃費を含む環境性能に優れているという。「ディスカバリー」や「ディフェンダー」にも採用されていて、新世代のディーゼルエンジンとして期待されていることがわかる。数年前と比べてディーゼルにクリーンイメージは低下してしまったが、CO2排出量では今もアドバンテージを維持している。ランドローバーによると、このディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べてCO2排出量が20〜25%少ない。NOxについても、2004年から2016年にかけて90%低減したそうだ。
価格帯からすると、ディーゼル搭載車はエントリーモデルということになるだろう。最廉価版にはレンジローバー スポーツのなかで唯一1000万円を下回るプライスタグが付けられている。試乗したのは、装備が充実した「HSEダイナミック」。車両価格1143万円に388万1000円のオプションがプラスされている。
運転席に座れば、その価格が納得できるものだと感じさせられる。シートやダッシュボード、ドアトリムのつくりは上質で、高級車らしさを存分に発揮している。小手先で派手さを追求するのではなく、素材のよさを生かすという本物感が老舗の持ち味だ。重厚さとスポーティーな軽みが絶妙にブレンドされている。
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室内デザインはクラシカル
クラシカルな雰囲気が漂うのは、センターモニターの形状が一因だろう。本革で覆われたダッシュボードに、横型の控えめなディスプレイが遠慮がちに収まっている。大型化が著しいなかにあって、この謙虚なたたずまいは貴重だ。ナビとして使う場合は、正直に言うと使いづらい。最近は縦型モニターを採用するモデルも多く、マップの表示を見やすくするのがトレンド。レンジローバー スポーツは、便利さよりも見た目の上品さを優先しているようにみえる。
モニターの下にもタッチ式のコントロールパネルが配置されている。各種の設定を行うことができるが、デフォルトで示されているのはエアコンの調整画面。なんとも贅沢(ぜいたく)なしつらえだ。2つを合体させて大型モニターにすることもできるかもしれないが、軽はずみに流行に乗らないのが老舗の美学である。
インテリアがオールドスクールでも、機構は最新の技術が取り入れられている。48Vのモーターは発進時にもアシストしているようで、レスポンスよく大柄な車体を静かに前へ押し出していく。極微低速では少しギクシャクすることもあったが、街乗りではおおむねスムーズな動きだ。最高出力は300PSで2.5tに迫る車重にはそれほど大きな数字ではないものの、ディーゼルらしく1500rpmから650N・mという豊かなトルクを提供してくれる。
電動化のメリットもあるのだろうが、この直6ディーゼルターボエンジン自体が素晴らしい。最近ではディーゼルエンジンもかつてのようなガサツなタイプは少なく、ガソリンエンジンに匹敵する洗練度を持つようになっている。それでも、レンジローバー スポーツに搭載されたこの3リッター直6には感心せざるを得なかった。なめらかなフィールが群を抜いているのだ。
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ワインディングロードで真価を発揮
アクセルに対する回転の上昇はとてもスムーズだ。街なかで乗っているぶんには車内は静かそのもの。加速を始めると耳に心地よい快音が響き、スポーティーな気分がかきたてられる。勇ましいというほどではなく、抑制された上品なサウンドだ。高速道路の巡航ではやはり静粛性は保たれ、室内は快適な音響空間になる。アダプティブクルーズコントロールの操作スイッチの出来がよく、使い勝手がよかったことも記しておくべきだろう。
高速道路を使った長距離移動にも向いていると思うが、このクルマが真価を発揮するのはワインディングロードである。大きくて重いボディーは曲がりくねった山道では不利なはずだが、水を得た魚のように活発な走りを見せる。車重が軽くなったかのように感じるほどの機敏な動きだ。スポーティーであることをうたう大型プレミアムSUVは多いが、そのすべてが本当にスポーツ走行に向いているとは限らない。レンジローバー スポーツは、その名に恥じないドライバーズカーである。
千葉真一氏が50年ほど前にCMで言っていたフレーズにならえば、レンジローバー スポーツは“足のいいやつ”。エアサスペンションを装備し、電子制御がてんこ盛りだ。毎秒500回以上クルマの動きをモニターしてダンパーを変化させる「アダプティブダイナミクス」、コーナリング時に4輪のトルクを調整する「アクティブディファレンシャル&トルクベクタリングバイブレーキ」などが知らないうちに働いていて、安定したハンドリングを実現している。
今回はオンロードのみの試乗だったが、もちろん卓越したオフロード性能を併せ持つ。最大渡河水深は850mmを確保しており、ゲリラ豪雨でも安心だ。エンジンやギアボックス、シャシーなどを自動調整するテレインレスポンスは、センターコンソールのスイッチで操作。通常はオートを選んでおけばいい。「スピードロワーリングシステム」が走行状態に合わせて車高を変化させ、105km/hを超えると自動的に車高が15mm下がる。停車時にスイッチで50mm車高を下げることもできて、荷物の積み下ろしなどには便利である。
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スポーティーだが節度もある
試乗車にはオプションで3列目シートが装備されていた。荷室に装備されたスイッチを使い、電動で格納と展開ができる便利な機構である。ただ、3列目は居住空間としては十分な環境とはなっていない。よほどの事情があるのでなければ、27万4000円を追加で払う必要はないのではないか。レンジローバー スポーツはスクエアな「レンジローバー」と違ってルーフが後方に向かって下降しており、3列目の乗員にはつらい形状なのだ。荷室として使えば広大で、623リッターが確保されている。
以前、3リッター直6ガソリンエンジンを搭載するモデルに乗ったことがある。400PSというパワーを生かした胸のすく走りは感動的だった。ドライバーの意思に素早く反応する動きに心を奪われたが、このディーゼルエンジンも引けを取らない魅力がある。ガソリンモデルが若々しさと荒々しさを前面に出していたのに対し、ディーゼルモデルは節度を保った大人っぽいマナーだ。
ガソリンモデルは乗り心地や静粛性に関してはあまり優先されていない印象があった。完全にドライバー中心のクルマだったのだ。ディーゼルモデルなら、ほかの席に座る乗員から文句が出ることはないだろう。燃費に関しては圧倒的な優位性がある。
ジャガー・ランドローバーが2021年2月に発表した新グローバル戦略「Reimagine(リマジネ)」は、2024年にランドローバー初となるEVが登場するとしている。2026年からはディーゼルモデルを段階的に廃止していく予定だという。モーターのみで走る魅力的なSUVが市場に投入されることを期待したいが、それはまだ先のこと。現時点では、ディーゼルモデルがバランスのとれた最適解なのかもしれない。
(文=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー スポーツHSEダイナミックD300
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4855×1985×1800mm
ホイールベース:2920mm
車重:2430kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:300PS(221kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/1500-2500rpm
モーター最高出力:24.5PS(18kW)/1万rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/1500rpm
タイヤ:(前)275/45R21 110Y M+S/(後)275/45R21 110Y M+S(ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン)
燃費:10.3km/リッター(WLTCモード)
価格:1143万円/テスト車=1531万1000円
オプション装備:ボディーカラー<フィレンツェレッド>(0円)/パネル<シャドーゼブラノ>(6万5000円)/4ゾーンクライメートコントロール(24万円)/空気イオン化テクノロジー<PM2.5フィルター付き>(3万5000円)/20ウェイフロントシート<メモリー、ウイングドヘッドレスト付き>(34万円)/2座式3列目シート(27万4000円)/フロントシート<ヒーター&クーラー付き>+2列目シート<ヒーター付き>(21万7000円)/ヘッドアップディスプレイ(19万3000円)/固定式パノラミックルーフ(27万7000円)/フロントセンターコンソールクーラーボックス(5万7000円)/ピクセルレーザーLEDヘッドライト<シグネチャーDRL付き>(44万9000円)/アクティビティーキー(6万2000円)/エンターテインメントパック(32万1000円)/オン&オフロードパック(60万4000円)/ウェイドセンシング(5万5000円)/カーペットマット(1万8000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2517km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:497.1km
使用燃料:50.8リッター(軽油)
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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