これがトヨタのすごさ!? 「クラウン クロスオーバーRS“ランドスケープ”」が気になる
2024.05.16 デイリーコラム雄大な自然や悪路を想起させる車名
この4月に実施された「クラウン クロスオーバー」の一部改良を機に追加された「RS“LANDSCAPE(ランドスケープ)”」が、クルマ好きかいわいで、ちょっとした騒ぎになっている。ベースとなっているのは、クラウン クロスオーバーでも高性能なターボハイブリッドの「RS」で、ご覧のように、そこにオフローダー風味をけっこう濃厚にトッピングしているのが特徴だ。2024年12月までの期間限定生産予定の特別仕様車あつかいだが、表向きの台数制限はない。
伝統的高級サルーンだった「クラウン」が、先ごろのモデルチェンジでクロスオーバーSUVになっただけでも大事件だった。なのに、今度はまさかの「ランクルかよ?」のカスタマイズが施されて、特別仕様車とはいえ、トヨタ純正の正式グレードとして登場したわけだ。旧来のクラウン信者の間に強めの拒否反応が出るのもいたしかたないが、いっぽうで素直に「カッコイイじゃん」という声も多い。こうしてバズってくれれば、年末までの生産予定台数くらいは軽々と埋まるのではないか……と想像される。さすが商売上手である。
商品名になったランドスケープ(Landscape)という英単語は、直訳すると「風景、開けた光景、景観」となり、現代では「市況、状況、環境」といった意味でも使われるようだ。われわれ日本人からすると、冒頭の「Land~」にランクル(ランドクルーザー)と同じく、雄大な自然や悪路を想起させる(ような気がする)。
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コンセプトカーを1年前に発表
RS“ランドスケープ”では、クラウン クロスオーバーRSの外板色を「RAV4」で普及した「アーバンカーキ」に塗り、車高を約25mmリフトアップしている。足もとは大径かつ幅広のオールテレインタイヤで、それをカバーするボルト止め(調)オーバーフェンダーにマッドガードも装備。さらに、背後にはトーイングヒッチ(許容けん引荷重750kg)も顔をのぞかせる芸の細かさで、本格的なオフローダー風味を醸成している。また、メインのイメージ画像では販売店オプションのシステムキャリアベースを装着して雰囲気を盛り上げている(その上のアタッチメントはアフター品)。
ちなみに、専用のオールテレインタイヤは225/60R18サイズで、ベース車の225/45R21サイズと比較すると、計算上は15mmほど大径となる。うち車高に影響するのは半径分=7~8mmだから、残る15mm強はサスペンション部分でのリフトアップということになる。
インテリアの特色は、一見すると光沢のあるブラックの内装色とロゴマークくらいだ。しかし、よく観察すると、普通のクラウン クロスオーバーにはない後席可倒によるトランクスルー機能が追加されており、レジャー的な使いかたへの配慮もみられる。
すでにお気づきの向きも多いと思うのが、この“ランドスケープ”につながるコンセプトカーは、2023年1月の東京オートサロン(厳密には、それと併催の東京アウトドアショー)に出品されている。
当時のコンセプトカー名は「クラウン クロスオーバー アウトドアコンセプト」で、後の市販版“ランドスケープ”と比較すると、タイヤはより太く、オーバーフェンダーもよりワイドな仕立てとなっている。さらに、フロントまわりは補助ランプだらけだ。いっぽうで、アーバンカーキの外板色も含めて、デザイン的にはすでに完成されており、また例のトランクスルー機構もすでに備わっていた。実際、市販化予定を強くにおわせる担当者のコメントが、多くの専門メディアでも取り上げられていた。おそらく、当時はすでに開発も終わりに近く、市販化も既定路線だったのだろう。
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トップダウンで実現する“ノリのよさ”が強み
先日、トヨタブランド車の“匠”のひとりである片山智之さんとお話しする機会があった。片山さんはクラウンシリーズの味つけにも深く関与している。そんな片山さんによれば、今回の“ランドスケープ”が実現したきっかけも「検討用の試作車を弊社社長(当時)の(豊田)章男さんが見て“これはいいじゃないか”と、ノリノリになって、そのまま市販化に進んだと聞いています」といった流れらしい。
たしかに、この“ランドスケープ”的な手法は世界的に流行しており、それをクラウンでやってみたらどうか……という発想も、ある意味でごく自然なものである。
ただ、自動車メーカーにとっては、そうした気軽な思いつき(失礼!)でも迷いなく商品化を決断できるかどうか、そして下手な横やりを入れず、現場の熱気やノリをそこなわずにユーザーまで届けられるか……がキモである。その意味では、豊田章男会長のひらめきがトップダウンで実現する“ノリのよさ”に、今のトヨタの強さがあるように思える。
豊田章男さんという人物は、そのキャラクターの強さゆえに、当然ながら賛否はある。しかし、彼の本質はただのクルマ好きオジサン(失礼!)であり、そんなクルマ好きオジサンの気持ちを素直に体現した商品群が、今のトヨタの魅力になっていることは間違いない。
クラウン クロスオーバーはもともと4WDで、そこに大きめの地上高とオールテレインタイヤを与えた“ランドスケープ”が、それなりに優れた走破性をもつこと想像にかたくない。ただ、そのタフな内外装のわりには、メカニズムに特別なものはない。
「車高やタイヤがちがうので、味つけもやり直していますが、あくまでクラウンであることは忘れていません」と片山さん。さらに「トランクスルーは北米仕様などにもともとあったものですが、日本仕様では剛性を確保するためにあえて採用しなかったんです。なのに今回は、企画担当の希望で入れちゃいました(笑)。まあ、実際にやってみると、走りにそこまで大きな影響はないようですが……」と続けた。
おお、こういうつくり手の心意気が表に出ているクルマが面白くないはずはない。クラウン クロスオーバーRS“ランドスケープ”……いよいよ乗ってみたくなる。
(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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