第10戦ドイツGP「ハミルトンの“一人舞台”」【F1 08 続報】
2008.07.21 自動車ニュース【F1 08 続報】第10戦ドイツGP「ハミルトンの“一人舞台”」
2008年7月20日にドイツのホッケンハイム・リンクで行われたF1第10戦ドイツGP。ルイス・ハミルトンの独走劇に、セーフティカーというスパイスが加わったことで、刺激的な結末を味わうことができた。
■ハミルトンは、なぜピットに入らなかったのか
2年ぶりのホッケンハイムでのドイツGPは、ルイス・ハミルトンの“一人舞台”だったのかもしれない。
今年3回目、通算9回目のポールポジションからスタートすると、ハミルトンはトップのまま、後続のマッサらを引き離しにかかった。18周で最初のピット作業を行うころには11秒ものマージンを築き、このまま最後まで単調なレースが続くのか、と思われた。
様相が一変したのは36周目。トヨタで母国GPを戦っていたティモ・グロックの右リアサスペンションに異変があらわれ、マシンは挙動を乱しピットウォールに激突、すぐさまセーフティカーが出動した。
この徐行走行中に多くが給油とタイヤ交換のためピットへ飛び込むなか、1位ハミルトンとニック・ハイドフェルド、そしてネルソン・ピケJrはコースにとどまり続けた。
予選でトップ10に入れなかったハイドフェルドは、長めの第1スティントを走行中。やはりグリッド後方からスタートしたピケJrは1ストップというなかば捨て身の作戦でレースに臨んでおり、セーフティカー直前に唯一のピット作業を終えていたことで、あとはノンストップで走りきることができた。
両車はセーフティカーをチャンスに結果的に上位でフィニッシュすることに成功した。
では、2度目のピットインを控えたハミルトンは、なぜ優勝をふいにするような策に出たのか。
■過信か、実力か
ハミルトンは、50周目の2度目のピットインまでにリードタイムを15秒まで伸ばしたが、最低でも23秒ないとトップのポジションを守りきれない。案の定、ハイドフェルド、ピケ、マッサ、コバライネンらの後方5位まで順位を落とすことになる。
しかし、ハミルトンはそこから追い抜きを繰り返し、5.5秒もの差をつけて優勝してしまうのだ。早々にチームメイトのコバライネンを抜き、残り10周時点でマッサをヘアピンで料理、ほどなくして“奇跡のP1”周回中のピケをオーバーテイクし、今年誰もがなしえなかった2連勝をやってのけた。
マクラーレンはレース後、ハミルトンをピットに入れなかったことについて、セーフティカー周回がもう少し短く終わると判断し、十分なマージンを築けると思っていたと説明。たしかにセーフティカーラン中は2台を同時にピットインさせねばならず、作業効率は悪くなるのを嫌うのもわかるが、今回の決断はあまりにも危険すぎはしなかったか。そのリスクは、ルイスのスピードによりヘッジされたということだが、それをマクラーレンの過信ととるか、実力ととるか……。
自らピンチをつくり、それを乗り越えたハミルトン/マクラーレンの一人舞台レース、ともいえる1戦だった。
■ハミルトンの優位性
激戦のドライバーズチャンピオンシップは、ハミルトンが2位マッサに4点の差をつけポイントリーダーとなった。ドイツでまったくいいところのなかったライコネンがトップの7点後方、タイトルコンテンダーとして名乗りをあげたかにみえたBMWのロバート・クビサは、10点もの差をつけられて4位だ。
マクラーレンがフェラーリに対するアドバンテージを持ちつつあることは、イギリス、ドイツの結果を見ても明らか。そしてハミルトンは、厳しい状況に追い込まれながら2連勝したことにより、ライバルに対して、精神的な優位を保ちつつある。
次戦はモナコに次ぐ追い抜き困難なハンガリーでの戦い。決勝は8月3日だ。
(文=bg)
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