イタリアメーカーのブース紹介(後編)【ジュネーブショー2011】
2011.03.09 自動車ニュース【ジュネーブショー2011】アルファ・ロメオとフィアットから魅惑のクーペが登場
イタリア勢の攻勢はフェラーリ、ランボルギーニの2大スーパーカーメーカーだけにとどまらず。アルファ・ロメオやランチアなど、フィアットグループからも注目車種が目白押しだった。しかし、そのような華やかな展示からは、浮かれてばかりいられない側面もまた垣間見ることができたのである。
■アルファの光る一発芸
「ジュリエッタ」のローンチでひと息ついたアルファ・ロメオからは、魅力的な新型スポーツカーがお披露目された。「4Cコンセプト」。1.75リッターターボの直列4気筒をミドに搭載した2シータークーペである。
全長4mに満たないボディは非常にコンパクトで、スタイリングは素直にカッコいいと言えるできばえ。ただし、アルファらしいかというとちょっと微妙。「8Cコンペティツィオーネ」から始まった2灯式ヘッドライトをはじめ、フロントおよびリアエンドは最新のアルファ風にまとめられているが、たとえば、顔とお尻が、ロータスならロータスとして通用してしまいそうなところがちょっと惜しい。
カーボンとアルミ製のシャシーの採用により、車両重量は850kgに抑えられるとのことで、最高出力200psを超えるエンジンとの組み合わせは痛快な走りをもたらしてくれるに違いない。シャシーは自前ではないようで、ウワサでは「KTMクロスボウ」の開発に携わったダラーラ社が関係していると言われている。
8C同様、一発芸なので、アルファ・ロメオの明るい未来と直結しない部分もあるが、クルマ自体は非常に魅力的なのでぜひとも市販してほしい。そう思いながら取材していたら、2012年に発売が予定されているとのこと。価格は決して安くはないと思うが、心ときめいた人は早めに情報を集めた方がいいだろう。
■期待と不安のランチア
アルファ・ロメオの親会社フィアットからも同じく魅力的なクーペが出展されていた。「500」をベースにザガートが味付けしたモデルで、その名も「500クーペ ザガート」。Aピラーから後ろのデザインを変更することでクーペ風に仕立てたモデルで、なだらかに下がるザガートお得意のダブルバブル形状の屋根が特徴となっている。完成度はかなり高く、このまま「500」シリーズのラインナップとして発売されてもおかしくない仕上がりを持つ。というか、こちらも4C同様、市販を検討してほしい1台だ。
今回のショーで、いろいろな意味で大注目なのがランチア。目玉は3代目に生まれ変わった「イプシロン」である。デザインにこだわるコンセプトは継承され、新型も「イプシロン」の名にふさわしい秀逸なスタイリングを持つ。5ドア化されたことで利便性も上がり、これまで以上に人気を博するのは間違いないだろう。
ただし、今回ランチアが大注目となったのは新型「イプシロン」がデビューしたからではない。その答えは「イプシロン」と一緒にお披露目された3台のブランニューモデルにある。今回がワールドプレミアとなった「テーマ」「フラビア」「ボイジャー」は、いずれもクライスラーの代わりにランチアのバッジが付けられたクライスラーのOEM車両なのだ。いよいよ、クライスラーとランチアの統合が始まったのである。なお、フィアットからもダッジブランドの「ジャーニー」(日本名「JC」)が「フリーモント」としてお披露目された。
ランチア、クライスラーともフィアット傘下に属し、ともに高級路線を歩む。さらにどちらも経営が思わしくないとなれば、当然の帰結かもしれない。ただ、こういった合理化で成功した例は少ないのも事実である。欧州でクライスラーはほとんど販売されていないから問題ないという判断なのかもしれないが、ユーザーはそれほど鈍感じゃないと思う。最終的にブランド力の低下につながり、ランチアの消滅なんてことにならなければよいのだが……。
フェラーリやランボルギーニの競演に浮かれつつも、ランチアを見るとその将来を憂いてしまう。それが今回のイタリア勢を見た素直な感想である。
(文と写真=新井一樹)
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