【F1 2023】第18戦カタールGP続報:フェルスタッペンがスプリントで3連覇達成 レースでもポールから貫禄勝ち
2023.10.09 自動車ニュース![]() |
2023年10月8日、カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第18戦カタールGP。土曜日のスプリントでタイトルを決めたトリプル・チャンピオンが、レースでもいつもどおりミスなし、敵なしで完勝した。
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FIAが承認した“11番目の新チーム”はF1に参戦できるのか?
2025年からF1に新規参入するチームを受け付けていたFIA(国際自動車連盟)は、その審査結果を2023年10月2日に発表。元F1ドライバーであるマイケル・アンドレッティ率いる「アンドレッティ・フォーミュラ・レーシング」の参戦が承認された。
とはいえ、晴れて11番目のチームがグリッドにつけるかどうかはまだ決まっていない。商業権を握るフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)との契約を結ぶ必要があるからなのだが、この契約交渉が困難を極めるであろうことは誰もが予想していること。なぜなら、既存10チームの多くが新規参入を快く思っていないからだ。
F1に参戦するチームは、成績やF1への歴史的貢献度をベースにFOMから分配金を受け取っている。近年は空前のF1人気により懐具合もだいぶ良くなってきてはいるはずだが、分配金を10チームで分けるのと11チームで分けるのとでは額が変わってくる。既得権益といえばそれまでだが、収益が減ることを歓迎するチームなどいないのは事実である。
F1人気の中心にアメリカ市場があるのは周知のとおりで、2023年は彼の地で3レースも開かれるほど活況を呈している。アメリカを拠点とするアンドレッティが、取りあえずバッジだけとはいえキャデラックをパートナーに連れてくこともアナウンスされており、また2026年からは(これまたブランド名としてだが)フォードがレッドブルとタッグを組むこともある。
近年のF1人気を支えるアメリカとの蜜月を象徴する「アンドレッティ・キャデラック」が反対されるというのも皮肉な話だが、コース外の政治的な駆け引きも、世界最高峰のF1ならではの熾烈(しれつ)な戦いなのである。
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2年ぶりのカタールGP、金曜予選はフェルスタッペンがポール
2年ぶりの開催となったカタールGP。ロサイル・インターナショナル・サーキットは、初開催の2021年からピットやパドックが一新され、路面も再舗装されたというのだから驚きである。さらに今季4度目のスプリントウイークにあたったこともあり、1時間だけのプラクティスでさまざまなことをチェックしなければならず、加えて砂漠の砂や風、暑さの影響も重なり、ドライバーやチームにとってはいっそうタフな週末となった。
そしてこの週は、マックス・フェルスタッペンのチャンピオン決定がかかっていた。早ければ土曜日のスプリントでタイトル決定の可能性があったレッドブルのエースは、金曜日の夜に行われたレースに向けた予選で堂々のトップタイムをマークし、今季10回目、通算30回目のポールポジションを獲得した。
その後ろにはメルセデスが並び、ジョージ・ラッセルが今季3度目のフロントローとなる2位、ルイス・ハミルトンは3位。アストンマーティンのフェルナンド・アロンソが4位、フェラーリのシャルル・ルクレールは5位に続いた。
マクラーレンは最前列につけるポテンシャルを示しながら、この週末多くのドライバーが引っかかったトラックリミット違反でタイムを抹消され、オスカー・ピアストリ6位、ランド・ノリスに至っては10位に落ちた。2台そろってQ3に進んだアルピーヌは、ピエール・ガスリー7位、エステバン・オコン8位。アルファ・ロメオのバルテリ・ボッタスが9位からレースに臨むことなった。
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フェルスタッペン、土曜日のスプリントで3連覇達成
初日の走行後にピレリタイヤのサイドウォールに剥離(はくり)が見つかった。タイヤと縁石の間で起こる高周波干渉と、タイヤが高さ50mmの縁石に乗り上げた際の衝撃によりパンクを引き起こす可能性が指摘され、急きょ一部コースの幅を狭めて縁石から遠ざけるようなラインとしたのに加え、土曜日のスプリントのグリッドを決めるスプリント・シュートアウト(SS)前に10分間の試走が追加された。
SSでトップ10に入ったなかで、ピアストリ1位、ノリス2位とマクラーレンが最前列独占。トラックリミットでタイム抹消となったフェルスタッペンが3位、ラッセル4位、フェラーリのカルロス・サインツJr.が5位、ルクレール6位、ハースのニコ・ヒュルケンベルグ7位、レッドブルのセルジオ・ペレス8位、アロンソ9位、オコン10位だった。
フェルスタッペンがスプリントで6位以内に入ればチャンピオン決定。19周の短期決戦は、滑りやすい路面で3度もセーフティーカーが出動した荒れた展開となった。序盤はソフトタイヤ勢がけん引、その筆頭のラッセルでしばしトップを走るも、タイヤのパフォーマンスが落ちると後退し結果4位。11周目に首位を奪還したミディアムを履く新人ピアストリが、スプリントでうれしい初優勝を飾った。
フェルスタッペンはスタートで一気に5位までダウンするも挽回し2位でゴール。この結果、先頃26歳になったばかりのオランダ人ドライバーの戴冠が確定した。フェルスタッペンは、アイルトン・セナ、ネルソン・ピケ、ニキ・ラウダ、ジャッキー・シュチュワート、ジャック・ブラバムといった名だたる王者とともに“3冠組”の仲間入り。またファン・マニュエル・ファンジオ、ミハエル・シューマッハー、セバスチャン・ベッテル、ルイス・ハミルトンに次ぐ3連覇を達成したチャンピオンとなった。
スプリント3位はノリス。スタートで順位を落とすも、残り3周で6位から3位まで挽回した。以下、4位ラッセル、5位ハミルトン、6位サインツJr.、7位に17番手からスタートしたウィリアムズのアレクサンダー・アルボン、8位アロンソまでがポイントを獲得した。
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周回数制限の緊急措置、スタート直後にメルセデス2台が接触
日曜日、FIAとピレリからタイヤ問題の対応策が新たに発表され、新品タイヤでの最大周回数を「18周」とし、中古タイヤは使った分を差し引いてカウントするという暫定措置が決まった。レース周回数は57周、つまり事実上3ストップが義務づけられたことになったのだが、スティントを細かく刻んだ分、結果的に予選のようなラップを毎周繰り返すことになり、砂漠の暑さも相まってドライバーたちの体力は見る見る奪われていった。
レース直前、サインツJr.のフェラーリに燃料系のトラブルが発覚し、跳ね馬の1台は欠場。19台によるレースは、シグナルが消えた直後のターン1でメルセデス勢が接触するという波乱の幕開けとなった。持ちタイヤがないハミルトンは、戦略上不利なソフトタイヤを履いてスタートせざるを得ず、蹴り出しこそ良かったものの強引にアウトからかぶせたことが災いし、チームメイトのラッセルを巻き添えにして0周リタイア。一方ラッセルもノーズとタイヤの交換を余儀なくされ最後尾に落ちたものの、シルバーアローのリカバリーは素晴らしく、結果的に4位でレースを終えることとなる。
この同士打ちにより早々にセーフティーカーが出動。1位フェルスタッペン、2位にピアストリが上がり、3位アロンソ、4位ルクレール、5位オコン、6位ノリスといったオーダーで5周目にレースが再開した。
10周を過ぎるとミディアムタイヤ勢が最初のタイヤ交換を始め、3位アロンソは12周目、翌周ピアストリやルクレール、14周目にノリス、そしてトップのフェルスタッペンは18周目にピットに入った。その後トップ3の顔ぶれは変わらず、フェルスタッペンを先頭に2位ピアストリ、3位アロンソ。4位にはノリスが上がり、ルクレールは5位に落ちた。
上位陣の2度目のタイヤ交換は26周目からで、ピアストリ、ルクレールを皮切りに27周目にはアロンソもハードタイヤに替え、35周目にはフェルスタッペンが2度目のタイヤ交換。これで1位フェルスタッペン、2位ピアストリ、3位ノリス、4位ラッセル、5位ルクレール、6位アロンソとなる。名手アロンソは34周目に珍しくコースアウトを喫しタイムロス、せっかくの表彰台をふいにし、最終的に6位でチェッカードフラッグを受けることとなった。
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3冠王者フェルスタッペンが今シーズン14勝目
3度目にして最後のピットストップは、ピアストリとルクレールが44周目に入ると、続いてノリス、アロンソがタイヤをチェンジ。同じようなドライバーが同じようなタイミングでピットインするのは暫定ルール上仕方のないことで、フェルスタッペンもほぼきっちりと規定周回数を走り切り、52周にミディアムを履いてコースに戻っていった。
マクラーレンは2人のドライバーには、「ポジションをホールドしろ」との指示。急成長している新人ピアストリを前に、先輩格のノリスは勝負を挑みたかっただろうが、パパイヤオレンジの2台はチームの指示に従いゴールするのだった。
もはや珍しくもなくなったフェルスタッペンの圧勝。今シーズン14勝目、ポールからスタートしたレースとしては14戦連続優勝となり、これは史上最多記録だ。また今季のリードラップ数は739周を数え、ベッテルが保持していた年間最多記録を更新。さらに2022年4月のエミリア・ロマーニャGPから36戦連続でポイントを獲得しており、これは史上2番目のレコードとなる。
今季17戦して16勝を飾っている「レッドブルRB19」がグラウンド・エフェクトカーとして完成度が高いマシンであることに異論を挟む余地はないものの、同じマシンで苦戦するペレスを見れば、無敵といっていいフェルスタッペンがかつてないほどの高みに到達していることもまた疑いようがないだろう。
一方で、キャリア最良の2位で終わったピアストリや、3戦連続今季5回目のポディウムにのぼった3位ノリスといった若手の台頭は、この3冠王者の勢いを止めるポテンシャルを秘めているといっていい。表彰台の3人は疲労困憊(こんぱい)の様子だったが、それぞれがやり切った表情をしていた。
残り5戦、次からはいよいよアメリカ大陸での4戦がスタートする。第19戦アメリカGP決勝は10月22日に行われる。
(文=bg)