オペル・スピードスター(5MT)【試乗記】
余裕あるハンドリングマシン 2002.11.09 試乗記 オペル・スピードスター(5MT) ……449.0万円 オペルの2シーターオープン「スピードスター」の日本正式導入が、2002年10月15日に発表された。発売は2003年1月11日から。国内でのデリバリーに先立ち、ブリッツマーク随一のスポーツモデルを、webCG記者が「ツインリンクもてぎ」でテストした!
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オペル初の量産ミドシップ
チェックアウトを済ませてホテルを出ると、車寄せに小さな銀色のスポーツカーが停まっていた。ルーフに霜がおりて、凍っている。寒い。僕は、栃木県は芳賀郡にあるサーキット「ツインリンクもてぎ」に来ている。2002年10月1日に、日本導入が発表されたオペルの2シーターオープン「スピードスター」に乗るためだ。
指定されたパドックに赴くと、色とりどりのスピードスターがズラリと並んでいて……、というようなことはなく、パーキングスペースの片隅でコースマーシャルの方々が打ち合わせをしているだけ。しばらくすると、愛らしい赤い「オペル・ヴィータ」が、さきほど展示(?)されていたシルバーのスピードスターを伴ってやってきた。当面100台の正規輸入が決まったとはいえ、販売開始は2003年1月11日からだから、クルマが揃わないのだろう。日本GMのスタッフによると、「テスト車はコレ1台」だという。にわかに吐く息が白く、手がかじかんできた気がする。
スピードスターは、いわばオペルの「自動車製造100周年」記念モデル。1999年のジュネーブショーでコンセプトモデルが発表され、英国はロータスエンジニアリング社の協力を得て開発が進められた。「ロータス・エリーゼ」と同じくエポキシ樹脂接着剤で結合されたアルミ製フレームをもち、しかし25枚のFRP製パネルが、「技術志向のデザイン言語を具体化した」(広報資料)オペル独自のボディスタイルを形成する。
同社ジマンの2.2リッター「ECOTEC」ユニット(147ps、20.7kgm)がミドにマウントされ、5段MTを介して後輪を駆動する。ブリッツマークを付けた初の量産ミドシップスポーツとして、「エリーゼとの共有コンポーネンツは1割程度」、つまり“似て非なるモノ”というのが、オペルの主張である。生産は、ロンドン北東150kmに位置するヘゼルのグループロータスで行われる。欧州では、2001年3月から販売が始まり、すでに2000台をデリバリーしたという。
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車両本体価格449.0万円
スピードスターのボディサイズは、全長×全幅×全高=3786×1708×1117mm。ホイールベースは、エリーゼより30mm長い2330mm。薄いタイヤを巻いた17インチホイールが四隅に踏ん張る、きわめて現代的なフォルムである。簡便な幌が外されると、ロールバーを兼ねるルーフの一部と、底辺の大きな三角形のクオーターピラーがキャビン後端をカタチづくる、一種のタルガトップスタイルとなる。
フワッと軽いドアを開け、地上わずか30cmほどのシートにペタンと座る。レザーのバケットタイプ。大柄なヒトが多いドイツ人に合わせたせいか、“タイト”と表現するにはサイズに余裕がある。背もたれの角度は変えられないが、手動でスライドは可能。エア式のランバーサポートまで備わる。ちなみに、助手席はレーシィな完全固定式。
ボディの構造材たるアルミニウムむき出しのフロア、さらに助手席側フットレスト、ドアトリム、ウィンドウレギュレーター、シフトノブなど各所に軽合金が使用され、このクルマの成り立ちを暗示する。とはいえ、実用車を生業とするオペルである。アルミのドライビングマシンにも、「運転席エアバッグ」「プリテンショナー付き3点シートベルト」そして「ABS」と、安全のためのデバイスはしっかり装備される。
インストゥルメントパネル左端には、シリアルナンバーが刻まれたアルミプレートが鈍く輝き、その右隣には、ナカミチのCDプレイヤーが収まる。そう、オペル・スピードスターは車両本体価格449.0万円と、同社のフラッグシップ「オメガ」に匹敵するハイエンドモデルなのだ。当然、イモビライザー(盗難防止用エンジン始動ロック装置)も標準で搭載される。
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タイムを削るためでなく
キーを捻り、インパネ中央のスターターボタンを押してエンジンをかける。カメラマンを乗せて慎重に走り始めると、すぐにスピードスターが付き合いやすい相手であることがわかった。バランスシャフトをもつオールアルミ「ECOTEC」ユニットはトルキーでスムーズ。なんら気負うことなく、ケーブル式の5段MTを繰ってドライブできる。一般的な環境とは離れた、レースコースという特殊な舞台ながら、「乗り心地はいい」と感じた。緊張が心地よくほぐれていく。
カメラマンを撮影ポイントで降ろすと、ペースを上げた。
オペルの軽量スポーツは、870kgのウェイトに147ps、「0-100km/h=5.9秒」の俊足ながら、ドライバーを追いつめる神経質なところがない。
レブリミットは6250rpm。「STAC」の計器盤でギアの守備範囲を確認すると、ロウで50km/h、セカンドで90km/h、サードで130km/h。シフトアップのたびに、いずれも最大トルク発生ポイントの4000rpmを超えたところにタコメーターの針が落ち、シルバーのマシンは力強く速度を上げていく。
足まわりはしなやかで、ハードブレーキングを敢行すると、低く構えたスタイルからは意外なほどノーズが沈み、コーナーでは深くロールする。4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションは、よくチェックされていて、ソフトだが「腰砕け」や「不安感」といった単語とは無縁だ。ステアリングホイールは、直径36cmという小径なもの。「ロック・トゥ・ロック=2.8回転」の“速い”ステアリングギアをもつミドシップは、ドライバーの操作に従って機敏にノーズの向きを変え、一方、大きな挙動がクルマの状態をわかりやすくアピールする。楽しいなァ……。
オペル・スピードスターは、余裕あるハンドリングマシンだ。ロータス・エリーゼの1.8リッター「K」ユニットより400cc大きい排気量は、“タイムを削るため”ではなく、“ドライバーのココロのゆとり”のためにある。
(文=webCGアオキ/写真=難波ケンジ(N)・日本ゼネラルモーターズ/2002年11月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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