売上も利益も大幅増目指す スズキが2030年までの経営計画を発表

2025.02.20 自動車ニュース webCG 編集部
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「新中期経営計画」の詳しい内容について話す、スズキの鈴木俊宏 代表取締役社長。この日は質疑応答までを含めた90分間、社長が一人で説明にあたった。
「新中期経営計画」の詳しい内容について話す、スズキの鈴木俊宏 代表取締役社長。この日は質疑応答までを含めた90分間、社長が一人で説明にあたった。拡大

スズキは2025年2月20日、東京都内で記者会見を開き、「新中期経営計画」を発表した。

会場には、2025年に市場投入される予定の新型BEV「eビターラ」が展示された。同モデルはトヨタにもOEM供給される。
会場には、2025年に市場投入される予定の新型BEV「eビターラ」が展示された。同モデルはトヨタにもOEM供給される。拡大
発表会のスライド資料から。スズキが掲げる2030年度の経営目標は「売上8兆円、営業利益8000億円、ROE13.0%」。大幅な成長が見込まれている。
発表会のスライド資料から。スズキが掲げる2030年度の経営目標は「売上8兆円、営業利益8000億円、ROE13.0%」。大幅な成長が見込まれている。拡大
トヨタとのアライアンスについて言及する鈴木社長。いわく「トヨタは競争するうえでのライバルであり、パートナーでもある。これからもお互いを尊重し合ってやっていくつもりです」。スズキは海外で、「フロンクス」や「バレーノ」もトヨタに供給している。
トヨタとのアライアンスについて言及する鈴木社長。いわく「トヨタは競争するうえでのライバルであり、パートナーでもある。これからもお互いを尊重し合ってやっていくつもりです」。スズキは海外で、「フロンクス」や「バレーノ」もトヨタに供給している。拡大
こちらは“ワークモビリティー”のコンセプトモデル「Versatile micro e-Mobility Platform concept」。スズキが培ってきた電動車いすの技術を応用した製品で、さまざまなロボットの足まわりとなる“電動モビリティーベースユニット”である。
こちらは“ワークモビリティー”のコンセプトモデル「Versatile micro e-Mobility Platform concept」。スズキが培ってきた電動車いすの技術を応用した製品で、さまざまなロボットの足まわりとなる“電動モビリティーベースユニット”である。拡大
スズキはマリン事業も長く手がけており、2025年には60周年を迎える。写真は排気量2リッターの船外機「DF140B T(X)」で、サステイナブル燃料を用いた実証実験も行われている。
スズキはマリン事業も長く手がけており、2025年には60周年を迎える。写真は排気量2リッターの船外機「DF140B T(X)」で、サステイナブル燃料を用いた実証実験も行われている。拡大

2021年の時点で、「2026年3月期に売上4.8兆円、自己資本利益率(ROE)8.0%」を目標としていたスズキ。2024年3月期で同5.4兆円、11.7%を達成するなど各目標値を前倒しでクリアしたことに加え、電動化をはじめとするカーボンニュートラルの取り組みが進展したことや、海外マーケットをはじめとする事業環境の変化などにより、「戦略の再考が必要になった」との判断から、1年前倒しするかたちで新たな中期経営計画が立てられた。

この計画は2025年度から2030年度までの期間を視野に入れたもので、スローガンは「By Your Side」。そこには「お客さま、社会にとって身近で頼りになる存在であり続ける」「生活に密着したインフラモビリティーを目指す」という同社の理念が込められているという。

今回のゴールとなる2030年度の経営目標は「売上8兆円、営業利益8000億円(営業利益率10%)、ROE13.0%」。さらに2030年代前半には、営業利益率10%以上、ROE15.0%以上という数値が設定されている。

そのためにスズキは、「小・少・軽・短・美」に基づく全過程におけるエネルギーの極少化と、製造からリサイクルまで 「資源リスクと環境リスクを極少化させる技術」の構築に取り組む予定だ。

四輪事業については、2031年3月期(2030年度)の目標販売台数を420万台に設定(2024年3月期実績は316万台)。同じく営業利益は、四輪事業のみで2024年3月期の3982億円から大幅増となる7000億円を目指す。

スズキが「いまでも成長市場」としている日本市場については、ユーザーの嗜好(しこう)と市場に合った商品を投入しラインナップを拡充する計画で、「スーパーエネチャージ」を投入するなどハイブリッド車(HEV)を強化。電気自動車(BEV)については、2025年度中に「eビターラ」(トヨタにもOEM供給予定)と軽規格商用BEVの計2モデルを導入し、2030年までには6モデルを展開する予定。同年のラインナップ比率は、BEVが20%、HEVが80%になるものとみられる。

そうした説明にあたった鈴木俊宏 代表取締役社長は、「必ずしもBEVが“正解”とは思っていない」ともコメント。「BEVのような新製品がどういうトレンドで伸びていくのかしっかり見定めなければならないし、ある程度は機種を絞って集中的に販売活動をすることも考えられる」などと補足した。

また、同社にとっての最重要市場であるインドについては、かの地におけるリーディングカンパニーとして“シェア50%”を目指す。同国内の需要を賄うため、また、中東・アフリカなど道路環境が(インドと)似た国や、中南米・メキシコなどへの輸出拠点として拡大するために、年間400万台の生産体制を目指すことが告げられた。鈴木俊宏社長によれば、「何が何でも400万台を達成するという意味ではなく、それを視野に、市場の様子を見つつ進める」とのこと。「インド1カ国への依存が高まっているという状況は(中国やアメリカの動向で浮き沈みしている)他社と同じ危険をはらんでおり、常に市場を観察するアンテナの感度を高めて取り組んでいく必要がある」とも続けた。

もうひとつの柱である二輪事業については、2031年3月期の目標を「販売台数254万台、営業利益500億円」に設定。「お客さまの立場になって、お客さまが求める商品を適切な価格でお届けする」「最高出力などのスペックだけに捉われず、全体としてのバランスが最適な商品や、持っているだけでもワクワクする商品を提供していく」とのことだった。

2025年に60周年を迎えるマリン事業については、北米市場を中心とした“楽しむユーザー”向けに中大型モデルを拡販。アジア市場等の“働くユーザー”向けにも環境に優しい4ストローク化を推進し、2031年3月期で350億円の営業利益を見込む。

スズキはさらに、「2040年度には収益面で既存事業と並び立つ柱になる取り組み」として、同社の技術的な強みを生かしたサービスモビリティー(公共交通サービス、ワークモビリティーなど)や、エネルギー領域における新事業(バイオガス、蓄電など)の立ち上げも計画。その実現に向けてスタートアップとの協業も進めていることも紹介された。

(webCG)

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