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第23章:「フェラーリに人事異動の嵐、シューマッハー引退後の初仕事は“お笑い”だ!」

2007.02.17 FIAT復活物語 大矢 アキオ
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第23章:「フェラーリに人事異動の嵐、シューマッハー引退後の初仕事は“お笑い”だ!」

やったぜ! ジャン・トッド

イタリアでフェラーリのジャン・トッドは人気者である。なにしろ視聴率No.1のバラエティ番組には、そっくりさんが登場するくらいだ。ちなみにそのコメディアン、昔は映画の人気者だったが、ここ数年パッとした仕事がなかった。トッド人気に救われたかたちだ。

ところで本物のジャン・トッドは2006年10月、フェラーリS.p.A.(株式会社)の代表取締役に就任した。

彼は1946年フランス・ピエールフォール・カンタール生まれ。日本でいえば昭和21年の団塊世代である。自動車人生のスタートは1966年に、ラリーのいちナビゲーターとしてだった。

その彼が異国の、それもシンボル的ブランドのシャチョーにまで上り詰めたのだから大出世である。

ライコネン&マッサも借り出され

ところで、ここのところフィアットは、傘下のフェラーリとの関係を強化している。

昨年、フィアット・グループの持ち株会社であるフィアットS.p.A.は、ここ数年銀行に渡っていたフェラーリ株を買い戻し、出資比率を85%にまで高めた。
フェラーリをフィアット・グループ全体のイメージリーダーとして活用しよう、というストラテジーが窺える出来事だった。

関係強化の一例として、1月、北部トレント県で行われたウィンタースポーツ系プレス向けイベントでは、フィアットがメインスポンサーを務めたが、それを盛り上げるために、2007年シーズンのF1フェラーリ・パイロット、キミ・ライコネンとフェリッペ・マッサも参加した。

スキー場である会場では、クローラーを履いたパンダ4×4スペシャルがスラロームを披露した。
ちなみにこのクローラー仕様は、現在のところ発売予定はアナウンスされていない。だが、その昔ホンダのNトラックにもクローラー仕様があったことを考えると、売り出せばそれなりの需要があるのではないか。

ジャン・トッド氏。2006年7月マラネッロにて撮影。(Akio L.OYA)
ジャン・トッド氏。2006年7月マラネッロにて撮影。(Akio L.OYA) 拡大
トレント県で行われたイベントには、F1軍団がこぞって参加。
トレント県で行われたイベントには、F1軍団がこぞって参加。 拡大
パンダ4×4を改造したクローラー仕様。
パンダ4×4を改造したクローラー仕様。 拡大
スラロームを実演。
スラロームを実演。 拡大
赤いスクードがあらわれたかと思ったら……
第23章:「フェラーリに人事異動の嵐、シューマッハー引退後の初仕事は“お笑い”だ!」(大矢アキオ)

長靴を履いたシューさん

ところでトッドの社長就任と同時に、フェラーリS.p.A.の特別顧問に就任したのは、何を隠そうミハエル・シューマッハーである。

しかし、ボクたち一般にわかるかたちでの彼の初仕事は、意外なものだった。
ずばりフィアットの、それも貨物バン「スクード」のCMである。先月から放映され始めた。
これもフェラーリ−フィアットの連携強化の成果といえよう。

「ミハエル園芸店」と描かれたバンがあらわれる。降りてきたのは、長靴を履いたシューさん。「こないだ引退したばかりだけど、これから何をすりゃいいんだ。おそらく働き続けるだろう。今までと同じように、クルマを変えながら……」という筋だ。
そして「新型スクード−働くクルマ」で締める。

昔、毎日曜午後に「熱湯コマーシャル」を演じていた東国原氏は、今や真面目に知事をこなしている。
いっぽう、真剣に走っていたシューさんは、逆にお笑いに転向させられたのである。

そのうち、もし「フィアットこども交通安全キャンペーン」なんていう企画が持ち上がれば、幼稚園児の手を引いて信号を渡るシューマッハーの姿を見られる、とボクは読んでいる。

どの国でも人事異動は大変なのである。

かのシューさんの“再チャレンジ”だった。
第23章:「フェラーリに人事異動の嵐、シューマッハー引退後の初仕事は“お笑い”だ!」(大矢アキオ)

謙虚なシャチョー

ジャン・トッドに話を戻そう。言わずもがな彼はシューマッハーを5連勝に導いた名監督として有名だが、その功績が称えられて、イタリアのコメンダトーレとフランスのレジォン・ドヌール両勲章を与えられている。フランスの巨大映画会社ゴモンの社外監査委員も務めている。

それでもイタリアの女性誌のインタビューで、「あなたが一番欲しいものは」との問いに、「身長」と答えるユーモアの持ち主である。

トッド氏といえば、筆者が昨年夏フェラーリを訪問して発見したことがある。前述のようなVIPでありながら、トッド氏は他の一般社員と同じく、胸に写真入り社員証を提げていたのである。
ちなみに、同じ日に姿をあらわしたモンテゼーモロ会長はつけていなかった。

彼を正門で呼び止める守衛さんもいないだろうに。また、たとえ制限エリアにアクセスできる磁気カードを兼ねていたとしても、財布に仕舞っておけばいいのに。なかなか謙虚な御方だ。

社員食堂でトッド社長が工場従業員に順番抜かしをされている姿を想像して心配する、今日この頃である。

(文=大矢アキオ-Akio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ/Fiat Group Automobiles)

大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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