ゴードン・マレーが新型車「T.33」を発表! 鬼才が手がけた新たなハイパーカーに迫る
2022.01.28 デイリーコラムイタリアンデザインをまとう「T.50」の派生モデル
2022年1月27日17時(現地時間)、英国のゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)は、「T.50」に続く市販スーパーカーの第2弾「T.33」を発表した。
彼らの掲げる“スーパーカー創造のエッセンス”は、シンプルだが刺激に満ちている。スーパーカーのルールブックを書き換える。すなわち、「ドライビングエクスペリエンスの究極的実現」だ。エンジニアでありデザイナーでもあるゴードン・マレーによれば、それは自身が設計した「マクラーレンF1」の登場以降、30年にわたってどのスーパーカーブランドも真剣に向き合ってこなかったポイントでもあるという。ゴードンいわく、「分かってねぇなぁ」である。
そうして2021年に発表されたT.50は、まさにマクラーレンF1の現代版というべきハイパーカーだった。コスワースとの共同開発による専用の4リッターV12自然吸気エンジンをミドに積み、シートレイアウトはドライバーズシートを中央に据えた3人乗り。ボディーサイズは「ポルシェ・ケイマン」並みに抑えられ(もちろんさらに低い)、カーボンファイバーを駆使した車体の重量は1t弱(986kg)という軽さだった。外観は派手なエアロデバイスを採用しないクラシックビューティースタイルを貫き、代わりに往年のブラバムのF1マシン「BT46」をほうふつとさせる空力ファンを車体後部に装備。ISG付きのV12自然吸気エンジンはなんとマックス1万2100rpmまで回って、そのサウンドは動画で聞いた限りでも市販エンジン史上最高のソプラノ歌手と評すべきものだった。最高出力は663PS/1万1500rpmに達し、変速機には3ペダル6段マニュアルギアボックスのみを組み合わせる。
今の時代にこのスペックを聞いて「欲しくならない」「乗ってみたいと思わない」というスーパーカーファンなど、世界中どこを探してもいまい。案の定、限定100台は発表後48時間で完売となった。236万ポンド(1ポンド=155円で換算すると約3.7億円)もしたというのに!
さて、今回の主役であるT.33は、そんなT.50の言ってみれば派生モデルである。1960年代のイタリアンクラシックビューティーにヒントを得たスタイリング(とネーミング!)の、美しいV12ミドシップカーだ。ただし、T.50とは異なる点がデザイン以外にもいくつかある。
マレーが提案するもうひとつの「ドライビングファン」
T.50からの違いとしてまず挙げられるのは、よりコンベンショナルな2シータースタイルとしたこと(左右ハンドルのチョイスが可能)。次いで例の空力ファンを装備しなくなったことで、その代わりにファンより簡便で画期的な新システム「PBLC」を採用したという。ISG付き4リッターV12も最高許容回転数を1000rpm低い1万1100rpmとし、最高出力も615PS/1万0500rpmとやや落としている。そして変速機には3ペダルマニュアルギアシフトのほか、2ペダルのパドルシフト仕様も準備された。最後に、ホイールベースをT.50より35mm延長。ゴードンがT.33を「GTである」と主張するゆえんだ。
これ以外にも、構造物の素材・設計の細かな変更等もあって、車両重量はわずかに増え1090kgとなった。それでも現代のスーパーカーとしては十分に軽く、T.33より軽量なハイパーカーのプロダクションモデルは、事実上T.50しかない。パワーウェイトレシオも1.77kg/PSとかなりのハイスペック!
こうした仕様変更によって、価格もT.50から100 万ポンド近くも下げられた。といっても137万ポンドだから、日本円に換算すれば車両価格は軽く2億円を超えてしまう。そう、T.33は確かにT.50より安価なモデルではあるけれど、決して廉価版などという存在ではない。逆に言うと、GMAの生産するハイパーカーシリーズのエクスクルーシブなスタンダードモデルがT.33で、T.50や「T.50sニキ・ラウダ」は、さらにその頂点に君臨するブランドのアイコン的存在であると思ったほうがいい。事実、T.33クーペもまたT.50と同様に100台の限定販売となっており、そのエクスクルーシブ性はT.50と同様に高いレベルで保たれている。決して求めやすい廉価版などという位置づけではないのだ。T.33はドライビングファンに真正面から向き合うための、ゴードン・マレーが提案するもうひとつの個性、というべきであろう。
そしてゴードン・マレーはこうも言っている。「T.33シリーズはGMAが製造する最後のノンハイブリッドモデルである」と……。
(文=西川 淳/写真=ゴードン・マレー・オートモーティブ/編集=堀田剛資)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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