BMW Z4 Mクーペ(FR/6MT)【ブリーフテスト】
BMW Z4 Mクーペ(FR/6MT) 2006.11.16 試乗記 ……848万2000円 総合評価……★★★★ 2006年4月、「Z4ロードスター」のマイチェンとともに、追加設定された「Z4 Mクーペ」。「M3」の高性能エンジンを搭載する、ハイパフォーマンスパージョンの魅力に迫る。 |
圧倒的なパワーを手懐ける快感
このクルマのハイライトはなんといってもそのエンジンである。ノーズに積まれる3246ccのストレート6は、「M3」に採用されている自慢のユニットで、最高出力343ps/7900rpm、最大トルク37.2kgm/4900rpmのスペックを見ただけでも、その凄さが伝わってくる。それがM3よりもスポーツカーらしいフォルムをまとった「Z4」のクーペボディに収まるのだから、スポーツカーファンにとっては気にならないはずがない。
2シーターであることに加えて、さほど荷室は大きくないし、マニュアルしか用意されない……など、乗る人を選ぶクルマなのだが、それだけに、ハードルを越えた人だけが享受できる特別な時間がある。圧倒的なパワーを手懐ける快感……「M」の魅力はここにあった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「Z3」の後継となるBMW「Z4」は、2002年9月のパリサロンでお披露目された2座のオープンスポーツ。日本では翌年1月に「Z4ロードスター」が発売。2006年4月、大がかりなマイナーチェンジとともに、「Z4クーペ」とスポーツモデル「Z4 Mロードスター」「Z4 Mクーペ」が追加設定され、Z4シリーズが構成される。
「Z4クーペ」は、2005年の東京モーターショーにコンセプトとして出展された“屋根付きZ4”。ただたんにルーフを被せたわけではなく、ボディ後半部は設計変更さられたという。
パワーユニットはロードスターと同じ3リッター直6。パドルシフト付き6段ATも変わらない。ステアリング位置は左右両方から選べる。
(グレード概要)
「Z4 Mクーペ」は、その名の通り「Z4クーペ」をベースとする高性能スポーツモデル。エンジンは、「3シリーズ」ベースのハイパフォーマンスバージョン「M3」に搭載された高回転型3.2リッター直6(343ps/7900rpm、37.2kgm/4900rpm)を譲り受けた。トランスミッションは6段マニュアルオンリー。0-100km/h加速は5秒、最高速は250km/h(リミッター作動)という。
足まわりも強化、フロントサスペンションは新設計、リアはM3からの高剛性サスとなる。またM3でも採用された速度感応型の「バリアブルMディファレンシャル・ロック」も受け継ぎ、特にコーナー出口での加速の際の操縦安定性と最適なトルク配分の両立が謳われている。
パワーステアリングは、ノーマルZ4が電子制御の電動なのに対し、Mでは油圧アシスト式とし、さらなる精度追求と最適化が図られた。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
デザイナーが描いたスケッチをそのままカタチにしてしまったようなダッシュボードや、大きなフードのメーターパネルなど、基本的なデザインはベースのZ4を受け継ぐが、フルスケールが300km/hのスピードメーター、3色のステッチが施されたステアリングホイール、シフトレバーに描かれた「M」のロゴなどが、特別なモデルであることを印象づけている。
試乗車にはオプションのウォールナットのウッドパネルが装着されているが、標準で用意されるカーボン柄のレザーインテリアも魅力的だ。
ダッシュ中央に備わる格納式モニターやHDDナビゲーションは標準装着で、その他の装備もあわせて考えると、807万円という価格はライバル視される「ポルシェ・ケイマンS」に比べて大きなアドバンテージである。
(前席)……★★★★
ヘッドレストに「M」のロゴが刻まれたシートは、ヘッドレスト一体型のスポーティなデザインで、サイドサポートの張り出しも大きく、いかにもという雰囲気をかもしだしている。実際に座ってみると、スポーツシートに窮屈さはないが、ドライバーに迫るステアリングホイールや太いセンターコンソールのせいもあって、その気にさせるタイトさが巧みに演出されていた。
(荷室)……★★
ロードスターと異なり、独立したトランクを持たないハッチバックボディを採用したこのクーペは、おかげで大きな開口部を持つことになり、荷物の出し入れが比較的ラクだ。しかし、絶対的なスペースは大きくないうえ、バッテリーとタイヤ補修キットを収めた部分が大きく出っ張っているので、大きめのスーツケースが入りきらず、困ることも。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
重いクラッチを繋いで走り始めると低回転でも実にフレキシブルで扱いやすく、スポーツユニットが持つ神経質なイメージとは無縁。街なかを3000rpm以下で流すような場面では豊かなトルクを発揮してくれる。
もちろんそれはこのエンジンの一面にすぎない。フルスロットルをくれてやれば、3000rpmを超えたあたりからさらに強力なトルクを絞り出しはじめ、ピークの4900rpmを超え、7000rpmを過ぎてもいっこうにその勢いは衰えを見せないのだ。さすがに7500rpmを超えたあたりからは苦しげなサウンドを漏らすのだが、それでも8000rpmまできちっと仕事をするのがMパワーの面目躍如である。
シフトレバー横の「SPORT」ボタンを押すと、スロットルに対するレスポンスはさらに鋭くなる。しかし、ノーマルのままでも十分過激な性格なのだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
車検証によれば、前軸荷重が750kg、後軸加重が720kgのほぼBMWの理想に近い重量配分を持つこのクルマ、ワインディングロードに持ち込めば痛快そのもので、コーナー手前でステアリングを切ると、スッとノーズが向きを変えていくし、立ち上がりでスロットルを踏めば、強大なトルクを後輪が受け止め、あっというまにコーナーを後にすることができる。そのバランスのよい仕上がりはさすがといえる。
一方、軽快なハンドリングと引き換えに、乗り心地はガマンを強いられる。タイヤはランフラットではなく、通常のものが装着され、試乗車にはコンチスポーツコンタクトが採用されていたことも幸いして、乗り心地は想像していたほど辛くなかったものの、やはり大きなショックは遮断しきれない。スピードが上がるにつれて辛さが和らぐとはいえ、ある程度の覚悟は必要である。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年10月31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2256km
タイヤ:(前)225/45R18(後)255/40R18(いずれもコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト)
オプション装備:セパン・プロンズ・ライト/ブラック(27万円)/サンプロテクションガラス(2万2000円)/自動防眩ドアミラー(2万2000円)/チャイルドシートアタッチメント(1万1000円)/ウォールナット・マデイラ・チェスナット・ブラウン・ウッドインテリアトリム(3万8000円)/BMWトップHiFiシステムCarver(4万9000円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:385.5km
使用燃料:48.52リッター
参考燃費:7.95km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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