メーカー団体もついに本気になった? 日本における「自動運転」の未来と現在地
2026.10.02 デイリーコラム自動運転の普及における自工会の役割
日本の自動車メーカー14社で構成される日本自動車工業会(自工会)では、毎年3月、5月、9月の年3回、記者会見を行っている。オフィシャルサイトで履歴を見ることができるが、2026年9月17日の会見では、「自動運転を前提とした交通システム確立」というテーマが選ばれた。
トヨタの佐藤恒治氏を会長に迎えてからの自工会では、世界的な競争環境の激化や技術変革の加速を踏まえた「新7つの課題」が記者会見の主題となっている。今回の「自動運転を前提とした交通システム確立」もその5つ目に記されていたもので、一連の流れからすると、事前に予定されていた内容だと思われる。が、同じ9月にはテスラがロボタクシー専用車両「サイバーキャブ」を日本で公開したり(参照)、グーグルから独立したウェイモが来年中に東京都内でロボタクシー運行を目指すと発表したりしたので、くしくもこれは黒船襲来(?)を受けての日本側の回答というかたちにもなった。
その内容をおさらいすると、自動運転の普及を「事故死ゼロ」「移動の自由」という2つの目標を掲げて推進するというものだ。開発と社会実装に際しては、競争領域と協調領域があるなかで、自工会は後者を担当するという説明があった。個々のメーカーが開発を進めている車両側の話は競争領域であり、自工会はそれをバックアップするインフラの整備を進めていく、というわけだ。課題としてはインフラ技術の進化、社会基盤の整備、市場浸透施策の3つを認識しており、これを推進して国際標準化につなげたいとのことだった。
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目指すは「死亡事故ゼロ」の自動運転の実現
会見でまず響いたのは、事故死ゼロという言葉だ。これについては「究極は事故ゼロだが、まずは事故“死”ゼロが目標」という発言もあった。字面だけ見ると物騒かつ不謹慎な発言にも思えるが、昨今の日本の自動運転かいわいを考えると、これは好ましい方向だろう。
というのも、この国では毎年約2500人が交通事故で亡くなっているというのに、その低減に資するだろう自動運転の普及より、実証実験の過程で起きる、軽微な物損事故を大きく扱う傾向があるからだ。とにかく完璧であることを好み、少しでも落ち度があるとたたくという世論が散見されるが、失敗なくして新しい技術の普及はありえない。その点において、自工会がハードルを上げすぎなかったのは現実的な社会実装への過程を思えばうなずける姿勢ではあるし、こちらのほうが、社会からの信頼も得られるはずだ。
もうひとつ印象に残ったのは、インフラを重視していくという姿勢だ。昨今、自動運転は“ルールベース”から“AIベース”へと、トレンドが急速に移行している。これは「End-to-End(E2E)」といって、車両周囲の認識や判断、操作などを人工知能が請け負うものだが、こちらのシステムでは高精度デジタルマップが搭載されないのが基本となる。歩行者、自転車、自動車の通行空間の区分けが貧弱であるなど、わが国の道路環境を考えたうえで安心安全を目指すなら、インフラでのサポートは必須。また交通状況が日本以上にカオスなアジアへの展開でもアピールポイントになりそうだ。
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まずは導入に積極的な自治体から
一方で気になったのは、彼らが自動運転システムを自家用車で展開させていくつもりなのか、ロボタクシーに代表される、移動サービスとしての展開を想定しているのか、明言しなかったことだ。
自工会としては、ユーザーをつなぎ止めるフックとして、自家用車の自動運転に含みを持たせておきたい気持ちはあるのだろう。しかしインフラについては全国一律ではなく、国が指定した重点地域(国土交通省の「自動運転社会実装先行的事業化地域」などを指すと思われる)を参考にするという話もあったので、まずは移動サービスからの実装ではないかと思われる。
そもそもマイカーレベルでは、ユーザーのクルマの使い方や自動運転を要望する期待の低さを思うに、当面は「レベル2++」どまりではないかと思うのだ。一方、移動サービスの分野で見ると、自動運転の普及は公共交通が貧弱で運転手不足に悩む地方では確実に望まれるし、交通量の少ない地方のほうが制御もしやすそうだ。
筆者も茨城県日立市や石川県小松市などで自動運転のモビリティーを体験したことがあるが、まずはそうした、以前から自動運転に積極的だった自治体から先行導入し、安心安全を確立したうえで全国展開、そしてアジアに進出というステップが好ましいのではないか。
(文=森口将之/写真=日本自動車工業会、小松市/編集=堀田剛資)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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