三菱パジェロロング エクシード(4WD/5AT)/スーパーエクシード(4WD/5AT)【試乗速報】
胸を張って選べるか? 2008.10.01 試乗記 三菱パジェロロング エクシード(4WD/5AT)/スーパーエクシード(4WD/5AT)……394万8000円/489万8250円
ディーゼルへの関心が高まるなか、「三菱パジェロ」はマイナーチェンジとともにディーゼルモデルをラインナップに復活させた。喜ぶべきニュースといいたいが、リポーターには気になるところがあるという。
燃費メリットは十分ある
2004年にラインナップから外れて以来、「パジェロ」に久々に設定されたディーゼルエンジンは、当時使われていたものの大幅改良版である。MMT=ミツビシ・モーター・タイランドで生産される、この4M41型ユニットは、直列4気筒にして実に3200ccという大きな排気量を持つ。
もちろん、その内容は大幅に刷新されている。最大のトピックは、最大1800barの高圧燃料噴射を可能にしたコモンレール式燃料噴射システムを採用したこと。エンジン本体ではほかにも、燃焼室やポート形状の最適化、スワールコントロールバルブの追加、そしてクールドEGRや意外にもIHI製だという可変ジオメトリー式ターボチャージャーの搭載などが行われている。
排気系には、従来の酸化触媒にDPFとNOx吸蔵還元触媒がプラスされた。その結果として、最高出力170ps/3800rpm、最大トルク37.8kgm/2000rpmという出力と、現行の排ガス規制である「新長期規制」をクリアするクリーン性を獲得。PMに関しては「ポスト新長期」対応相当の数値を記録しているという。
また、アイドリング回転数を下げ、ATFウォーマーを採用するなどなどの対策によって、燃費は最上級のSUPER EXCEEDの10・15モードで9.8km/リッターを達成している。最大トルク34.5kgmと近い数値の3.8リッターガソリンが7.6km/リッターに留まり、しかも軽油より20円は高いプレミアムガソリンを要求すると考えれば、燃費メリットは十分あるといえそうだ。
騒々しい部類には入るが……
では走りはといえば、まず気になるのが騒音、振動である。各部への吸音材追加、遮音性を高めたカーペットの採用など配慮はしたというが、率直にいって決して静かで滑らかとはいえない。特に停車時にアクセルペダルに伝わる振動は何とかしたいところである。
しかしいったん走り出せば、それもあまり気にならなくなる。回せば静かになるという意味ではなく、むしろ今どきの乗用車用ディーゼルとしては一、二を争うほど騒々しい部類に入るのだが、走りの良さが、それをしばし忘れさせるのである。特に、こだわったという低速域でのドライバビリティは確かに上々で、アクセルの踏み込みに応じて飛び出し感なくスムーズに走り出せる。2000rpmに達するころにはトルクが一段と盛り上がり、引っ張らなくても十分な加速を得ることが可能だ。
しかも、3000rpmを超えるまで踏み込めば、“ガ行の音”をいよいよ高めながらもさらに明確なパンチが出てくる。レッドゾーンは4250rpmからと上は回らないが、トップエンド付近で最後にもうひと伸びがあるなど、このエンジン、なかなか良いキャラクターに仕上がっているのである。
もっとも、何度も繰り返すが、音と振動はまさに従来のディーゼルのそれ。運転するぶんには悪くなくとも、後席に乗る人のことを考えると、もう一歩の改善を望みたい。
打ち出し方に不満
全盛期には月3千台以上も売っていたパジェロも、今では月販300台前後という状況である。かつては販売の大半を占めたという経済的なディーゼル仕様の設定で、そこにテコ入れしたい。それが三菱の考えなのだが、引っ掛かることがひとつだけある。それは、このエンジンが現行の新長期規制対応だということだ。
「日産エクストレイル」が来年から施行されるポスト新長期規制を先取りしたディーゼル仕様の販売を開始し、メルセデス・ベンツもやはり近日デビュー予定の「ML320ブルーテック」では、そこをターゲットにしている。それが今の周囲の状況である。たしかに、十分厳しい現行の規制には余裕をもって適合しており、なにか問題があるわけではない。しかし、このタイミングである。意地悪い見方をすると、ポスト新長期規制をクリアした、ガソリン車にまったく遜色ないディーゼルで勝負しようとしている他メーカーの努力を、パジェロ・ディーゼルはうまく利用しているようにも思えてしまう。
「これでもクリーンなことに変わりはない。ユーザーが気にするのは、それより燃費のほうです」
開発担当氏はそう言うが、パジェロに期待し、誇りを持っているユーザーに対して、それはやはり失礼ではないだろうか? このタイミングで出すクルマならば、やはり他社と同じくポスト新長期規制をクリアして、余計な説明など不要に胸を張って選べるものであってほしかった。繰り返すがクルマが問題なのではない。そうした打ち出し方に対する不満である。
なお、そのポスト新長期規制への対応は、現行モデルの販売が許される2年後までの間に行うという。尿素SCRは使わず、今使っている技術の延長線でクリアできるということだ。
(文=島下泰久/写真=峰昌宏)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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