4種そろった「トヨタ・クラウン」 どれがどんな人に向いている?
2025.05.19 デイリーコラム保守派だって安心できる
「シリーズで構成しているから、とがったクルマをつくれるんですよ。例えば『クラウン スポーツ』は、走りの楽しさを磨き上げて運転をとことん楽しみたいユーザーに向けるいっぽうで、『後席や荷室が狭い』という人には、ぜひ『クラウン エステート』をどうぞと言えますから」
先日出かけた、クラウン エステートのメディア向け試乗会。そこで開発者が発し、筆者が妙に腑(ふ)に落ちたのがそんな言葉だ。
ご存じのように新型クラウンは4つのモデルで構成されている。「クラウン クロスオーバー」、「クラウン」(セダン)、クラウン スポーツ、そして最後のピースとなるクラウン エステートだ。その4種すべてが出そろったところで「それらの特徴とマッチする人を浮き彫りにする」というのが今回のコラムの主旨である。
最もわかりやすいのがセダンだろう。正統派セダンかつ正統派クラウンであり、従来のクラウンを乗り継いできたような、風格や格式を求めるユーザーにピッタリはまる。「クラウンは後輪駆動じゃないと認めない」と一家言を持つ、意識が高いクラウン愛好者でも、セダンなら後輪駆動を受け継いでいるので安心していい。
エステートはグランドツアラー
エステートもわかりやすい。SUVを装ってはいるものの、その神髄は広いラゲッジスペースを備えたステーションワゴンである。後席を倒すと奥行きが2mになる広い荷室を持ち、ワゴンとしての機能性が高いのが最大の特徴だ。
確かに純粋なステーションワゴンではなく車高を上げたクロスオーバーSUVだけれど、それは今どきのトレンドに合わせた演出くらいに考えておけばオーケー。積載性能は現行クラウンシリーズのなかで最も高い。
筆者が思うのは、このエステートは最高のグランドツアラーだってこと。ロングツーリングとなれば荷物が増えがちだが、荷室が広いエステートなら安心だ。後席もゆったりしているし。
そのうえで、注目は操縦性。高速巡航性能を高め、長距離・長時間運転しても疲れにくいように仕立てられているのだ。そうやって操縦性や乗り心地の方向性を大きく分けられたのも、クラウンシリーズが1モデルではなく4モデルで構成されていればこそだ。
ちなみにこのエステート、設計的には「クロスオーバーと多くの部分を共用するワゴン版」と考えておけばいい。ホイールベースやルーフの高さも同じだし、乗員の座らせ方もほぼ共通だ(そして余談だが、セダンを除く3モデルはダッシュボードの基本設計とフロントウィンドウも共通である)。
運転を楽しみたいなら……
スポーツも、まあわかる。小さく低く車体をつくり、軽快な走りを目指したモデルだ。確かに運転してみると、「これがクラウンなのか!?」と思うほどキビキビと走ることに驚かされる。峠道をグイグイ曲がる感じはまるでスポーツカーだ。
まったくもってクラウンらしくないクルマではある。筆者だって、5年前なら「これがクラウン」といわれても信じなかっただろう。だけど、クラウンの新しい道を模索するという意味ではこういうのもアリなのかもしれない。
そんなスポーツは、はっきり言って後席が広くはない。ラゲッジスペースも十分な広さではあるけれど、他のモデルに比べると狭い。でも、そういった割り切りのうえで得たものがドライバビリティーに優れた楽しいハンドリングなのだ。「走りを最優先して車体設計したクラウン」なんて確かに新しい。車内は狭くてもいいからとことん運転を楽しみたい……なんて人にオススメである。狭いといっても、車体はそれなりに大きいので、「他のクラウンに比べたら狭い」くらいの話でしかないのだけれど。
クロスオーバーは〝使える個性派”
よく考えると、4モデルのなかで一番わかりにくいのはクロスオーバーだったりして。
でも、「今までのクラウンじゃ退屈すぎる。だけどセダンボディーがいい」なんていう人にはぴったりだろう。実用性も高いし、特に強調しておきたいのは着座位置が“低すぎず高すぎず”の絶妙な高さで乗り降りがしやすいってことだ。
というわけで、4モデルで構成するクラウンシリーズがもたらすメリットは、4モデルでお互いの短所を補完しあうことで個性を強調したモデルがつくれたことに尽きる。
面白いのは販売実績で、エステート以外の3モデルがそろった2024年通年の実績を見るとクロスオーバーが1万6980台、スポーツが3万5700台、そしてセダンは9420台。最もクラウンらしくないスポーツが一番売れている(しかも2番手クロスオーバーのダブルスコア!)なんて、予想外すぎではないだろうか。結局のところ、実際に買う顧客は伝統なんて気にせずに気に入ったモデルを選ぶということなのだろう。それにしてもスポーツが一番人気とは。
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
アナタのETCが使えなくなる? ユーザーに負担を強いる「ETC 2030年問題」を断罪する 2026.2.20 古いETC車載器が使えなくなるという「ETC 2030年問題」。その理由は「セキュリティーを高めるため」とされているが、車載器の交換はもちろんユーザーの負担だ。罪のない利用者に、高速道路はどこまで負担を強いるのか? 首都高研究家の清水草一がほえる。
-
レアアースの供給不安から中古車価格が高騰傾向に そんな市況での狙い目モデルは? 2026.2.19 ハイブリッド車やBEVの製造はもちろんのこと、日本のモノづくりに欠かせないレアアース。国際情勢がいまいち安定せず供給不安が広がるなか、中古車は再び高騰傾向に。そんな現状でもお得に検討できるモデルを下町の中古車評論家・玉川ニコが紹介する。
-
ストロングハイブリッドか1.8ターボか 新型「フォレスター」の悩ましいパワートレイン選択に雪道で決着をつける 2026.2.18 新型「スバル・フォレスター」には2.5リッターハイブリッドと1.8リッターターボの2つのパワートレインが設定されている。ローンチ時からの人気は前者だが、果たして後者の利点は「低価格」だけなのか。雪道をドライブして考えた。
-
イタリアの跳ね馬はiPhoneになる!? フェラーリはなぜ初BEVのデザインを“社外の組織”に任せたか? 2026.2.16 フェラーリが初の電動モデル「ルーチェ」の内装を公開した。手がけたのは、これまで同社と縁のなかったクリエイティブカンパニー。この意外な選択の真意とは? 主要メンバーにコンタクトした西川 淳がリポートする。
-
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る 2026.2.13 いよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。
-
ハーレーダビッドソン2026年モデル発表会の会場から
2026.2.20画像・写真ハーレーダビッドソン ジャパンは2026年2月20日、2026年モデルのラインナップの一部を、東京・世田谷区にある二子玉川ライズ スタジオ&ホールにおいて披露した。会場に並んだ展示車両を写真で紹介する。 -
アナタのETCが使えなくなる? ユーザーに負担を強いる「ETC 2030年問題」を断罪する
2026.2.20デイリーコラム古いETC車載器が使えなくなるという「ETC 2030年問題」。その理由は「セキュリティーを高めるため」とされているが、車載器の交換はもちろんユーザーの負担だ。罪のない利用者に、高速道路はどこまで負担を強いるのか? 首都高研究家の清水草一がほえる。 -
トライアンフ・トライデント800(6MT)【海外試乗記】
2026.2.20試乗記英国の名門トライアンフから、800ccクラスの新型モーターサイクル「トライデント800」が登場。「走る・曲がる・止まる」のすべてでゆとりを感じさせる上級のロードスターは、オールラウンダーという言葉では足りない、懐の深いマシンに仕上がっていた。 -
シボレー・コルベット クーペ3LT(MR/8AT)
2026.2.20JAIA輸入車試乗会2026JAIA輸入車試乗会より、孤高のアメリカンスポーツ「シボレー・コルベット」の魅力をリポート。より強烈な「Z06」やハイブリッド4WDの「E-Ray」もイイけれど、“ヴェット”はやっぱり素が一番? 今や貴重な自然吸気のプッシュロッド式V8 OHVの滋味に触れた。 -
レアアースの供給不安から中古車価格が高騰傾向に そんな市況での狙い目モデルは?
2026.2.19デイリーコラムハイブリッド車やBEVの製造はもちろんのこと、日本のモノづくりに欠かせないレアアース。国際情勢がいまいち安定せず供給不安が広がるなか、中古車は再び高騰傾向に。そんな現状でもお得に検討できるモデルを下町の中古車評論家・玉川ニコが紹介する。 -
第949回:「戦場のスパゲッティ」は実在するのか? イタリア陸軍ショップで聞いた
2026.2.19マッキナ あらモーダ!世界屈指の美食の国、イタリア。かの国の陸軍は、戦場でもスパゲッティを食べるのか? 30℃でも溶けにくいチョコレートに、イタリア伝統のコース構成にのっとったレーション(戦闘糧食)などなど、エゼルチト(イタリア陸軍)のミリメシ事情に大矢アキオが迫る。










































