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第24章:「レトロモビルでも大人気、50歳の『チンクエチェント』」

2007.02.24 FIAT復活物語 大矢 アキオ
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第24章:「レトロモビルでも大人気、50歳の『チンクエチェント』」

ニック・メイソンのコレクションから。フェラーリ512S。
ニック・メイソンのコレクションから。フェラーリ512S。 拡大
同じくニックのフェラーリ312T3 F1。
同じくニックのフェラーリ312T3 F1。 拡大

ニック・メイソンのコレクション

この季節、ヨーロッパの車ファンのお楽しみといえば、パリのヒストリックカー・イベント「レトロモビル」である。
今年も25日まで、約300のクラブ&ショップのスタンドが、ポルト・ド・ヴェルサイユの見本市会場ホール7/3に展開されている。

このイベントには毎年“特集”があり、今年は「スターと著名人のクルマ」だ。各メーカー、クラブとも、それにあわせて展示車をチョイスする。

さらに、特集にちなんだ特別展が据えられるのもお決まりである。今年は、ピンクフロイドのドラマー&パーカッショニスト「ニック・メイソンのコレクション」だ。

彼の“自動車グルメぶり”はこの世界では有名である。今回ドーヴァー海峡を越えて持ち込まれたのは12台で、1957年マセラーティ250F、1962年フェラーリ250GTO、1970年フェラーリ512S、ジル・ヴィルヌーヴが駆った1978年フェラーリ312 T3のイタリア車4台も入っていた。

初日、会場に現れたニック・メイソン。
初日、会場に現れたニック・メイソン。
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こちらは仏アルファ・ロメオ・クラブのブースに展示されたアレーゼ博物館蔵の1967年33ストラダーレ。
こちらは仏アルファ・ロメオ・クラブのブースに展示されたアレーゼ博物館蔵の1967年33ストラダーレ。 拡大

「年車」はイタリアン

レトロモビルでは、特集のほかに毎年「年男」ならぬ「年車」を祝うのも恒例である。昨年は、ルノー4CVの誕生60周年だった。

対して今年、フランス車における節目は、シトロエン2CVの豪華版であるディアーヌの誕生40年と、プジョー・モータースポーツ99年という、出展者がちょっと苦労して探したと思われるネタであった。

対して、話題をさらったのはフィアットである。フィアット・チンクエチェントの誕生50周年だからだ。
実はメルセデスも300SLの50年を祝っていたのだが、やはりファニーなチンクエチェントのほうが共感を呼んだようだ。

事実、フランスの公営テレビが今年レトロモビルのニュースとして採り上げたのも、300SLではなく、チンクエチェントのほうだった。

公式ガイドブックについている会場見取り図を見て驚いた。裏にチンクエチェントが刷られているではないか。ちょっとしたミニポスターにもなる。
さっそくその下に記されているフィアット・クラブ・ド・フランスのスタンドを訪ねてみることにした。

フィアットの余裕の表れか

スタンドには、ヴィニャーレによるカスタムカーやアバルトを含む、チンクエチェント5台が展示されていた。
クラブの設立は遠く1969年というから、「チンクエチェント時代」を実体験している人たちの集まりである。

メンバーのクリスティアン・ドルゲール氏は、「チンクエチェントは新車当時、フランスでセカンドカー、サードカーとして需要がありました。特にパリでは女性に人気がありましたね」と証言する。

フランスでチンクエチェントに「ヨーグルト瓶」というあだ名があるのは有名だが、これも女性たちの間から生まれたものかもしれない。

それにしてもフランス人とイタリア人は、一般的に仲が悪い。なのに、なぜイタリア車を? そんなボクの質問にドルゲール氏は、「私たちフランス人も同じラテン。同じローマに起源を遡る民族として、少なくとも私たちは親愛の情を抱いてますよ」と笑って答えてくれた。

ところで、ボクは数年前に彼らのクラブスタンドを一度訪ねたことがあったが、当時は極めて簡単な展示だった。
それに対して今年はどうだ。広いスタンドに白絨毯が敷かれ、背後には往年のロゴで“500”の文字が照明で浮かび上がっている。なかなか気合が入っている。

彼らによれば、今年はプジョーやシトロエンと同様、フィアットのフランス法人の強力なバックアップが得られたのだという。さきほどのミニポスターもその一環だろう。大手広告代理店レオ・バーネットの制作によるものだ。
もちろん裏には、今年秋発売する新型チンクエチェントの事前演出という、フィアットのストラテジーがうかがえる。

だが見方を変えれば、フィアットもこうしたヒストリックカー愛好者たち、それも外国のクラブをバックアップするだけの余裕ができたことの証である。

以前本欄で紹介したフィアット・グループ社長のセルジオ・マルキオンネは、品質認証機関からやってきた非自動車マン出身だが、そうした根強いファンの醸成を心得ているとは何とも頼もしいではないか。

ちなみにゴーン体制下で事実上初めてのレトロモビルを迎えたルノーは、今年異例の欠席を決めた。

水いらずでお願いしますヨ

ところで、フィアット・クラブ・ド・フランスの関連組織として、クラブ・フィアット500フランスというのがある。
彼らにとって今年最大のイベントは、夏にイタリア・リグーリア州で行われるインターナショナル・ミーティングへの参加だ。

パリからの距離を調べてみると、片道950kmの大遠征である。いくらルーフを全開にしても、狭い車内はクソ暑さ最高潮の季節と思われるが、どうかみなさん、仲良くイタリアまでいらしてください。空冷で水いらず、なんちゃって。こりゃまた失礼致しました。

(文と写真=大矢アキオ-Akio Lorenzo OYA)

クラブ・フィアット・ド・フランス。手前はチンクエチェントをベースにヴィニャーレが製作した1968年ガルミネ。
クラブ・フィアット・ド・フランス。手前はチンクエチェントをベースにヴィニャーレが製作した1968年ガルミネ。 拡大
見取り図の裏はチンクエチェントのポスターになっていた!
見取り図の裏はチンクエチェントのポスターになっていた! 拡大
歓迎してくれたメンバーのミシェル・エスピエ氏(左)とクリスティアン・ドルゲール氏(右)。
歓迎してくれたメンバーのミシェル・エスピエ氏(左)とクリスティアン・ドルゲール氏(右)。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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