【F1 2022】マイアミGP続報:フェルスタッペン、フェラーリとの真っ向勝負を制す
2022.05.09 自動車ニュース![]() |
2022年5月8日、アメリカはフロリダ州にあるマイアミ・インターナショナル・オートドロームで行われたF1世界選手権第5戦マイアミGP。F1初開催のコースで、フェラーリとレッドブルが再び激しいつばぜり合いを繰り広げたのだが、一日の長があったのはチャンピオンのほうだった。
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F1とアメリカの、長く複雑な歴史
いまはまさに蜜月の時期を迎えているF1とアメリカ。何しろテキサスでのアメリカGPに加え、今季からはフロリダでのマイアミGPも行われるようになり、さらに2023年からは、ラスベガスでシーズン3つ目のレースが開かれるのである。
欧州をオリジンとするF1と、スポーツをはじめ独自の文化圏を築いてきたアメリカとの関係は長く、そして複雑な道をたどってきた。F1黎明(れいめい)期の1950年からしばらくは、便宜的にインディアナポリス500がカレンダーに組み込まれるも、1959年からはF1アメリカGPとして独自開催がスタート。1976年から1984年までは東西分かれて1国で2レース(1982年は年3回)が行われるほど活況を呈したのだが、やがてアメリカ生まれのCARTやNASCARシリーズの隆盛を受けてF1の勢いは衰え、1991年のアリゾナはフェニックス市街地コースでのレースを最後に、いったん、かの地でF1は姿を消した。
アメリカン・モータースポーツの聖地、インディアナポリスをロードコース化して2000年に復活を遂げたアメリカGPも、2005年には、安全性の問題でミシュランタイヤユーザー7チーム14台がレース不参加、ブリヂストンタイヤを履くマシン6台のみが出走するという前代未聞の“インディ・ゲート事件”が発生。F1はこれで同国での人気と信頼を失い、2007年がラストレースとなった。
アメリカではF1は根づかないと思われたが、2012年にテキサスはオースティンでアメリカGPが再開されると風向きが変わり始める。そして2016年、米国メディア企業のリバティ・メディアがF1を買収することが決まると、興行大国としてのアメリカの実力を存分に知る同社は、熱心にF1をアメリカへと誘い続けた。
テレビや通信といったメディアを熟知したリバティは、SNSによるコミュニケーション戦略を積極的に推し進め、同時にNetflixという同じアメリカのコンテンツ・プラットフォーマーと手を組んだ。2019年からNetflixで配信を始めたF1ドキュメンタリー番組『Drive to Survive(栄光のグランプリ)』が、現在のアメリカでのF1人気を支えていることは周知の事実であり、インディ・ゲートの茶番劇すら知らない若い層をはじめファンが急増した。
アメリカのF1開催地として11番目となるマイアミでは、盛大なオープニングパーティーが開かれ、ドライバーやチーム代表がセレブリティーとして大歓迎された。こうしたアメリカ人好みの派手な演出やエンターテインメント志向も、いまのF1のひとつの側面。“F1はヨーロッパのもの”と見るイメージは、もはや過去のものとなったようだ。
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僅差の予選でフェラーリ1-2、ルクレールがポール
マイアミ・インターナショナル・オートドロームは、NFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地、ハードロック・スタジアム周辺に造られた今季唯一の新コース。3本のストレートではレッドブル、シケインなど曲がりくねったセクションはフェラーリと、それぞれの得意な箇所で速さをみせながら、2つのトップチームがしのぎを削った。
予選Q3も僅差の戦いとなるも、フェラーリのシャルル・ルクレールが今季3回目、通算12回目のポールポジションを獲得。チームメイトのカルロス・サインツJr.が0.190差で2位となり、フェラーリは2019年のメキシコGP以来となるフロントロー独占に成功した。
2列目にはレッドブルの2台が並び、マックス・フェルスタッペンはサインツJr.からわずか0.005秒遅れで3位、セルジオ・ペレスは4位。フェルスタッペンは最後のアタックを自らのミスでふいにするも、初日の2回目のプラクティスをトラブルでほとんど走れなかったことを問題に挙げ、「週末をクリーンに過ごせたらポールにいたかも」と悔しさをにじませた。
2強に次ぐ5位につけたのがアルファ・ロメオのバルテリ・ボッタス。マシンアップデートを持ち込んだメルセデスは1台のみがQ3に進出し、ルイス・ハミルトンが6位。ジョージ・ラッセルは12位に沈んだ。アルファタウリは、ピエール・ガスリー7位、マクラーレンのランド・ノリスを間に挟み、角田裕毅は今季初Q3突破で9位。アストンマーティンのランス・ストロールは10位からレースに臨んだ。
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3位スタートのフェルスタッペンがトップに
予選同様、57周のレースでも、フェラーリとレッドブル、ルクレールとフェルスタッペンのトップ争いに終始した。
スタートでトップを守ったルクレールに続いたのはフェルスタッペン。ラインを外れた偶数グリッドは不利だったか、サインツJr.は3位に落ち、4位ペレス、5位ボッタス、6位にはガスリーが上がってきていた。
6周目には、DRS圏外となる1秒半のギャップを築いていたルクレール。だがミディアムタイヤとフェラーリの相性は思わしくなく、ペースが鈍り始め、その間隙(かんげき)を突いたフェルスタッペンが9周目にトップを奪い去ると、レッドブルはタイヤをいたわりつつ2秒、3秒とリードを広げていった。
一方、4位をキープしていたペレスは、18周を過ぎる頃から3位サインツJr.の1秒内に入ったのだが、その直後にギャップは7秒台に拡大。「パワーを失っている!」と訴えるドライバーに、チームがセッティング変更を指示する一幕も見られた。
フェルスタッペンに7.5秒も逃げられたルクレールは、25周目にタイヤをミディアムからハードに換装し反撃に備えた。それに反応したフェルスタッペンも2周後にピットに入り、続いてサインツJr.、ペレスと、次々とハードタイヤに交換した。
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セーフティーカー導入で急接近、緊迫のフィナーレへ
ピットストップ後の位置関係は、1位フェルスタッペン、7.4秒離されて2位ルクレール、そこから10秒差で3位サインツJr.、トップから23秒後ろに4位ペレス。十分なスペースを築いていた首位フェルスタッペンにとっては、後ろを気にしながら周回を重ねればよかったのだが、壁に囲まれたマイアミのコースでは、セーフティーカー導入も十分にあり得た。
41周目、接触によるダメージでマシンがターンしづらくなっていたガスリーと、それを抜こうとしたノリスが接触し、ノリスのマシンがクラッシュ。バーチャルセーフティーカーからセーフティーカーに変わると、これを好機と捉えたのが、スタートからハードタイヤを履きノンストップで走り続けていたラッセルと、アルピーヌのエステバン・オコンだった。全車スロー走行中にタイヤ交換を済ませたことで、ラッセルは12番手スタートから5位、最後尾から追い上げ中だったオコンは8位と上位入賞を果たすことができたのだ。
首位独走に待ったをかけられたフェルスタッペンにとっては、築いたリードが帳消しとなりピンチ到来。47周目にレースが再開すると、真後ろのルクレールから猛攻を受け、優勝争いは一気に緊迫することになるのだが、コーナーで差を詰めてくるフェラーリに対し、レッドブルは持ち前の直線スピードで応戦し、最後まで赤いマシンに先行を許さなかった。
その後方では、サインツJr.とペレスの3位争いも白熱した。セーフティーカー中にミディアムタイヤに交換していたペレスがサインツJr.を抜きにかかろうとするが、踏ん張りどころでサインツJr.も奮起、表彰台を守り切った。
今季5戦を終え、フェルスタッペンは完走したすべてのレースを制し3勝、ルクレールは2勝を記録。2人を中心に進展するタイトル争いは、2連勝しルクレールのリードを19点にまで削ったフェルスタッペンに傾きつつある。
「シーズンを通したマシンのアップグレードがとても重要だ。次のレースからステップアップできることを願っているよ」とは、レース後のルクレールの弁。マラネロの反撃が期待される。
次の第6戦スペインGP決勝は、5月22日に行われる。
(文=bg)