元F1王者ライコネン、ラリーの世界で勝てるのか!?
2010.02.15 自動車ニュース元F1王者ライコネン、ラリーの世界で勝てるのか!?
2010年の世界ラリー選手権(WRC)に2007年のF1世界選手権チャンピオン、キミ・ライコネンが出場。その開幕戦、2月11日〜14日のスウェディッシュラリーには、シトロエンのジュニアチームの「C4WRC」で参戦した。
その結果のほうは……。果たしてライコネンはWRCでやっていけるのか? 開幕戦の戦いぶりと今後についてリポートする。
■頂点を極めたルーキー
セバスチャン・ローブとダニエル・ソルドの「C4WRC」を投入するシトロエン、そしてミッコ・ヒルボネン、ヤリ-マティ・ラトバラら若手フィンランド人の「フォーカスRS WRC」を送り込むフォード。2010年のWRCは、2大ワークスがドライバー、マシンともに昨年と同じ体制でエントリーする。
そんななか、なんといっても一番の注目選手は、シトロエンのセカンドチーム(シトロエン・ジュニアチーム)から参戦する元F1王者、キミ・ライコネンだろう。
彼はもともとラリーが大好きで、「フィアット・グランデプント アバルト S2000」を駆ってその活動を始めたのは、なんとフェラーリ在籍中の2009年から。結果はリタイアに終わったものの、同年には地元イベントのラリーフィンランドでWRCデビューを果たした。そして2010年のF1活動を休止するや、WRCにチャレンジすることになったのだ。
チームはシトロエン・ジュニアチームで、マシンはC4WRC。つまり、6年連続ドライバーズチャンピオンのローブと同じパッケージ。WRCファンのみならず、F1ファンの関心までもが、いやがおうにも高まるなか、2月11日、スウェーデン南西部の地方都市、カールスタッドで2010年のWRC開幕戦、スウェディッシュラリーが幕を開けた。
■雪のラリーに悪戦苦闘
シェイクダウンで10番手タイムをマークしたライコネンは、競馬場を舞台にしたオープニングのスーパーSSでもリズミカルな走りを披露、トップから5.1秒遅れの8番手タイムをマークした。しかし翌12日、林道ステージを舞台に本格的な競技が始まると「スタッドタイヤのグリップの仕方が分からないから、僕にとってスノーラリーが一番難しい」というコメントのまんま、苦しい展開に。10番手〜14番手に留まりつつ迎えたSS6では、ついにコースアウトをきっし、25分のタイムロス。SS7では9番手タイムをマークしたものの、デイ1を45位でフィニッシュすることとなった。
翌13日のデイ2でも、SS10でコースアウトし32番手に低迷。が、「シェイクダウンから細かいセッティングを試してきたけれど、ようやくマシンのフィーリングが良くなってきた」と語ったとおり、SS15ではトップから約28秒遅れながら、6番手タイムをマーク。ライコネンと同様にC4WRCで挑む2003年のWRCチャンピオン、ペター・ソルベルグに匹敵するタイムを叩きだした。結局、デイ2を35位でフィニッシュしたライコネンは、翌日のデイ3でもSS18でコースアウト。11番手タイムの連発で足踏み状態。最終ステージのSS21こそ7番手タイムをマークしたものの、ライコネンにとって記念すべき開幕戦は、30位フィニッシュという成績で幕を閉じた。
■驚異のパフォーマンス
かように一進一退のラリーを見せたライコネンだが、「今回は、経験を重ねるために完走を重視していた。実際に、ラリーではいろいろなことを吸収することができた」と、得るところは多かったもよう。シトロエン・ジュニアチームのマネージャー、ブノワ・ノジーも「キミは驚異的なスピードで進化している」とコメントを残した。
たしかに、SS15の6番手タイムなど、ここ一発の速さも見られたが、一方で課題も浮き彫りになった。それは本人が語るように、「ペースノートを使ったドライビングにまだ十分に対応しきれていない」ということで、これから上位争いを展開するためには必須のスキルだ。逆に言えば、目視による有視界走行だけでこれだけの走りができるのだから、ペースノート走法をマスターすればトップ争いに加わってくることも期待できる。
「まだグラベル(非舗装路面)テストを行っていないけれど、次戦までにいろんなことを学びたい」と前向きに語るライコネン。シーズン初のグラベル戦でどのような走りを披露するのか? 第2戦のメキシコ以降、ライコネンの進化に期待したい。
なお、肝心のWRC開幕戦スウェディッシュラリーは、フォードのエース、ヒルボネンが優勝。2位はシトロエンのエース、ローブ。フォードのセカンドドライバー、ラトバラが3位表彰台を獲得している。
(文と写真=廣本泉)