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レンジローバー・スポーツSVエディションツー(4WD/8AT)

膝立ちで攻める 2025.06.02 試乗記 今尾 直樹 「レンジローバー・スポーツSVエディションツー」をドライブ。強力なV8エンジンや専用の足まわりで武装し、サーキット走行まで見据えたハイパフォーマンスモデルだ。“レンジローバー史上最速”の実力を一般道と高速道路で味わってみた。
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幕末の志士のような、在りし日の花街のような

レンジローバー・スポーツSVエディションツーはめちゃんこよかった。2023年6月に導入が発表された「SVエディションワン」に続く第2弾となるこれは、2025年限定の特別仕様で、新色のマットフィニッシュの「ブルーネブラ」をイメージカラーとする。このほかに3色あるけれど、このブルーネブラがいい! 蓬髪(ほうはつ)の坂本龍馬とか、あるいは洋装のクールな二枚目、土方歳三とかを思わせる……というのは筆者の勝手なイメージですけれど、独特のすごみ、殺気みたいなものを放っている。

筆者の個人的な感想ながら、ドアを開けると現れる、明るいグレーと黒檀(こくたん)の、高級そうなレザー内装とのコントラストがまた、いいなぁ。と思わせる。外見はくすんだ藍色で、ちょっとホコリっぽくて薄汚れたような感じ(汚れているわけではない)。中は対照的にシミひとつない清潔さで、浮世離れしている。さながら『べらぼう』の舞台の吉原か。水墨画みたいな白と黒なのに色気がある。行ったことないけど、行ってみたかったなぁ。と、だれもが思う世界が構築されている。わびさび。ということばも浮かんでくる。

エディションワンとか、エディションツーとか、毎年のように特別仕様を少量販売する。というのは、高級既製服、プレタポルテみたいな、これぞ富裕層ビジネスであろうけれど、それにしても趣味がいい。庶民はうらやましいぞ。

でまた、運転してみると、べらぼうに強烈至極で、レンジローバーというブランドの筆者の脳内でのポジションの書き換えを迫られる。5リッターV8スーパーチャージド、575PSの高性能版である先代「レンジローバー・スポーツSVR」の後継、という位置づけだとしても、そのSVRの存在を筆者がすっかり忘れていたこともある。

「レンジローバー・スポーツSV」はJLRで限定車や特装車両、ビスポークモデル等の開発・製作を担当する専任部門のSVが手がけたトップパフォーマンスモデルである。
「レンジローバー・スポーツSV」はJLRで限定車や特装車両、ビスポークモデル等の開発・製作を担当する専任部門のSVが手がけたトップパフォーマンスモデルである。拡大
「エディションツー」の名のとおり「SV」の国内導入は2度目。2023年の「エディションワン」は招待客のみ、国内では75台限定販売だったが、ツーは2025年モデル限定とされており、台数の制限はないようだ。
「エディションツー」の名のとおり「SV」の国内導入は2度目。2023年の「エディションワン」は招待客のみ、国内では75台限定販売だったが、ツーは2025年モデル限定とされており、台数の制限はないようだ。拡大
バンパーやグリルは「SV」専用デザインだが、見た目でのアピールはごく控えめ。ボディー各所のカーボンパーツはこの試乗車のサテン仕上げのほか、グロスカーボン仕上げとフォージドカーボン仕上げも選べる。
バンパーやグリルは「SV」専用デザインだが、見た目でのアピールはごく控えめ。ボディー各所のカーボンパーツはこの試乗車のサテン仕上げのほか、グロスカーボン仕上げとフォージドカーボン仕上げも選べる。拡大
カーボンリップスポイラーには「SV EDITION TWO」のロゴがあしらわれる。
カーボンリップスポイラーには「SV EDITION TWO」のロゴがあしらわれる。拡大
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拍子抜けする(?)乗り心地

レンジローバー・スポーツSVのエンジンには、4.4リッターV8ツインターボ、BMW M謹製のそれが選ばれている。よくぞBMWが許したものだと思うのは、ご本家の「X5 Mコンペティション」を上回る高性能を発揮していることだ。あちらが最高出力625PSなのに対して、こちらは635PS! あちらが0-100km/h加速3.9秒なのに対して、こちらは3.8秒!! あちらが車両価格2078万円、こちらは2474万円だ! べらぼうめ(というのは勢いで書いただけです)。

試乗車にはさらに23インチのカーボンホイール(112万円)に、カーボンセラミックブレーキ(146万1000円)等、461万3224円ものオプションが組み込まれている。総額3000万円級のスーパーSUV。それがレンジローバー・スポーツSVなのだ。

センターコンソールの丸いボタンを押してエンジンをスタートさせると、グオオンッとうなりをあげる。ホイールは前述したように23インチ。タイヤは前285/40、後ろは305/35の超極太偏平スーパーカーサイズである。恐る恐る走り始める。すると、想像するより乗り心地がいい。もちろん硬めではある。でも、硬くはない。23インチもある大径ホイールなのに、カーボン製ということで、これを装着するだけで車重が20kg軽くなるという。カーボンセラミックブレーキもバネ下重量の軽減に貢献しているはずだし、ミシュランのオールシーズンタイヤも路面とのコンタクトがうまいのかもしれない。

ただ者ではないモノに乗っている感じはする。全長×全幅×全高=4970×2025×1815mm、ホイールベース3000mmの巨体、ということもある。着座位置も当然高く、都バスの座っている乗客と、こちらの目の高さが同じくらいのところにある。

4.4 リッターV8ツインターボエンジンは最高出力635PS/6000-7000rpm、最大トルク750N・m/1800-5855rpmを発生。極低回転域ではマイルドハイブリッドのアシストが加わるため、踏めば間髪入れずに豊かなトルクが味わえる。
4.4 リッターV8ツインターボエンジンは最高出力635PS/6000-7000rpm、最大トルク750N・m/1800-5855rpmを発生。極低回転域ではマイルドハイブリッドのアシストが加わるため、踏めば間髪入れずに豊かなトルクが味わえる。拡大
BMW M謹製のV8ユニットはカーボン製のエンジンカバーで覆われる。
BMW M謹製のV8ユニットはカーボン製のエンジンカバーで覆われる。拡大
カーボン製エンジンカバーを覆うボンネットもまたカーボン製。裏面まで手を抜かない精緻な仕上げが美しい。
カーボン製エンジンカバーを覆うボンネットもまたカーボン製。裏面まで手を抜かない精緻な仕上げが美しい。拡大
23インチのカーボン製ホイールは112万円のオプション。この細身のスポークで車重2.5t以上の巨体を支えている。
23インチのカーボン製ホイールは112万円のオプション。この細身のスポークで車重2.5t以上の巨体を支えている。拡大

生き残っていたモンスター

でもって、エンジンがいい! 走行モードは「オート」を選択している。「コンフォート」に切り替えると、ちょっと揺れる。「ダイナミック」にすると、ハーシュネスが伝わってくる。それでも角が丸まっている。「SV」モードにすると、エンジン音が大きくなって乗り心地が引き締まり、不穏なムードが高まる。抜刀! という感じ。けんのんなので、オートに戻す。

首都高速3号線に池尻から上がり、箱根を目指す。100km/h巡航は1500rpm程度。そこからアクセルを踏み込めば、即座にキックダウンし、BMW Mという名の怪物がグオオオオオオオッとうなりをあげて加速する。3000rpmまでの滑らかな回転フィール。そこから上のスポーティーな快音が心地よい。負荷がかかっているときのメカニカルな気配も最高で、もちろん、めちゃんこ速い。世界にはまだ、こんなモンスターが生きていた!!

8ATには、最高出力19PSと最大トルク200N・mを発生する電気モーターが仕込まれている。ランドローバー車に共通のマイルドハイブリッドだけれど、その存在を意識させない。4.4リッターV8ツインターボのレスポンスが素晴らしくいい。としか、少なくとも筆者は思わなかったのは、テスターとして情けない……。いや、つくり手がすごいのだ。

東名高速の秦野中井あたりからの高速ワインディングロードがファン・トゥ・ドライブだったこともあり、御殿場ICで降りて箱根山中を目指す。巨体にもかかわらず、長尾峠に行きたくなったのは、そのほうが楽しそうな予感がしたからだ。

この試乗車のボディーカラーは「エディションツー」で新規設定されたマットフィニッシュの「ブルーネブラ」。ルーフはブラック(試乗車)とボディー同色が選べる。
この試乗車のボディーカラーは「エディションツー」で新規設定されたマットフィニッシュの「ブルーネブラ」。ルーフはブラック(試乗車)とボディー同色が選べる。拡大
クリーンルームか茶室かといったシンプルな仕立てのインテリアながら、各部のフィニッシャーにはやはりカーボンを使っている。内装色は3タイプのウインザーレザー仕立てとウルトラファブリック仕立てが選べる。
クリーンルームか茶室かといったシンプルな仕立てのインテリアながら、各部のフィニッシャーにはやはりカーボンを使っている。内装色は3タイプのウインザーレザー仕立てとウルトラファブリック仕立てが選べる。拡大
シートには音楽に合わせてアクチュエーターが振動する「ボディー&ソウルシート」機能が内蔵されている。「落ち着き」「活気」などのお決まりのパターンだけでなく、好みの音楽を流してもきちんと連動する。
シートには音楽に合わせてアクチュエーターが振動する「ボディー&ソウルシート」機能が内蔵されている。「落ち着き」「活気」などのお決まりのパターンだけでなく、好みの音楽を流してもきちんと連動する。拡大
ステアリングホイールは今どきとしては細身のリムが握りやすい。ホーンパッド下の赤いボタンを押すと最もハードなドライブモードの「SV」に切り替わる。
ステアリングホイールは今どきとしては細身のリムが握りやすい。ホーンパッド下の赤いボタンを押すと最もハードなドライブモードの「SV」に切り替わる。拡大

竹馬から膝立ちへ

長尾峠は御殿場側からだと中低速コーナーが連続する上りになる。最高出力635PS、最大トルク750N・mの高性能V8に、モーターのアシストもあるとはいえ、テスト車は車重2570kgのスーパーヘビー級である。筆者の技量だと、2速ギアが中心で3速に入るかどうか。だけど、ホイールベースが3mちょうどもある巨体にしては、素直によく曲がる。4WSとブレーキ制御が、ドライバーに知られることなく作用しているからだろう。

控えめなロールはみせるものの、ピッチング、スクワット、ダイブといった姿勢変化はほとんどない。油圧連動式ダンパーとエアサスペンションを組み合わせた6Dダイナミクスサスペンションシステムという世界初の技術のたまものだ。そうでなければ、横綱昇進が決まった大の里みたいにでっかい巨漢SUV、いや、もちろん大の里よりでっかいわけですけれど、が長尾峠みたいに曲がりくねった峠道をストレスなく上っていけるはずもない。

最初は竹馬に乗ってゴーカートを操縦しているみたいな気がした。着座位置の高さが気になったわけだ。最新技術の6Dやらカーボンホイールやら4WSやらを詰め込んだ足まわりが、いつの間にか私から竹馬を取り去り、膝立ちぐらいのゴーカート感覚でワインディングを走らせてくれている。膝立ち、というところにSUVの高性能グランドツアラー、レンジローバー・スポーツSVの真骨頂がある、と筆者は思う。現代の蔦重、粋すじ向きの一台。憎いざんすよ、若旦那。つねっちゃうぞ。

(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

フロントがダブルウイッシュボーン、リアがマルチリンクの足まわりには「6Dエアサスペンションシステム」を装備。ピッチングとロールを抑制するというアクティブサスだが、「ディフェンダー」の最強モデル「オクタ」にも搭載されるという。
フロントがダブルウイッシュボーン、リアがマルチリンクの足まわりには「6Dエアサスペンションシステム」を装備。ピッチングとロールを抑制するというアクティブサスだが、「ディフェンダー」の最強モデル「オクタ」にも搭載されるという。拡大
妖しい光を放つシフトセレクターは表面にアルミ板を使っている。ひんやりとした感触が心地よい(冬は分からないが)。
妖しい光を放つシフトセレクターは表面にアルミ板を使っている。ひんやりとした感触が心地よい(冬は分からないが)。拡大
「レンジローバー」ファミリーとして必須の渡河推進能力は82cmを確保。サーキット走行にも対応する高性能SUVはほかにもあるが、こうした能力と両立しているのは「レンジローバー・スポーツSV」だけだろう。
「レンジローバー」ファミリーとして必須の渡河推進能力は82cmを確保。サーキット走行にも対応する高性能SUVはほかにもあるが、こうした能力と両立しているのは「レンジローバー・スポーツSV」だけだろう。拡大

テスト車のデータ

レンジローバー・スポーツSVエディションツー

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4960×2005×1820mm
ホイールベース:3000mm
車重:2570kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター::交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:635PS(467kW)/6000-7000rpm
エンジン最大トルク:750N・m(76.5kgf・m)/1800-5855rpm
モーター最高出力:19PS(14kW)/800-2000rpm
モーター最大トルク:200N・m(20,4kgf・m)/250rpm
タイヤ:(前)HL285/40R23 111Y XL/(後)HL305/35R23 114Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ オールシーズン4)
燃費:--km/リッター
価格:2474万円/テスト車=2846万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ブルーネブラ[マットフィニッシュ]>(28万9000円)/パーフォレーテッドウインザーレザーシート(0円)/コンビニエンスパック(7万1000円)/カーボンセラミックブレーキシステム(146万1000円)/SVカーボンセラミックブレーキキャリパー<ブルー>(0円)/4ゾーンクライメートコントロール (24万8000円)/空気清浄システムプロ(7万3000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万8000円)/SVビスポーク フルエクステンデッドレザーアップグレード(0円)/SVステアリングホイール<レザー>(0円)/23インチ“スタイル5132”ホイール<カーボンファイバーサテングレーティント>(112万円)/スライディングパノラミックルーフ(34万2000円)/フロントセンターコンソール急速クーラーボックス(11万8000円)/家庭用電源ソケット(2万2000円)/コールドクライメートパック(5万7000円)/SVカーボンファイバーエクステリアパック<サテンツイルカーボン>(0円)/SVカーボンファイバーフィニッシャー(0円)/SVカーボンファイバーシートバック(0円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(5万9180円)/ディプロイアブルサイドステップキット(71万5044円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:3181km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:491.1km
使用燃料:64.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.6km/リッター(満タン法)/7.8km/リッター(車載燃費計計測値)

レンジローバー・スポーツSVエディションツー
レンジローバー・スポーツSVエディションツー拡大
今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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