スズキ・エブリイワゴンPZターボスペシャル ハイルーフ(4WD/CVT)
4ドアのジムニー 2024.04.24 試乗記 トランスミッションと4WDシステムに改良が施されたスズキの軽乗用車「エブリイワゴン」に試乗。CVTの採用による優れた燃費と静粛性、そしてシーンに応じて走行モードを切り替えできる電子制御式4WDの悪路走破性能を、“野生の林道”を交えたコースで確かめた。進化した4WD性能を未舗装路で試す
マイナーチェンジを受け、トランスミッションが4段ATからCVTに変更されたスズキ・エブリイワゴンを試乗しながら、日常生活にはこれで十分だと結論づける。東京湾アクアラインで横風にあおられて怖い思いをしたものの、それ以外は乗り心地、静粛性、直3ターボエンジンの動力性能とも、普段使いにあたっての不満はない。
ひとつ試していないのが、電子制御式の4駆システムだった。路面状況に応じて「2WD」「4WD AUTO」「4WD LOCK」の3つのモードをスイッチ操作で切り替えることができる機能だ。
本格的なオフロードコースは望むべくもないけれど、ちょっとした未舗装路で4駆を試してみたい。そんなことを考えていた房総半島の山中で、ひょんなことから知り合った地元の猟友会の方が、「いつも猟犬のトレーニングをしているあたりに、誰が入ってもいい未舗装の林道がある」と教えてくれた。
ありがたいことに、先代の「ジムニー」で案内してくれるという。先導してくださるJB43ジムニーに追従して約10分、「ここから林道に入ってしばらく行くと、Uターンできる場所があるから」と、送り出される。
勾配はそれほどでもないけれど、未舗装で、ところどころにぬかるみがある林道を行く。直3エンジンを運転席と助手席の下に配置するエブリイワゴンは、デフォルトでは後輪駆動。電子制御式4WDのモード選択にあたって、トリセツには次のようにある。
「雨で滑りやすい時など、路面状況に応じて駆動力を制御する『4WD AUTO』、山間部の未舗装路などで力を発揮する『4WD LOCK』、スイッチで3つの走行モードを切り替えできる」
ということで、トリセツがおっしゃるとおりに、4WD LOCKを選ぶ。
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頼りになるトラクション性能
林道はジャスト軽自動車サイズの道幅で、わだちもまぁまぁ深い。ところどころにぬかるみがあるほか、突然、路肩が崩れている箇所がある。SUVの試乗会で自動車メーカーが設定した、「これだったらかなりのマージンをもって走破できるだろう」というオフロードコースと違って、なかなかスリリングだ。言ってみれば、養殖のオフロードコースではなく野生の林道で、なるほど、ここはジムニーの独壇場だろう。
この林道を、エブリイワゴンは粛々と走る。時折ぬかるみにタイヤをとられてズルっとくるけれど、すぐに体勢を立て直す。エブリイワゴンの4駆システムは、センターデフを備える本格的なフルタイム4駆システムではなく、プロペラシャフトの中間に位置する油圧式カップリングが前後アクスルを直結の状態にするもの。仕組みとしては簡便なものであるけれど、その効果は文句ない。
もうひとつ、左右どちらかの車輪が空転すると、空転した側のタイヤにブレーキをかけ、逆側のタイヤの駆動力を確保する機能も備わっている。スズキが「ぬかるみ脱出アシスト」と呼ぶこれも、効果的に作動している。デパーチャーアングルやアプローチアングルの問題があるから、エブリイワゴンがジムニーのように急勾配を登り下りすることは難しいだろう。けれども山あいの林道に入って作業をする方や、雪国で暮らす方にとって、このトラクション性能は強い味方になるはずだ。
正直、試乗前にオプションリストに記された価格を見た時には、「なかなかの値段だな」と思った。ただし、このトラクション性能と、ハイトワゴンならではの居住性と積載能力を組み合わせたモデルが希少であることを思えば、価格にも納得した。
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実用燃費は期待以上
電子制御式4WDだけでなく、新たに設定されたCVTと直3ターボエンジンとの組み合わせもよくできていた。軽商用車のエブリイには4段AT仕様も残っているものの、軽乗用車のエブリイワゴンは全車がCVTとなった。
エンジンとCVTのマッチングは上々で、前述したような未舗装の林道で匍匐(ほふく)前進するような走り方でも、極低回転域から有効なトルクを車輪に伝えるし、タウンスピードであればエンジン回転が先に上がって後から車速がついてくるように感じるCVT特有の悪癖もみられない。
高速道路の合流などで、ガツンとアクセルペダルを踏んだ時にはリニアに車速が上がらない、いわゆるラバーバンドフィールを感じる。また、こうした局面では工作機械っぽいエンジンのノイズが気になる。ただし、そこにさえ目をつぶれば、一般道レベルの速度域なら加速は滑らかだし、80km/hから100km/hの巡航でのノイズレベルも低い。
CVT採用の理由について、スズキは燃費性能や静粛性能を高めることを目的にしたとアナウンスしている。静粛性については明らかに向上しているし、今回の試乗での車載計による燃費は14.7km/リッターと、WLTCモードの燃料消費率15.1km/リッターに近い。林道を走ったり高速道路で踏み込んで加速フィールを試したり、燃費を気にせずに乗った割にはまずまずの値だ。ユーザーにとってもハッピーなマイナーチェンジだったといえるだろう。
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ジムニーのマインドも漂う
乗り心地で感心したのは、高速道路でのフラット感だ。一部の軽自動車は、市街地での乗り心地はいいのに高速道路を巡航すると上下動が収まらない、いわゆるダンピング不足が露呈するケースがある。高速道路でふわふわするのだ。けれどもこのクルマの場合は、路面の不整やつなぎ目を乗り越えた後の揺れをビシッと収めるので、気持ちよくドライブできる。
ただし冒頭で記したように、東京湾アクアラインでは横風にあおられた。試乗車は全高1910mmのハイルーフ仕様。直接比べたわけではないので、全高1815mmの標準ルーフ仕様とどれだけの差があるのかはわからないけれど、進路を乱されて何度かヒヤリとしたことは事実だ。
いっぽう、背が高いだけあって室内空間には余裕があり、ハイルーフ仕様だと室内高は1420mm確保されている。文部科学省の資料によれば、男女ともに10歳のお子さんの平均身長は140cm程度だから、立ったまま着替えができるということになる。
シートアレンジメントは軽自動車の得意技で、このクルマもその例に漏れず、助手席を前方に倒したり、前後席をフルフラットにしたり、いろいろな可能性がある。しかも、力を入れずに、簡単な操作で座席をアレンジできるのがうれしい。
といった具合に、軽ハイトワゴンとしての実用性にも光るものがある。ただし、このクルマを唯一無二の存在にしているのが、電子制御式の4駆システムだ。働くクルマとして頼りになるということは、雪遊びや波乗りなどの遊びグルマとしては無敵の存在ということ。このクルマをベースに、アウトドア仕様や車中泊仕様を仕立てたら楽しいのではないだろうか。
カスタマイズしたくなることも含めて、4ドアのジムニーっぽい存在なのだ。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
スズキ・エブリイワゴンPZターボスペシャル ハイルーフ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1910mm
ホイールベース:2430mm
車重:1050kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64PS(47kW)/6000rpm
最大トルク:95N・m(9.7kgf・m)/3000rpm
タイヤ:(前)165/60R14 75H/(後)165/60R14 75H(ダンロップSPスポーツ230)
燃費:15.1km/リッター(WLTCモード)
価格:208万3400円/テスト車=223万4760円
オプション装備:バックアイカメラ付きディスプレイオーディオ(5万2800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(1万7380円)/ETC車載器(2万1340円)/ドライブレコーダー(5万9840円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:387km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:273.9km
使用燃料:18.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.5km/リッター(満タン法)/14.7km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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