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4種そろった「トヨタ・クラウン」 どれがどんな人に向いている?

2025.05.19 デイリーコラム 工藤 貴宏
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保守派だって安心できる

「シリーズで構成しているから、とがったクルマをつくれるんですよ。例えば『クラウン スポーツ』は、走りの楽しさを磨き上げて運転をとことん楽しみたいユーザーに向けるいっぽうで、『後席や荷室が狭い』という人には、ぜひ『クラウン エステート』をどうぞと言えますから」

先日出かけた、クラウン エステートのメディア向け試乗会。そこで開発者が発し、筆者が妙に腑(ふ)に落ちたのがそんな言葉だ。

ご存じのように新型クラウンは4つのモデルで構成されている。「クラウン クロスオーバー」、「クラウン」(セダン)、クラウン スポーツ、そして最後のピースとなるクラウン エステートだ。その4種すべてが出そろったところで「それらの特徴とマッチする人を浮き彫りにする」というのが今回のコラムの主旨である。

最もわかりやすいのがセダンだろう。正統派セダンかつ正統派クラウンであり、従来のクラウンを乗り継いできたような、風格や格式を求めるユーザーにピッタリはまる。「クラウンは後輪駆動じゃないと認めない」と一家言を持つ、意識が高いクラウン愛好者でも、セダンなら後輪駆動を受け継いでいるので安心していい。

2022年7月に「クラウン」の4車種展開が発表されたときは、自動車業界に激震が走ったものだった。写真はそのクラウンシリーズ4モデルで、左から順に「クラウン クロスオーバー」「クラウン スポーツ」「クラウン」「クラウン エステート」。
2022年7月に「クラウン」の4車種展開が発表されたときは、自動車業界に激震が走ったものだった。写真はそのクラウンシリーズ4モデルで、左から順に「クラウン クロスオーバー」「クラウン スポーツ」「クラウン」「クラウン エステート」。拡大
2025年3月に発売された“第4のクラウン”「クラウン エステート」。ワゴンとSUVを融合させたようなボディーが与えられている。
2025年3月に発売された“第4のクラウン”「クラウン エステート」。ワゴンとSUVを融合させたようなボディーが与えられている。拡大
多車種展開とはいうものの、やはり「クラウン」にセダンは欠かせない。水素を使う燃料電池車と2.5リッターのハイブリッド車が選べ、ショーファーカーとしてのニーズにも応える。
多車種展開とはいうものの、やはり「クラウン」にセダンは欠かせない。水素を使う燃料電池車と2.5リッターのハイブリッド車が選べ、ショーファーカーとしてのニーズにも応える。拡大
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エステートはグランドツアラー

エステートもわかりやすい。SUVを装ってはいるものの、その神髄は広いラゲッジスペースを備えたステーションワゴンである。後席を倒すと奥行きが2mになる広い荷室を持ち、ワゴンとしての機能性が高いのが最大の特徴だ。

確かに純粋なステーションワゴンではなく車高を上げたクロスオーバーSUVだけれど、それは今どきのトレンドに合わせた演出くらいに考えておけばオーケー。積載性能は現行クラウンシリーズのなかで最も高い。

筆者が思うのは、このエステートは最高のグランドツアラーだってこと。ロングツーリングとなれば荷物が増えがちだが、荷室が広いエステートなら安心だ。後席もゆったりしているし。

そのうえで、注目は操縦性。高速巡航性能を高め、長距離・長時間運転しても疲れにくいように仕立てられているのだ。そうやって操縦性や乗り心地の方向性を大きく分けられたのも、クラウンシリーズが1モデルではなく4モデルで構成されていればこそだ。

ちなみにこのエステート、設計的には「クロスオーバーと多くの部分を共用するワゴン版」と考えておけばいい。ホイールベースやルーフの高さも同じだし、乗員の座らせ方もほぼ共通だ(そして余談だが、セダンを除く3モデルはダッシュボードの基本設計とフロントウィンドウも共通である)。

「ダイナミックな造形や、仲間や家族とのアクティブライフを楽しむことができるユーティリティーを追求した」という「クラウン エステート」。ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車がラインナップされる。
「ダイナミックな造形や、仲間や家族とのアクティブライフを楽しむことができるユーティリティーを追求した」という「クラウン エステート」。ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車がラインナップされる。拡大
長めのホイールベース(2850mm)を生かした、「クラウン エステート」の広々としたキャビン。インテリアカラーは「サドルタン」(写真)を含む全3色から選べる。
長めのホイールベース(2850mm)を生かした、「クラウン エステート」の広々としたキャビン。インテリアカラーは「サドルタン」(写真)を含む全3色から選べる。拡大
「クラウン エステート」の荷室容量は570~1470リッター。後席の背もたれを倒した際の奥行きは2mに達する。
「クラウン エステート」の荷室容量は570~1470リッター。後席の背もたれを倒した際の奥行きは2mに達する。拡大

運転を楽しみたいなら……

スポーツも、まあわかる。小さく低く車体をつくり、軽快な走りを目指したモデルだ。確かに運転してみると、「これがクラウンなのか!?」と思うほどキビキビと走ることに驚かされる。峠道をグイグイ曲がる感じはまるでスポーツカーだ。

まったくもってクラウンらしくないクルマではある。筆者だって、5年前なら「これがクラウン」といわれても信じなかっただろう。だけど、クラウンの新しい道を模索するという意味ではこういうのもアリなのかもしれない。

そんなスポーツは、はっきり言って後席が広くはない。ラゲッジスペースも十分な広さではあるけれど、他のモデルに比べると狭い。でも、そういった割り切りのうえで得たものがドライバビリティーに優れた楽しいハンドリングなのだ。「走りを最優先して車体設計したクラウン」なんて確かに新しい。車内は狭くてもいいからとことん運転を楽しみたい……なんて人にオススメである。狭いといっても、車体はそれなりに大きいので、「他のクラウンに比べたら狭い」くらいの話でしかないのだけれど。

4兄弟のなかでは最も「クラウン」らしくないと思われるであろうデザインの「クラウン スポーツ」。しかし皮肉なことに、同モデルが兄弟一の売れっ子となっている。
4兄弟のなかでは最も「クラウン」らしくないと思われるであろうデザインの「クラウン スポーツ」。しかし皮肉なことに、同モデルが兄弟一の売れっ子となっている。拡大
「クラウン スポーツ」のキャビンは他の兄弟に比べてやや狭い。室内長(1850mm)は、「クラウン クロスオーバー」の1980mmに対して130mm短縮されている。
「クラウン スポーツ」のキャビンは他の兄弟に比べてやや狭い。室内長(1850mm)は、「クラウン クロスオーバー」の1980mmに対して130mm短縮されている。拡大
「クラウン スポーツ」は、ベーシックなハイブリッド車のほか、走りのパフォーマンスを重視したプラグインハイブリッド車「クラウン スポーツRS」(写真)もラインナップされている。
「クラウン スポーツ」は、ベーシックなハイブリッド車のほか、走りのパフォーマンスを重視したプラグインハイブリッド車「クラウン スポーツRS」(写真)もラインナップされている。拡大

クロスオーバーは〝使える個性派”

よく考えると、4モデルのなかで一番わかりにくいのはクロスオーバーだったりして。

でも、「今までのクラウンじゃ退屈すぎる。だけどセダンボディーがいい」なんていう人にはぴったりだろう。実用性も高いし、特に強調しておきたいのは着座位置が“低すぎず高すぎず”の絶妙な高さで乗り降りがしやすいってことだ。

というわけで、4モデルで構成するクラウンシリーズがもたらすメリットは、4モデルでお互いの短所を補完しあうことで個性を強調したモデルがつくれたことに尽きる。

面白いのは販売実績で、エステート以外の3モデルがそろった2024年通年の実績を見るとクロスオーバーが1万6980台、スポーツが3万5700台、そしてセダンは9420台。最もクラウンらしくないスポーツが一番売れている(しかも2番手クロスオーバーのダブルスコア!)なんて、予想外すぎではないだろうか。結局のところ、実際に買う顧客は伝統なんて気にせずに気に入ったモデルを選ぶということなのだろう。それにしてもスポーツが一番人気とは。

(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

4兄弟の先鋒(せんぽう)として市場投入されたのは、セダンをリフトアップしたかのようなスタイルの「クラウン クロスオーバー」だった。
4兄弟の先鋒(せんぽう)として市場投入されたのは、セダンをリフトアップしたかのようなスタイルの「クラウン クロスオーバー」だった。拡大
「クラウン クロスオーバー」には、アウトドアな世界観を盛り込んだ個性的な特別仕様車「RS“ランドスケープ”」も設定された。
「クラウン クロスオーバー」には、アウトドアな世界観を盛り込んだ個性的な特別仕様車「RS“ランドスケープ”」も設定された。拡大
4車種展開とはいえ、同時発売とはならなかった「トヨタ・クラウン」シリーズ。ようやくそろったものの、最後発の「クラウン エステート」は人気の過熱から受注停止状態となっている。
4車種展開とはいえ、同時発売とはならなかった「トヨタ・クラウン」シリーズ。ようやくそろったものの、最後発の「クラウン エステート」は人気の過熱から受注停止状態となっている。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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